私、ハワード・リンクは頭を抱える状態にいる。


「うぅ…ん………すぅ……」

「………………」

なぜ私のベッドで隣に水野結が寝ているのか!?

確かに私は一人で布団に入って寝た筈なんだが………いつの間に部屋に入ってきたんだ?しかし、私は女性を起こすほど野暮ではないため、そのままにしておく。
鍵はしてある。隣のベッドを見ると私の監視対象が居ない。
しまったと上半身を起こそうとしたが、それも水野の手に腕を引っ張られ叶わなかった。


「んん………」

「っ……」


ばふっ、と音を立ててベッドに倒されたのに、当の本人はとても気持ちよさそうに寝ている。
倒された時に体が彼女に向いてしまい、息がかかるまで顔が接近してしまった。
どれだけ起きているときの口が悪かろうと、寝てしまえば顔の整った美少女だ。長いまつげ、寝ているからか微かに紅潮した頬、見ているうちに顔が熱くなるのがわかる。

…………アレン・ウォーカーがいなくて良かった。


「ん…………」

「?」


もぞもぞと体を動かす水野。起きるのだろうか。だとしたら早く腕を掴む手を離してほしいものだ。
水野を見ないように目を閉じ次の行動を待っていると、ぐいと体が引っ張られた。


「っ!?」

「すぅ………」


完全に抱きつかれてしまった。背中に手を回され、脚も組まれ、彼女の頭が私の口元に寄せられた。
普段の彼女からは想像も出来ない行動だ。
とりあえず起こさないと危ない。色々と危ない。
拘束をほどこうと痛くないように腕を動かす。


「……水野、起きてください」

「んぁ………りん、く?」


左手で目をこすり、私を見上げる。
寝起きでろれつが回っていないところが何というか…………


「とりあえず、離れてもらえますか?これでは動けないのですが」

「………ちかい………近い!?」


しばらくぼーっと私の顔を見て、みるみるうちに顔が赤くなった。
ザッと水野はベッドから降りた。彼女が離れてくれたおかげで密着による圧迫感は無くなったものの、熱も少し下がってしまった。

っと、なぜ少し寂しいと思ってしまったのか。そもそも淑女と同じベッドなど不謹慎過ぎたのだ。

彼女は真っ赤な顔をして口をぱくぱくとしていた。見ていると魚みたいで少し面白いが、笑うのは失礼だろう。


「あ……ぅあ……………り、」

「り?」

「リンクの変態ぃぃぃぃいいいい!!!」


そう言って涙をためた顔でドアを思いっきり閉め部屋を出ていった。彼女は体全身がイノセンスのようなものなので、ドアと壁に物凄いヒビが入っている。


「変態と言われても、向こうが責めてきたんだがな………さてと、アレン・ウォーカーの所まで行くとしよう」


にしても、あの焦りようは思い出しても笑えるほど面白かった。
いつもの威勢のいい彼女はどこへやらな反応だった。
くくく、と喉から声がでた。



ある監視官の一日



ああ、とても可愛らしかったと認めよう。



((食堂にて))
(アレン・ウォーカー!勝手に行動するなとあれほど………)
(リンクさん、ちょっと)
(?なんだ、木村望弥?)
(面貸せやこの野郎)
(!?な、なぜ…)
(純情な結に手を出しやがってこの野郎覚えとけ)
(え、や、あれは……)
(問答無用!!!)
(ふん……バカリンク)


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