おうちにようじょがやってきた30


妙にシェリアが俺にひっついてくる.

刺さる視線は,兄二人からだ.

どうしてこんなことになってるんだ?



「シェリア,どうしたんだよ」

「なんでもないデス」

「…なんでそんなにくっつくんだ」

「えっと…あの…ないしょ」



朝起きて飯食って,それまでは普通だった.

こんなにべったりされてしまうと,ちょっと不便だ.



「おーぞにい」

「ん?」



こてんと首を傾げながら,シェリアは俺に言う.

竜持と虎太が聞き耳を立てているのがわかった.



「だいて」

「ぶはっ」


ドンガラガッシャーン.

竜持が読んでいた本を床に投げ捨て,虎太が机の上にあったものをすべてひっくり返す.

おい虎太,それ後で俺が片付けるはめになるんだぞ!



「ななななんてことを言うんですかシェリアさん!!!!」

「どうした!なんでそんなこと言うんだ!!!正気か!!」



ちょ,おま…えええええ!!!?

全てに理解が追いつかない俺に,ダダダッと駆けてくる二人.

誰もが耳を疑った.


「おーぞにい」

「ちょっと待って落ち着け.どうしたんだ一体」

「ちゅースル?」

「ぎゃああああ僕のシェリアさんがあああああああ」

「シェリア!後悔するぞ!俺にしろ!!!」

「そうです僕にすべきです!」

「いや,おかしいってそれ」

「凰壮は黙ってろ」

「あっち行ってなさい!」


なんなんだ,単にとばっちりじゃないか.

ていうか,シェリアに変な事教えたの誰だよ!

俺がいつも被害に遭うんだぞ!!!

もっと為になること教えろ!



「…シェリア,そんな言葉誰に教わったんだ?」

「おねえちゃんたちデス」

「おねーちゃん…おねえちゃん……高遠と西園寺?」

「エリーとレーカ」

「あいつらが原因かああああ!」

「シェリアに変なこと吹き込んだのはあいつらか」

「…なんてことを!シェリアさんがビ●チになったどうしてくれるんです!?」


昨日,遊びに行っていろいろ吹き込まれたんだな.

なにやってんだあいつら…こんな幼児に.


「意味がわかって使ってるわけじゃないよな?」

「いみ…えっと,おねがいがあるときにつかう」

「おねがい?」

「だめっていわれたときに,おねがいするデス」

「…おねだり?」

「やらしい言い方しないでください凰壮くん!」


竜持にものすごく怒られた.

いや,やらしくないだろ!

そう受け取るお前がやらしいんだよ!!


「シェリア,それは絶対に俺達以外には言うなよ」

「いや俺達にも言うなよ」

「僕には言ってもいいですよ」

「「おい」」


シェリアがいろんなものに感化されていく….

このまま純粋に…というわけにもいかない気がしてきた.

どうしようギャルになったら.


「シェリアさん,他に何か教えてもらったことは?」

「えっと,おんなのぶき!」

「女の…武器?」

「おこられたときは,なみだ!いやっていわれたときは,えがお!」

「なんじゃそら」

「えっとね,おこられたらないたらいいってことデス」

「笑顔は?」

「つまましかや…にスル?」

「つまましかや?」

「慎ましやかでしょう」

「あ,なるほど」


今のでよくわかるな.

というか,そんなテクニック知りたくない.

シェリアがこれを使い分けるような女になったら,俺達やばいんじゃないか?

やばいだろ.


「ちゅんでれ,もイイっていわれたデス」

「ツンデレ…」

「ツンデレですか」

「ツンデレか」


あ,絶対今妄想してるなコイツら.

目線が左斜め上だ.

かく言う俺もそうだけど.

『おーぞにいなんてべつにすきじゃないデス,キライ!』

あれこれただの悪口じゃね?

俺ツンデレよくわかんねーや.


「ツンデレいいですね」

「…こたにいのばかって言われてみたいな」

「わかります!罵ってから,今のはやっぱり違うって必死に弁解してほしいです」

「…お前ら」


どうやら二人は何か新しい境地を見たらしい.

別に羨ましくねーよ?

ノーマルなシェリアが一番可愛いんだからな?



「で,結局俺へのお願いはなんだったんだ?」

「りぼん,つけてほしかったデス」

「そんなの普通に言ってくれれば,付けるから.もうあんなこと言わないでくれよ」

「…わかったデス!」

「よし,じゃあツインテールな」

「ツインテール!」

「ツンデレにツインテール!!」


もう駄目だこの二人.

哀れみに満ちた目で,シェリアと一緒に出て行った.

いつもは頼もしいのに,妹の前ではアレだもんな.

三つ子なのに,俺だけ仲間外れみたいだ.

まぁシェリアがいるから,好都合だけど.






―幼女の武器はマシンガン並―





「パパ!」

「ん,どうしました?」

「あ,あの…えっと」

「はい,なんでしょう」

「だいてー!」


ガシャンッ.

母さんが皿を割り,父さんが固まっていた.

この後俺達が問いただされたのは言うまでもない.

でも,今回は本当に無実だぞ!!!



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