輝きのその下で

15話 (17/25)


「燭台切さん、いらっしゃいますか?」
「どうしたんだい?あれ、後ろにいるのは、」
「ええ、あなたと同じ長船派にして、私と五虎退と前の主が一緒の、」
「先ほど顕現した竹俣兼光だ。よろしくな。」
「同じ長船派同士、よろしく。ここに来たのは、僕に挨拶するだけじゃないよね。」
「もちろん。さ、お願いしなさいな。」


椅子に座って少し考えると、竹俣は「得意な料理で。」と言うと
「何でもいいってことだね。」と了解して作り始める。


「いい香りですね。」
「さすが伊達の刀といったところだな。」
「お褒めいただき光栄だね。さ、召し上がれ。」
「いただきます。」


宴会で人の姿になって初めて食事をした。
時代は違えど食べることがこんなにも…言葉には表せないほどの感動にあふれた。


「なあ、姫鶴。」
「刀剣男士になってよかったと思ってます?」
「いや…お前を追いかけてきてよかったって思ってる。」
「ふふふ、やっぱり私を追いかけて、この本丸のもとに来たのですね。」
「追ってきたってどういうこと?」


さらにおかずを持ってきた燭台切さんに聞かれると竹俣はいったん食べることをやめた。
一瞬だけ私に目を合わせじっと自分の手のひらを見る。


「俺は真に呼ばれるまではじっとしていたほうがよかったと思ったんだけどな?姫鶴がこの本丸に興味本位で顕現したってわかって、俺も興味がわいたんだ。人の身で顕現するってどうなんだろうってな。」
「本当…竹俣は私の近くにいることが好きですね。」
「近くに…ね。でも、待つ側にとっては今までずっと一緒にいた人と再会したいって言うのは、わかるな。竹俣君は姫鶴さんを待たせたくなかったんだよね。」
「そういうことになるな。」


そういうことでしたか…。
[近くにいた分私を思う気持ちはあった]と。

…あら、誰か変な気で私たちを見てませんか?
とにかく、話て気がすんだのかバクバクと食事をする竹俣はいつの間にかご飯を大盛りでお代わりをしていた。


「それにしてもほんとによく食べますね。」
「作った甲斐があるよ。」
「燭台切さん、ごちそうさまでした。これからもおいしい食事楽しみにしてますね。竹俣、私は大広間の片づけを手伝います。なので、こちらの片づけを手伝ってくださいね。」
「お、おう。」


それだけを伝えて厨を後にする。
あ、竹俣はたしか…


「あいつ…気づいて言ってたのか?」
「どういうこと?」
「んいや、何でもねえ。ああ一ついうことがあったんだ。顕現したてで悪いんだが、機械もの触れないらしい。」
「え、」
「竹俣、あなた確か雷二度斬ったから……遅かったわね。修理か買い替えなら私が払います…。」


竹俣が素手で触ってしまった小さい炊飯は逸話の性質なのか、故障してしまっていた。

竹俣兼光…上杉謙信様の死後、上杉景勝様に渡された太刀です。
戦で鉄砲を持った兵を鉄砲ごと斬ったことから、
《鉄砲切り兼光》、《一両筒》とも呼ばれ、
雷を二度斬ったことから、雷切とも呼ばれてるんです。
(ちなみに雷を斬った逸話は小豆長光さんのものでもあるんですよ。どちらかは不明ですけどね。)




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