ライン

勘違い



ある秋の日の午後二時頃。

わたしは観覧車に乗る一組の男女を目撃しました。




数分後、ライモンシティ:スタジアム通り。
人通りの多いそこを、トウヤは鼻唄混じりで歩いていた。
今日はバトルサブウェイで良い成績が出せたから上機嫌。
ついでにコトハに会えたりすればもっと良い日になるのだが・・・それは時の運なので仕方ない。

頑張ってくれたポケモン達に労いの気持ちを込めて、上質のポケモンフードでも買おうと店へ向かう、道中。


「・・・・・・ん?」


どこかで聞き慣れた声が聞こえた気がして辺りを見回す。と、遠く後ろの方に見慣れた姿を見つけた。

団子のように二つの丸めた髪から、更に髪が垂れるという特徴的なツインテール。
見間違えることの無い、それは我が妹の姿だった。

どうも必死に走っているらしい妹を見て、何を急いでるのだろうとそれとなく観察してみると、何故か一直線にこちらへ向かっているのが分かった。

つまり、


「・・・ちゃん・・・おにーちゃーん・・・」
「嫌な予感が・・・っ!」
「おにーちゃあぁぁあん!!」
「待てめ、ゴフッ!?」

走る少女は真っ直ぐ彼を目指して走っていたわけで。兄は妹から強烈なタックルを食らったのだった。


「お兄ちゃん!わたし泣いちゃうよおぉ!!」
「ぐっ・・・な、泣きたいのこっちだ!いきなりなんだよ!」


痛みを堪えてメイを睨むと、その顔が言葉通り今にも泣き出しそうで、トウヤは文句を言いたい口を無理矢理抑えて。ついでに回りの目もあったので妹の背を押しながら場所を移動した。






「・・・つまり、ミヅキ君が見知らぬ女性と観覧車に乗る姿を目撃してしまった・・・と?」


トウヤが確認するように問えばワッとメイは泣き出す。
見知らぬ女性―どうやらOLらしい人と、思いを寄せるミヅキが共に乗り込む姿を思い出すだけで胸がチクチクする。


「うぅ・・・それでね、それでね・・・ミヅキ君ね、その女の人と・・・笑顔で・・・っうわーん!」
「おーおー、よしよし」

堪らず泣き喚けば心優しい兄が頭を撫でて慰めてくれる。
端から見ればその様子は兄妹というより、付き合ってる男女に見えないこともないが、等の本人達にそれが分かる筈がない。

それから幾らか時がたって、やっと涙が止まった頃。


「あれ?メイにトウヤさん?」

「ん?」
「え?」


聞いたことのある声に兄妹が同時に顔を向ければそこに、今まさに話題になっている少年が立っていた。


「こんにちは!・・・あ、何か話の途中だった?」
「ううん、気にしなくても良いよ。こんにちはミヅキ君」


いつもと違う雰囲気を感じ取ったのか、申し訳なさそうにするミヅキを咄嗟にトウヤがフォローする。
こういう時に兄の紳士精神は役に立つとメイは顔を俯かせながら思った。


「ところでミヅキ君はどうしてこの店に?」
「あ・・・いや、皆が『たまには甘いもん食わせろー』っていうからちょっと」
「そっか、オレ達ここには何回か通ってるけど良い店だよ。
そうだ、良かったら一緒にどう?」
「え?良いんですか!なら遠慮なく・・・」
「うん、メイの隣にでも座りなよ」


・・・・・・え?

兄のそんな言葉にバッと顔をあげてみれば本当にミヅキが隣に座るところで、正面に座る兄の顔を見れば紳士モード笑顔を張り付けてこちらを見ていた。

な・・・何てことを・・・!このバカ兄ぃ!!


「隣お邪魔するよメイ」
「ふぇ?あ、うん。うん・・・」
「どうかした?何か元気なさそうだけど?」
「そっそそそ、そんなことないよ!元気一杯だって!」


心配そうに覗き込んできてくれるのは心の底から嬉しいが、正直今はそれどころではない。
それにその様子を兄が微笑ましそうに見ているのが余計ムカつく・・・。


「そうだ、ミヅキ君」


++++++
中途半端に続きます。

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