ライン

紅桃-爆笑・解決・仲直り-



「紅苑さん?どうしたの?」




「・・・くっ、はっははははは!!」



突然、紅苑が大声で笑いだした。驚き目を丸くする杏架。
当然口喧嘩していた二人も、頭を抑えていた貴景も突然のことに彼へ視線が集中した。

しかし紅苑はそれに見向きもせず笑い続ける。
腹を抱えだしたところで代表者・凪沙がただならぬ様子に怯えながら彼に近寄っていく。


「ちょ・・・ちょっとちょっとクーちゃんや!何笑いだしてんのよ?え?何かあなたのツボにはまることがあった?の?」

「ふ・・・ふ、はぁ・・・凪沙」

「・・・はいよ?」

「お前たちは本当に仲が良いんだな」


へ?と漏らし凪沙は思考をフリーズさせた。
彼女がその言葉の意味を理解するのは、紅苑が深呼吸をして気持ちを落ち着かせるまでかかる。


「紅苑さん、何で仲良しだと思ったの?」
「分からないか杏架?」

くいくいと袖を引く杏架に、紅苑はしゃがんで彼女と目線を合わせる。


「この二人の言い分、どちらも互いを思いやってるから怒ってるんだぞ?」
「思いやり?」
「そうだ」


ピタリと今度は凪沙と柏螺二人の表情が固まる。

「つまりこうだ。
柏螺は凪沙の・・・まぁ軽い要望のようなものを聞いて、頼まれはしていないがそれでも凪沙のためにと動いてやったのだろう。
対し凪沙は頼みもしないこと些細な願いで柏螺が怪我をする恐れに、彼の行動を怒ったんだ。ただしこれは柏螺の親切心を否定することになる。
結果、こうして二人は喧嘩に至った・・・という推測だが、どうだ?」


微笑みながら二人に確認を投げ掛ければ返ってくるのは無言。


「すごいな、大当たりだよ」

代わりに答えたのはパチパチと拍手する貴景だった。
つまり付き合いの長い彼は二人の喧嘩の種などとっくに理解していたんだろう。
しかし近しいが故に無闇に介入ができなかった、そんなところだろう。


「まぁ、この喧嘩の解決法としては、お互い冷静になって相手の気持ちになってみろと・・・そんなところか」
「解決法までパーフェクト。貴方は人の観察が上手いんだね」
「へぇ〜そうだったんだ〜」


納得し合う男二人と理解した少女一人。
喧嘩組は勝手に進んでいく話についていけずぽかんと様子を眺めていたが、解決法の話で柏螺が気まずそうに頬を掻く。
凪沙もどこかばつが悪そうな表情を浮かべていた。


「さて、後は本人達で解決できるし・・・まだ二人にはお茶すら出してませんから、部屋を移しましょう」
「では遠慮なく・・・行くぞ杏架」
「はーい!いっただっきまーす!」


そのまま部外者がぞろぞろと退室していく。
取り残された二人。



「・・・あの、さぁ凪沙」
「・・・何か?」
「その、今回は意地固になってた俺も悪かったから・・・本当にごめん」

「・・・はぁーぁ、柏螺から先に折れてくれるなんてね、どういう風の吹き回しかな?」

「はぁ?お前さ・・・」
「うそうそジョーク。・・・あたしも意地っ張り過ぎた、ごめんね。可愛くないことした」
「・・・別に凪沙はいつも可愛くなんてないだろう」
「なんですって」


ふっと表情を柔らかくした凪沙が柏螺と向き合う。
喧嘩中の尖った空気は嘘のように消え失せて、二人とも心中穏やかだった。


「どうしてそこで柏螺はお世辞を言えないかなぁ、だからモテないのよ?」
「ほっとけ」

「そんじゃま・・・仲直りしますか」
「・・・だな」


すっと両者同時に右手を差し出す。そして互いの右手を強く握った。

握手。

それは小さな頃から変わらない、仲直りの儀式。




++++++
長かった喧嘩もやっと解決。
まさか紅苑が大爆笑すると思わなかった。

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