虎太08


「虎太きゅぅぅうんん」

「っ…!」

「可愛いよ…すごく可愛い!!!」

「シェリア,飲みすぎだ」

「飲んでないよ,飲んでないよー!」


どこが飲んでないっていうんだ,この酔っ払いめ.

どう考えたって,浴びるほど飲んでぐでんぐでん.

弱い癖に飲むんだから,タチが悪い.


「あのね,今日はさぁ,打ち上げがあったんだぞ」

「そうか」

「でね,女の子同士と盛り上がって,恋人自慢したんだよぉ」

「はいはい」

「そりゃまぁ私には恋人なんていませんけどねぇぇえあひゃひゃひゃ」

「どんだけ飲んだんだよ」

「飲んでねーって言ったじゃんよー!ていうか,聞けよ!いいから聞けよぅ!」


駄目だこれは,しばらくまともに会話が出来ない.

いつもはこんなことはない.

豹変とも言える,この酒癖の悪さ.


「でな,恋人いないじゃん?だからさー…嘘ついちった」

「嘘?」

「そうそう,大嘘!虎太が竜持でしたっていうくらいの大嘘」


なんだその例えは.


「とりあえず,虎太っぽい想像をしてその人を彼氏って言ったんだよぉ」

「誰だそれは」

「想像だから知らないよねぇ,虎太のばっかー!かわいいぎゅうってさせろー」

「…はぁ」


ぎゅうっと胸のところで抱き潰されそうになる.

当たってるんだよ,いろいろ柔らかいところが!

俺だって男なんだぞ,反応するだろ.

…いろいろ.


「いいから,離れてくれ」

「やですよーだ」

「襲うぞ」

「虎太のえっちーばかー…ご無沙汰してるの?一人でしてないの?」

「そ,そういうこと聞くな!」


当たり前だろ…俺の初めては,まだだ.

ぶっちゃけて言うと,童貞という奴だ.

こんな女を好きになってしまったが最後だと思う.

このままじゃ魔法使いになれるかもしれないな.


「ほふえぇー…」

「どうした?」

「やりたい?したい?」

「はっ!?何言ってるんだお前…!」

「いやぁ…欲求不満そうだからぁ…えっちする?って聞いたんだけど」

「し,しない!断じて俺はこんなところで理性を崩壊させたりしないからな!」

「こんなところって,ここ虎太きゅんの家なんだけどぉー…変なの」


ち,ちくしょう….

いつか襲う…そう思ってても手が出せないのが俺.

チキンと罵られても仕方ないが,こんなぐでんぐでんの酔っ払い相手に出来るか!

にへっと笑う顔が憎さ余って可愛いからしょうがないけど.


「おい虎太きゅん」

「なんだ」

「酒持ってこいよぅ!飲ませろー!」

「もう散々飲んでるだろうが!」

「うっせー飲ませろ!!飲ませろよおおお!」

「だあああもうお前は寝ろ!寝てしまえ」

「やーだー虎太きゅんと同じお布団じゃないとやだぁ」


めんどくせー….

普段真面目な癖に.

酔いが冷めたらからかっていじめてやろう.



「わかった.じゃあ一緒に寝ていいから」

「ほんと!?」

「うん」



決して俺からは何もしないぞ.

そう思って布団を敷いた.

並んでひとつの布団に入る.

狭い.


「ぬくい〜ぬくい〜へへ〜虎太きゅんむぎゅぅ〜」

「く,苦しいんだが」

「耳弱い?」

「ひぅっ!」

「きゃわいい〜」

「や,おま…服に手を入れる…な,よ…やめっ」

「ううん…やめないよぉ…」

「まさぐるな!」

「ふへへ…」


身体的危険を感じて動こうにもがっちり抱きつかれて.

いろいろと精神的に限界だった.

いっそもう襲っても…と揺らいだその時,静かな寝息.


「…マジか」

「やぁ…もう飲めなぁい……むにゃ」

「このタイミングで…」


一人興奮してしまった身体を沈めることも出来ず,夜な夜な苦しさに耐えるしかないのか.

生殺しのまま,布団から出ることも叶わない.

そのまま夜がふけていく.

朝方になって,そして俺の意識もやっと落ちていったと思った刹那.





「きゃああああああ!!なんで!私!虎太くんと一緒に!!寝てるの!?」





寝る事さえも許されず,シェリアのけたたましい叫びは耳に刺さった.

沸々と怒りを込めた状況説明を終え,二人とも正座で向かい合っている.

そして,真っ青な彼女は俺に土下座をすることとなった.

謝るくらいならいっそ正気のままで抱いてくれと思った下心は伝えられなかったが.



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -