輝きのその下で

22話 (24/25)

「というわけで3振りになりましたね。」
「…話が分からないね。」
「姫鶴、話始めたいのはわかるけど、その始め方は唐突にもほどがあるぞ?」


コホンと咳をつき、ごまかしたのか、お茶を一口飲んでほっとしていた。
毎日行っている僕こと泛塵、竹俣兼光、姫鶴一文字による座談会をしている。
といっても今日何があったかとか、夕餉で作る料理の工夫だったり、基本戦とは関係ないことを話していた。


「姫鶴さん、さっきのことだけど…始めるときは「なった。」じゃなくて「そろいました。」が正しいと思う」
「あえてそこ言うのですか?」
「お茶菓子持ってきてなかったから持ってくるね。」
「泛塵!?それは主の言う「スルー」というやつですか!!?」


主の言うスルーをして、お茶菓子を取りに厨へむかった。
本丸のみんなの事を少しでも多く知るため、こういう時は遠回りをして様子を伺うのが今の僕の日課でもある。


「あ、」


いつも通り、僕は何も無いところで転んでしまった。
すぐに立ち上がろうとしたけど、あえてここは伸びてみる。今日は単にその方がおもしろそうだったから。
僕の思うとおりに、ちょっとすると足音が近づいてきて止まった。
伏せている顔を上げてみると、
三日月宗近が湯呑をお盆に乗せて来ているのがわかる。


「…………。」
「…………大事ないか?」
「…大丈夫です。転ぶのは慣れてるので。」
「転ぶことを慣れていて果たしていいのだろうか?」
「三日月様は危ないでしょうね。すぐ退くので、失礼します。」
「泛塵、厨へ行くのか?だったらこれを俺からやろう。」


去ろうと思ったその時、ズボンの裾を軽く引っ張られる。
振り向くと、手のひらサイズの包を手渡された。
ザラザラと音がなり、開けてみると色とりどりの金平糖が入っていた。


「姫鶴一文字と竹俣兼光によろしく頼む。今日も夕餉当番はその2振りだろう、楽しみにしておるぞ?」
「………意外と食いしん坊ですね、三日月さんって。」
「あの者達は燭台切光忠や歌仙兼定のように料理が上手い。戦に出れない分鼓舞しているのだろう。俺達もその意気に答えなくてはな。」
「…………何がいいですか………………?」
「そうさなあ、では、「まーぼーどうふのからいやつ」を頼む。前に食した時、辛さの刺激が絶妙だったのでな。また食べたくなった。」


袖で口元を隠しつつも微笑んでいるのが分かる。
見た目によらず食いしん坊に見えるのが、顔立ちがいいのに対してかわいく思えてしまう。


「じゃあ、伝えておきますね…。」
「うむよろしく頼む。」


改めて厨に向かい茶菓子と三日月さんからの注文を紙に書いて置く。
戻ってくると頬を膨らまして怒っている姫鶴さんが塚塚と僕に近づいてきた。


「遅いですよ!!」
「すみません…転んでしまったもので。それで、三日月さんに出くわして話していました。」
「あら、三日月さんとお話を?であれば、仕方ないですね。」
「(本当のことだけど、ちょろい…)」
「厨にも置いたけど、三日月さんからの夕餉の注文《麻婆豆腐》がいいって、それも辛い物を」
「そうだったんだな。うしっ、もうそろ良い時間だし、作り始めますか!」


竹俣が立ち上がろうとすると姫鶴が肩に手を置き座らせるように促した。


「ちゃ・が・し!!」
「お、おう…。」


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -