ライン

天仔たち




「・・・ふぅん、そう。じゃあ今ちょうど正念場ってところかしら?」
「そうだね。まぁ彼女が選んだんだもの、心配はしないよ」

にこりと見慣れた笑みを溢す。これは本当に安心しきった笑顔だ。長い付き合いだから、彼の笑顔が何を含んでいるかは一目で分かる。
まぁそれはお互い様と言うものだが。


「それにしたって勇気がいったでしょうね。長年のしがらみに真正面からぶつかるんだもの」
「それだけ元から抵抗があったのかもねぇ?ま、彼女の性格を考えれば、力差のある相手とは付き合えないだろうし」
「うふふ・・・寄り添うならやっぱり対等じゃないとねぇ?」
「それなら君はなかなか出会いがなさそうだねぇ」
「あら?私には対等になれる相手がいないって言うの?」
「むしろ尻に敷きまくりそうだねぇ」
「シめられたい?」
「遠慮するよぉ」


ニコニコしながらも、本気でお断りしたそうな表情になる夜途乃。
「正直ですこと」と心中呟きながら少女の意思を想像する。



「・・・ゆーゆーと何があったのかしら?」
「ん〜?何かあったのかな?」

唇に指を当てたままポツリと呟けば、それを聞いた夜途乃が首を傾げる。そんな彼に狗縲から何か聞かなかったのかと問えば「知らないよぉ」と間延びした答えが返ってきた。


「う〜ん・・・私の勘だけれど・・・多分昨日の夜、うちの子は狗縲と一緒に寝たわ」
「わぉ!唯君って以外と大胆なことをする子なんだねぇ」
「やましい意味じゃないわよ?」
「知ってるよぉ。ふざけたかっただけさぁ」

「・・・・・・そ。
で、話を戻すけれど。きっと昨日二人の間で何かがあったんだわ。だからゆーゆーはあんなにも私の質問から逃げるし、私のハグは避けるし、私のちゅーも拒否してるのよ」
「最初はともかく、残り二つは単に嫌がってるだけだと思うよぉ。ほら、唯君も少年だからねぇ」
「お母さん寂しいわ・・・。嗚呼!これが子が離れていく切なさなのね!」
「お年頃なんだと思うんだけどなぁ。それにあれくらいになれば恋もしたいだろうしぃ」
「いいえ、甘いわヨノ。あの子はまだ狗縲に対してそんな感情を抱いてない、断言するわ。きっとまだ段階としては「顔見知り」から「友達」にステップアップしたばかりよ。」
「随分細かいんだねぇ」
「次は「親友」ね。ふふふ・・・もどかしさと友情の狭間で揺れるがいいわ」


クスクスと笑えば「楽しそうだねぇ」と夜途乃が呆れた笑みを返してくる。それでも付き合ってくれるのだ。
だからこそ、緋雅哭は彼にありのままを見せる。夜途乃もそうであるように。奇妙な見た目だが、絶対の信頼を寄せて。


「・・・そろそろ終わる頃合いかなぁ?旅支度した方がいいかもよぉ?」
「そう、じゃああの子達に言ってくるわ」

くるりと踵を返して元の部屋へと進路を変える。
途中、ふと気になって往年の馴染み相手の名を読んだ。


「何だい?」

「貴方・・・これからの旅路はどうするのかしら?」


含みを込めた言葉で問えば、夜途乃は絶対の意を込めた笑顔を緋雅哭に見せる。そして自信満々に答えた。



「勿論。私は私の悲願のために、これからも“二人”で頑張る所存だよ」




++++++
二人ともなかなか難しい性格をしてるので喋らせるのが楽しいです。
絶対的な信頼っていいよね。

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