窓を開けた。冷たい風が一気に部屋へと流れ込んでくる。ほんの少し、寒さに体を震わせればカーディガンが肩にかけられた。


「また来て下さったのね、天使様」
「何度も言っているでしょう、私は天使ではありません」
「いいえ、天使様は天使様ですわ。ここは二階ですのよ?…それに初めて会った時、空から貴方が降りてきたのを私はぼんやりですけど見たのですから」


私がそう言うと天使様はいつものようにため息をついた。

天使様がこの部屋へ来るのは、初めてのことではない。かれこれ一週間は毎晩のようにこうして会っているのだ。天使様は、私に色々なお話を聞かせてくださる。


「…名前」
「はい天使様?」
「名前は外に出たいと思わないのですか?」
「私は…」


外に。
一体私が外に出なくなってもう何年になるのだろうか。
お母様とお父様は私が外に出ることを良く思わないだろう、心配性な二人だから。私の目が見えなくなってから二人の心配性に拍車がかかって、私を心配するあまりお母様とお父様はよく喧嘩をするようになってしまわれた。


「私は…外に出たいとは思いません」
「…そうですか」
「ええ」


天使様が何を聞きたかったのか質問の意図は分からなかったけれどこうして話しているだけで胸がほっこりとするのです。
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