おうちにようじょがやってきた02


困りました,どうしましょう.

シェリアさんが僕の膝の上で眠ってしまいました.





「ほん,よんでほしイ,デス…!」

「いいでしょう.どの本ですか?」

「コレ…,タイトル…ワタシもじよめない…!」

「えっ,これを読むんですか?」



シェリアさんが差し出すのは,絵本でもなく紙芝居でもなく,厚手の素材で出来た本.

表紙には”源氏物語”.

こんな本をどこから持ってきたのか,どうしてこの本なのか甚だ疑問でなりませんよ.



「バードによむ,おねがいシマシタ…でも,これドラゴンによむようにいわれたデス」

「そうですか,でもこれは君には早いと思います」

「No,これがイイデス!」

「でも,挿絵もなければ難しい話ですし」

「よんでくれるのダメだったラ,タイガーにたのむデス」

「えっ,あー…それは,ヤですね」



正直なところを言うと,僕達三つ子はシェリアさんが可愛くて仕方ないんです.

初日は,面倒事だと思っていたんですが…会ってみればこんなにいい子だなんて思ってもみませんでした.

つまり,僕達は3人で可愛い妹争奪戦をやっているわけで.

その当人から誘われて断ると思います?

断るわけないじゃないですか!



「じゃあ,少しだけ読んであげましょう」

「Thanks!」

「あ,ここに座ってください」




シェリアさんを膝に乗っけて,後ろから覆うように本を持っての朗読.

実は僕も源氏物語は紫式部が書いたということしか知らないですし,読んだことなかったんですよ.

あ,こんな場面二人に見つかったら,ものすごく何か言われそうですよね.

でも,これも不在の虎太くんと断った凰壮くんが悪いんですから.







「……ドラゴン」

「どうしました?」

「トテモ,わからないヨ!むらさきのうえとはドッチデスか?」

「紫の上は人の名前ですよ」

「Oh…かわったネームなのデス…」



やっぱり,幼い外国人の女の子が読んでもわからないんじゃないですかね.

朗読を始めて,まだ数分なのに…このペースではとてもじゃないけれど終わりません.

というか,シェリアさんもあまり興味はないみたいです.



「面白くないですか?」

「ううン…ドラゴンよんでくれる,うれしイ」

「あ,いやそうじゃなくって…内容が難しいから他の本にした方がいいんじゃないですか?」

「デモ,これよむとイイいわれた」

「だれに?」

「パパ!」

「お父さん,ですか」



あの人は一体なにを考えているんですか!!!!

こんな幼い子がわかるわけないじゃないですか!

自分の父親ながら,本当に困った人だと思います.

まぁ…今までうちは男3人兄弟だったので,女の子のシェリアさんが可愛くてしょうがないのでしょう.



「…やっぱり,これはダメです.僕が返しておいてあげますから,絵本にしましょう」

「うー…ドラゴン,ワタシがほんのことワカラナイから,つまんないデス?」

「そういうわけじゃないですよ.これは本当に難しい本なんです.僕でも読めない漢字がたくさんありますから…」

「わかったデス,きょうはもうおしまいなのデス」

「えっ?やめちゃうんですか?」

「ワタシ,ちょっとねむイ…」



シェリアさんは重そうなまぶたを擦って,僕を見上げるものだから,これ以上何も言えませんよね.

写真に収めたい…けれど,動いたらシェリアさんが落っこちてしまう.



「ドラゴンも,ネムル!いっしょにねんねするデスカ?」

「いいえ,僕は起きてますから,このまま眠っていいですよ.ほら,目を擦ってはダメです」

「OK,じゃあ…チョットだけ…Good night…」

「おやすみなさい,シェリアさん」








こうして冒頭に至るのですが,未だにシェリアさんは眠ったままです.

凰壮くんがさっき帰ってきたのですが,うるさいので追い払ったところです.

ものすごく睨まれましたけど.

この状況を見て凰壮くんも大きな声を出すほど,お馬鹿ではないのであっさり引き下がりました.

ちなみに,この数時間の間,僕は動けない状態だったので,源氏物語を読み終えてしまいました.



「ん…」

「こんなもの,やっぱり貴女が読むような本じゃなかったですよ」



大分意訳なのですが,はっきり言ってロリコンの話だと思いました.

だって,光源氏は歳の離れた女の子を育てて,自分の妻にしてしまうんですよ!

そんなマイフェアレディなお話を読ませるなんてできるわけないでしょう….

これは後でお父さんの頭に振り下ろしましょう.

出来れば角が当たってまともな人になるように.






―僕も案外光源氏の素質があるのかもしれませんね―





「お父さん,こんなものをシェリアさんに読ませないでください」

「えぇー!」

「少なくとも僕らが変な気を起こしたらどうするつもりですか!」

「それもイイと思ってるよ.可愛い息子の考えなら,心行くまで好きにしなさい」

「!?」

「ハッハッハ!シェリアちゃんは一体三兄弟の誰好みの女の子に育っていくかなー!」





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -