「シリウスっ、」

女は俺の首に手を回す。そして俺はキスをする。




必要の部屋を出て女と別れた。久々に動いたからか身体が重い。もうこんな時間だからか誰も廊下には居ない。何てったって消灯時間ギリギリだからな。女は俺と違う寮だから別れた。てかあの女って何寮だったかなんて覚えてねえ。

ふと、名前の事が浮かんだ。

俺がやってる事は世間一般に浮気って言うんだろう。何で浮気をするのかなんて覚えてねえし、何で浮気をしたかなんて知らねえ。名前の事は好きなんだ、多分。名前と居ると安心するし。じゃあ何で俺は名前以外の女と身体を重ねんだろ。やっぱ分かんねえ。
ただ、不安だったのかも知んねえ。俺は名前に依存してたから。でも名前は他の奴とも話すし笑顔を振りまく。それが嫌だったことは覚えてる。


合い言葉を言って、寮へと入る。談話室へ行くとジェームズとリーマス、ピーターが居た。俺が居る事に気付くと3人は顔を歪めた。


「どうしたんだよ、お前ら」

「どうしたじゃないよシリウス。君、いったい何をやっているか分かっているの?」

「あ?何の事だよ。ったく、俺は疲れてんだ言いたい事があるならさっさと言えよ」

「じゃあ、言わせてもらうけどね、名前と付き合っているのにどうして浮気何かしてるんだ」


ジェームズが俺を睨みつけながら言う。何で知ってんだよ。ふとリーマスの手にあの地図が握りしめられているのを見て疑問が解ける。


「…お前らには関係ねえ」

「どういう意味だい、それは」

「そのまんまの意味だっつーんだよ!」


怒鳴った為に少し息がきれる。


ジェームズが何か言おうとしたのをリーマスが止める。


「僕達は君が真剣に名前と付き合っていると思っていた。今までとは、遊びとは違うと。」


リーマスは静かに話す。


「でも、君は変わって居なかったんだね。最後に、一つ言っておくよシリウス。大切なものは失ってから気づくんだ」


そう言い終えるとリーマスはジェームズとピーターを連れて行った。


「ちくしょう!」


近くにあったソファーを蹴る。お前らに何が分かるんだよ。俺だって分かんねえんだよ。何でこんなに胸が熱いんだよ。





自分の部屋に入る。同室の奴はもう眠りについていた。ふと見たら俺の机の上に手紙が置いてある。誰からだよ。少し乱暴に手紙を手に取り、差出人を見る。何も書いてねえ。宛先には俺の名前。

俺は手紙の上部を破り、開けた。手紙を出すため下に手をおいて逆さまにした。チャラ。そんな音がした。俺は自分の手に乗っているものを見た。何で。これは名前にやったやつだ。俺と名前のペアネックレス。しかも何故か俺のネックレスもある。俺は自分の首元を触った。ネックレスは無い。思いついたのはあの女。ネックレスを外すのはシャワーの時だけだ。だが、あの女を恨むと同時に無くした事に気づかなかった自分に苛立ちを感じた。

俺はネックレスを握りしめ、手紙を開いた。

名前の字だった。


さよなら。信じられなくて、ごめんなさい。


書かれていたのはたった二文。…違う。違うんだよ。お前は悪くねえんだ。悪いのは、俺なんだ。

さっき、リーマスに言われた言葉を思い出した。


「大切なものは失ってから気づく……か」


何だか胸に大きな穴が開いたみたいだ。名前は知ってたんだな。俺が浮気してる事を。何が信じられなくてごめんなさいだ。俺に信じるとこが無いんだから当然じゃねえか。

手を開き、ネックレスを重ねる。見えたのはハートのマーク。俺はネックレスを両手で握りしめ、歯を食いしばり嗚咽をこらえた。
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