初めての練習試合・後半
第3Qにはいって、試合が再開した。
けど、緊張しているせいか、何もかもがうまくいかない。


「どうして……、」
「気にすることないよ。さ、これからこれから!!」


横山さんはそう言っているけど、そう思っている余裕は私にはなかった。


「隼菜、あの子随分と悩んでいるみたいだけど大丈夫なの?」
「ん?………大丈夫なんじゃない?それにこの試合、珠李ちゃんのためのものだしね。」
「………品定めね。」

「珠李ちゃん、第4Q(このあと)も引き続き出てもらうことになったから。」
「え、」
「今はまだ緊張しているだけだよ。なんだったらその緊張感を楽しもっ。」
「…………。」


その言葉を残し、自分のポジションについた。
横山さんがボールをカットして、パスを回していく。
そして、私のもとにボールが渡った。


「(緊張感を楽しむ……これが本当の楽しむってことなんだね。)」
「は、速い!?」


不思議と身体が自然に動いた。
今ならもっと、速くなれる。
そう思った時だった。


「っ!?」


突然、周りの動きがスローモーションに見えた。
そして、その中で自分だけが動けるような、そんな感覚になった。


「(これならルートが見える!!)」
「このスピード、まさか。」


そのスピードのままゴール下まで走り込みレイアップで点を入れる。
相手チームのメンバーは唖然として最初に我に返った主将がリスタートした。


「珠李ちゃん、このままさっきのスピードで攻めて!」
「わかった。」
「皆はボールカットしたら直ぐに珠李ちゃんに渡して!」


なぜか相手チームにも聞こえているにも関わらず、伝えた。
すると私のところに3人のマークがつき、身動きがあまりとれない状態になった。

でも、私から見たらさっきと同じようにスローモーションに見えてほんの少しの隙を見つけマークから外れる。


「天道さん!」
「っ!」


いつもより速くなってから、流れが良くなったけど、試合は惜しくも同点に追いつかず、負けてしまった。


「ごめんなさい……。私がもっとちゃんとしていれば、」
「私たちの前では、懺悔は禁止だよ。」
「それに、今日の試合は天道さんの為の試合だったしね。」
「それって、」
「珠李ちゃんの実力も見たかったからね、黙っててごめんね。」
「別に大丈夫だよ。」


試合中、私になにが起こったかはわからないままその日が終わった。









「へえ、珠李がQUPを使ったのか。」
「その瞬間を見たから、もしかしたらと思ってね。」
「あの後何もなかったか?」
「若干ふらついていたけど、何もなかったよ。」
「じゃあ明日、天道を呼び出しだな。」
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