無題
「・・・どうすれば、いい・・・?」
それは何に対する問いかけか。
体を震わせたまま、ただどうしようもない壁にぶつかってしまった彼女の問いかけ。
どうにかしたいのに、どうしようもないこと。
思いと事実の非情な溝。
苦しくて。
すごく、怖いものだと唯は思った。
「だったらさ・・・頼れば?」
一瞬、狗縲の震えが止まった。
次いで肩にかかる指圧が強くなる。
きっと怒ってるんだろう、狗縲はプライドが高い。
勝負事なら絶対公平さを徹底するし、(戦略的なことならまだしも)少しでも卑怯なことをすればそれを許さないくらい、彼女は気高い。
きっと反論してくる。そう思って唯は素早く二の句を紡いだ。
「だって狗縲はさ、独りじゃないだろ」
+++
どうして?と問いたかった。
頼ればいいなんて、まるで弱いことをどうして君が言うの?
だからどうして?と、でも。
「だって狗縲はさ、独りじゃないだろ」
その言葉に口が動かなかった。
やけに重たかったから。
やけに悲しかったから。
独り、という言葉が・・・。
「分かるだろ?だって狗縲には夜途乃さんがいるじゃん。どうしたらいいか?なんて別に今すぐ決めなきゃいけないことでも、ましてや絶対決めなきゃいけないことでもないしさ、よく考えたら今の『天仔の手伝い』もやることの一つじゃん。
ホラ、これでもう狗縲の分かんないこと一つ解決した」
な?と言う声につられるように顔を上げれば、当たり前だけど唯の顔が近くにあった。
真っ直ぐな瞳。さっきまでも重たい空気をものともしていない穏やかな表情。
力んでいた体の力が少しずつ抜けていく。
そして狗縲の口からポツリと小さな言葉が勝手に滑り落ちた。
いいのかな?それだけの理由で?
「いいじゃん、理由は理由だろ?本音言えばどうして狗縲が“自分のしたいことが分かってて”悩んだりするのか・・・分かってないし、自分のしたいことだって、オレはまだよく分からないからヒナにくっついてることしか出来ないけど・・・狗縲ならさ、大丈夫だと思うんだオレ」
偉そうだけど、と恥ずかしそうに笑う姿が眩しい。
視界がぼんやりと滲むのが分かって慌てて下を向いた。
狗縲?
唯が呼び掛けてくる。
「・・・本当に、頼っていいの?」
「ん?ああ、いいんじゃないか?」
「じゃあ・・・今は、獣刃に頼っても、いいかな?」
え?という声を聞きながら体を寄せ、片手で唯の服の裾を掴んだ。
暫くして戸惑いながらも了承の言葉を受け取り、狗縲は頭を唯の肩に乗せた。
乗せている間、自分の者よりも少しだけ大きな手がまるで幼子を優しくあやすように背中を撫でてくれた。
とても、温かかった。
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こんな感じのをダラダラ書いてたら、二人の件だけでここに上げれる容量九つ分ぐらいになってしまったので一部うp。
狗縲が唯を信頼するに至ったお話的なの。
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