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序章ー空にストーカーが表れたー




凱 弐稚(トキ ニワカ)
性別は男、年齢は17、特技は特になし
それなりに恵まれた家元に産まれ、両親と兄弟にしごかれつつ育つ
現在、何の理由もなく修行と称された旅を日々繰り広げている

・・・はずだった
オレは今武器の槍の手入れを終えて歩き出そうとしたはずだ
オレは立ち上がった、立ち上がったよ?

自分の身長は170そこそこ、男性の平均身長か一歩手前
低くなくかといって高くもない微妙な高さ
とはいえ世間一般女性よりは高いと思う
いや確実に高いはずだ

だがしかし、今自分の目の前の女性は違う

顔が自分の顔より少し高めの位置にある

整った顔立ちに長い髪が目の前で逆さまに垂れて・・・

垂れ下がっている

女性の足は地面にない、推測からして自分の背後にある
だって彼女の上半身はオレの頭の上に浮いている
だから逆さま
だから垂れ下がり

しかも彼女は理解が追い付かずに唖然としたオレの顔を見て嬉しそうに目元を緩め口を動かした


「やっと見つけた」

「あなたをずっと探していた、凱弐稚」

「私が欲しいのは唯一つ、貴方に求めるのは一つだけ」


「さぁ、私に頂戴?
貴方のキモチを私に頂戴?」









「・・・・・・は?」
だった
想像より高めの彼女の言葉が紡がれた後のオレの第一声は「は?」

在り来たりだよ?
いや、この場合在り来たりしかないだろう?
てか言葉を考えられる脳すら働いてないよ今、理解が追い付いてねぇもん
立派に反論できる輩がいたらきっと褒め称えられる
きっとそうだ

「どうかしたの弐稚?」

女性の姿をした謎の塊が更なる言葉を発する
いや、お前は何者だと
やい、なんでオレの名前を知ってるだの
聞くことはあったはずだ凱弐稚
だが残念ながらオレが次に口から吐き出したのは

「気持ちって?」

である
間違ってはいない
だけど順序としてはとばしすぎだ
この質問は相手の素性が明らかになってから聞くものだ

だけどまぁ相手も平然としたもので

「そのままよ、貴方のキモチ」

と返してくれた
まぁ素直に返されれば嬉しいけどね!

「ど・・・どんな?」

「なんでも、貴方の喜怒哀楽なんでもよ弐稚、貴方が私に向けてくれるキモチだけが私の欲しいもの」

「喜怒哀楽って、あんたに怒るだけでも有りなのか?」

「えぇ、憎しみだって私には最上のものよ」

「えと・・・嬉しいのか?ソレ?」

「嬉しいわ、凄く」

逆さまのままニコニコ笑う彼女を「あ、可愛い」とか思うオレはおかしい、頭いかれてる

「え?てか何でオレ?」
当然の疑問に

「貴方だからこそよ弐稚」

彼女は答えになってない答えで即答
当然笑顔で

「いや、意味わかんないし、てか何者ですかキミは?何で地に足ついてないんですか?」

「質問ばっかりね、簡切にして欲しいわ」

「あーっと・・・じゃあ名前は?」
――――――
――――
―――



++++++
続きます

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