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森の天使と家出の悪魔


獣の住まう暗き森
奥に佇む小さな家
天使が一人暮らしてた

誰も近寄らぬこの森で
兄の帰りを待つ妹
遠くで働く唯一の肉親
一人思う遥か遠い幼き日


(お兄ちゃん、お母さんとお父さんってなぁに?)
(僕達をこの世界に産んでくれた人だよ)
(じゃあ私達を産んだ人はどこに居るの?)
(もう会えないよ、二人共遠い遠い場所へ逝ってしまったから―――)


獣の住まう暗き森
兄を待ってる小さな妹
他人とは違う変わり者

背中に有るのは一つの羽
対を持たない小さな翼
羽ばたくことすら叶わず
天使の力さえ少女は持っていなかった・・・


(皆一対の綺麗な羽を持っているのに)
(何で私は片方しかないんだろう?)
(持ってるはずの力すらなく)
(兄の助けにもなれないなんて――――)

誰も通らぬ暗き森
訪れるのは妹の元へ帰る兄だけ
兄以外の人を知らなかった

町に行くなど滅多になく
毎日獣達と戯れた
今日は遠くから来た鳥に
私の唄を聴かせてあげる


(生まれた意味さえ知らない)
(私を導いてくれる人もなく)
(ねぇお兄ちゃん)
(私少しだけ寂しいな――――)

誰も知らない暗き森
鳥に聴かせる森の唄
誰も知らない少女の唄

少女が詠う森の中
誰かが一人逃げ走る
少年の背中には黒い羽
悪魔の羽が一つだけ


(狭い部屋に閉じ込められる)
(あんな思いはもう御免だ!)
(俺はあんた等の操り人形じゃない)
(俺は自由に生きたいんだ!)


走る悪魔暗き森
耳に届いた切ない歌声
天使が詠う森の唄


急な事態に対応できず
私はその場に固まった
初めて見た悪魔の少年
私と同じ片羽の翼

唄に導かれて見つけた人
俺は思わず見とれてた
初めて見た天使の少女
俺と同じ片羽の翼


((キミは誰?))

((何で此処に居るの?))


天使の少女 悪魔の少年
背には片羽
対の無い一つの翼

運命は少女に少年を必要とさせ
刻は少年の心に少女への想いを芽吹かせるだろう


白き羽と黒き羽
歯車は動き出す

二つが交わる
その日めがけて・・・




+++++++
この後黒羽は天使の力とやらに吹き飛ばされる予定(え
そして白羽のお兄ちゃんの名前未定(え

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