ポッキーゲーム
「ポッキーゲームしようよ!!」
「ぐふぅ!?」
ドーンっと後ろから突撃するように抱き付いてきた恋人のレグルス。
あまりの勢いに肺が圧迫される。
一瞬本気で意識を失いかけるが、そんな事ではレグルスの恋人など務まるわけがない。
気合で耐えて、首だけ後ろのレグルスを振り返る。
「いきなり突撃するのは止めてって言ってるでしょ!心臓が止まるかと思ったわ!」
「ごめんごめん!でさ、やる?やるよね!」
「……」
だいちゅきホールド、並みに後ろからガッシリと抱き着きながら目をキラッキラとさせるレグルス。
視線だけでも「やろう!やろうよ!俺やりたい!!」とビッシビシ訴えて来る。
こんなに楽しみにしている相手を前に、拒絶など出来るわけがない。
そもそも、レグルスの態度からはコッチが拒否するという選択肢などないだろう。
深いため息をつき、「分かったから、やろう」と云おうとした。
でも私が最初の一言を言い終わらない内にレグルスの「やったーーー!」という喜びの声にかき消されてしまう。
自分の鞄を漁り、素早くポッキーを取り出すと「えい!」と言いながら此方の口に押し込んでくる。
甘ったるくて濃厚なチョコの味が口の中に広がることに、少し眉を寄せる。
でも、ポッキーの反対側を持ったレグルスは何だか楽しそうだ。
「じゃあいっくよー!」
「…ふぁい」
サクサクサクサクサクサクッ!
早っ!!リス並みじゃん!!
到底人間の口の動きとは思えないほどのスピードで口が動き、レグルスの口の中にお菓子が消えていく。
というか、顔が近いこともあって歯の動きが全く見えない。
(え、てかちょ…このままいけばキス……)
サクサクッ!ちゅー
「やったー!俺の勝ちーー!!」
「早すぎ!てか、えっ?キスしたら負けなんじゃないの…?」
「えー?俺はちゅーした方が勝ちって聞いたよ?」
「は?誰に?」
誰だ、こんないたいけな男の子に変な遊びを吹き込んだのは。
レグルスに冗談はあまり通じないのだから、本当にやめてほしい。
この前も、ハロウィンをイタズラして回るイベントだって教えられたらしく、悪戯しまくって回ったら案の定シジフォスさんに怒られてた。
……まぁ、多分今回も同じ犯人だろうが。
「マニゴルドとカルディアに!」
(あんの、悪童ッ!!!今度しめる!)
頭のなかで、カルディア達が楽しそうにニヤッと笑った。
「レグルス本当はね、キスしたら勝ちっていうルールじゃないよ?」
「えー?なんで!?そしたらちゅーする嫌みたいじゃんっ!」
「だって、本来はそんな感じだし。少なくとも、私は女友達とやった時は先に口を離したら負けでキスしても負けだったよ」
「他の人とキスしたの!!?」
「するわけないでしょっ!?」
あー、もう本当レグルスはっ!!
小さく溜息を漏らしてポッキーの箱に視線を落とすと、レグルスの手が動いて口のなかに残りのポッキーを突っ込んできた。
そして、何処か色気を覗かせた、悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「でも俺、こっちのルールの方が好きだな。だって、ちゅー出来るもん」
「………」
「じゃあ、今度はどっちが早くキス出来るか勝負しよー」
「……ふぁい」
連敗した。
20141112 執筆
20151116 一部修正、公開
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