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英雄に安息を
君はまるで太陽のようだ、と。よくあるくさい詩のような言葉で形容なんかしたくないけれど。
だけどそんな比喩がピッタリ当てはまるくらい、君は太陽のような女の子だった。
明るくて、素直で、元気で、活発で、優しい。
誰かがつまずけば、戻ってでもそれを助けて、一緒に歩こうと励ましてくれる。そんな温かい人。
そんな君の人柄に、オレは強く、強く惹かれた。
初恋なんて覚えてないけど、けれどここまで強く深く一人の人間と寄り添いたいと想ったのは、後にも先にも君だけだと本気で思う。
それだけオレは君に首ったけだった。夢中だった。好きだった。君が大好きで大好きで堪らなかった。
だから会ったら必死にアプローチしたりとか、君の気を惹きたくて、振り向いてもらいたくて。
あれ?オレってこんな奴だっけ?と首を傾げたくなるくらい一途だった。
君の笑顔は可愛くて、それを見ただけで幸せになれた。
愛しい人。
今のオレは、酷く落ち込んでいる。
だって、だって君は、君が。
「ぅ・・・ぁ、ぁ・・・。ふっ・・・うぇ・・・ひっく・・・」
ポタポタと目から落ちて、頬を濡らして、服を濡らして、地面を濡らして、君が泣いていた。
どうしてそんなに悲しんでいるんだい?
手を伸ばして、温かい雫を指で掬う。
たちまち指は濡れて、手を伝う。
「コトハ・・・」
「ふ・・・ぁ・・・トウ、ヤぁ・・・」
崩れた表情で、ボロボロな心のまま君が縋るように倒れ込んでくるのを受け止めた。
嗚呼、こんなにも君の体は細い。
嗚呼、こんなにも君の肩は小さい。
嗚呼、こんなにも君は人の痛みを背負って。
嗚呼、君は今日までそれを隠してたんだね。
でももうそんなに苦しまなくていいよ。
君の小さな体にそんな負担は酷すぎる。
君は笑うべきだ。
君がどんなに痛みの哀悼のために涙を流そうと、その笑顔以上に傷によく効く薬がないことを君はまだ知らない。
だからオレがそれを教えよう。
だからもう泣かないで愛しい人。
君の涙を見ると、まるでどしゃ降りの中に放り出されたような惨めな気持ちになるから。
君の泣き声を聞くと、まるで幾千人の人間に責められているような悲しい気持ちになるから。
笑顔が似合う君に、涙なんて似合わない。
「だから泣かないでくれよ、コトハ」
腕の中に閉じ込めた小さな温もりに囁く。
鼻をすすりながら頭を胸に押し付けてくる君はなんて脆くて、今にも壊れてしまいそうだ。
だから優しく、優しくオレは君を抱き締めよう。温めよう。
苦しみも痛みも、何もかも取り除いてしまえるように。
「大好きだよコトハ」
そっと額に口付けを落とす。
そっと君が瞼を閉じてオレに寄りかかる。
さぁ、おまえらの“英雄”はもうお疲れなんだ。
だから世界よ、お前の“英雄”に安楽の休息を。
彼女が世界を支える“英雄”と讃えられるにはまだ未熟過ぎるから。
いつかその刻が訪れるまで、オレの大切な“英雄”と呼ばれる愛しい人を苦しめてくれるな。
「大好きだ、愛してるよ・・・コトハ」
細心の注意を払いながら、強く抱き締める愛しい君。
“ありがとう”と唇が動いた。
乾いた涙の跡を残したまま、君は太陽のように笑う。
オレはそんな太陽にもう一度口付けを送った。
安息の場所がないならば、私がそれになりましょう。
愛しい君を、少しでも守れる“騎士”になりきれないこのオレが。
++++++
トウヤとコトハの強さは僅かにコトハの方が強くて、トウヤはコトハを守りたいけど彼女より強くなくて・・・みたいな感じの書きたかった?
とりあえずトウヤがコトハを元気づけるのもいいなぁと。
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