おうちにようじょがやってきた11


「タイガータイガー!」

「シェリア?!」

「あそぼナノデス!」

「あ,あぁ…何がしたいんだ」

「おままごと!」


シェリアからおままごとに誘われた…!

無愛想だからと,あんまり俺を誘わないシェリアが…!

おままごとに誘ってくれた!!

それだけで胸がいっぱいになった.


「二人でするのか?」

「No!ドラゴンとバードもイルの!」

「…ふーん」

「タイガーもいっしょ,あそぼ?」

「わかったわかった,とりあえず下に降りるか」


シェリアが俺の腕をぐいぐい引っ張った.

3人揃って,まずは配役決め.

おかしいか?おかしいだろう?

なんたって,三つ子の悪魔とか言われてる俺達がままごとだぜ.

笑えよ.





「シェリアさん,設定はどうなっているんですか?」

「ドラゴンはママデス」

「…母親ですか」

「タイガーはパパ!」

「俺が父親ってことは,凰壮はなんだ?」

「チャイルド!」

「おい,いきなりカオスじゃねーか」

「chaos…?」


うーん…竜持と,俺が夫婦で,その子供が凰壮か….

ものすごく微妙な家族構成で行われるこのままごとにぞっとした.


「シェリアは,俺の妹役か?」

「ワタシは,きんぎょやるデス」

「「「金魚!??」」」

「パパ,ママ,チャイルド,ペットのファミリーデス!だからワタシきんぎょ!」


こうして本当にカオスなおままごとが始まったのだった.

女の子って怖い….






「…ただいま」

「おかえりなさい,貴方!ご飯にする?お風呂にする?それとも…」

「めし」

「貴方ってば,人の話くらい聞いて下さいよね.はいはい,ご飯ならもう出来てますよ〜」

「あ,あぁ…」


場面は俺が家に帰宅するところからだ.

裏声を使ってまで演じる竜持の熱の入り様には少し引いた.

すると,シェリアからダメ出し.


「タイガー!そんなのダメ!もういっかい」

「えっ」

「パパとママはもっとなかよしデス」

「……わかった」


リテイクになったので,もう一回同じところをやらされる.

なんとか及第点でクリアすれば,子供登場…俺と同じ大きさの.


「オカエリオトウサーン」

「た,ただいま」

「キョウハハヤカッタンダネ」

「そうだな,いつもより仕事が早く終わって…」

「オシゴトオツカレサマー!」

「ダメダメダメデース!!!!バード!!!!」


呆れるほどに凰壮の演技は下手くそだった.

大根役者にも程があるカタコトの棒読みに加えて,やる気のない目.

シェリアがすかさず,やり直せと言う.

それから何回か試したが,…結局何回やってもダメだったのでそのまま続行.


「今日はハンバーグですよ」

「オイシソー!オレハンバーグスキダヨ」

「じゃあ早速食べるか」


食べる真似をして,無言の晩さんになったが,シェリアは何も言わない.

腕をゆらゆらと動かして,あっちへこっちへ動いている.

こっちを見てはいるが,何も喋らない.


「ごちそうさま」

「ゴチソウサマーオイシカッタ」

「それはどうも.お風呂,さっさと入っちゃってくださいね」


なんとなく,それっぽい動作をして,お風呂に入る真似をした.

竜持は食器を片付けているのか,キッチンにむかっていた.

凰壮は転がっている.

そして,シェリアはまだゆらゆらをした動きをしている.



「そ,そろそろ寝ましょうか」

「そうだな」

「オヤスミナサイ」


寛いだ1コマを演じた後,寝ると言って三人で川の字になった.

本当に川の字になって,寝る真似.

そして一瞬の朝で,起床.


「あの,今更ですけど,これってシェリアさん不参加なんですか」

「俺すっごく今恥ずかしい」

「何も言うんじゃない.俺だって一緒だ」

「…シェリアは?」


シェリアは,少し離れたところで仰向けになっていた.


「おーい,シェリア」


返事がない.

動く気配もなく,俺達は顔を真っ青にして飛び上がる.


「シェリア?!」

「どうしたんですか!」

「どっかぶつけたのか?」


シェリアは息もしていたし,わざと俺達を無視している.

揺すっても,動いてくれそうない.

困っている俺達に,シェリアはボソッと呟いた.


「…ワタシは,きのうだれもエサをくれずに,しんでしまったきんぎょなのデス」


設定細けぇぇええ!!

じゃあ,あの妙な動きは金魚を演じてたっていうのか….

確かに俺達3人,金魚に触れずに就寝したけどよ.

一日で金魚死ぬのか.





「…うわーん,金魚が」

「あぁ,お墓を作ってあげなければなりませんね」

「えっ?」


手を合わせるフリをした竜持に,泣き真似をした凰壮.

お前ら,続行するのかよ!


「ほら,貴方もちゃんと弔ってあげてください」

「うわーん,俺の金魚がー」

「……もう,どうにでもなれ…」


こうして,謎のおままごとは終わり方も謎のまま,夕飯まで続けられる.

ちなみに,死んだ金魚はお墓を立て,凰壮が新たに2代目の金魚を買ってきたことになったため,再びシェリアは金魚の役をやっていた.

こんな変なおままごとはなかなか体験できない気がしている.






―ままごとで金魚役って,ありなんですか―






「やっと,終わってくれましたね…もうクタクタですよ」

「それにしては熱演だったろお前」

「結局,最初っから設定が理解できなかったんだけど」

「それを言い出したらキリがないですよ.まず,僕と虎太くんが夫婦の時点でおかしいでしょう」

「こんな奥さん,俺だったら御免だな」

「僕だって凰壮くんみたいな子供を産んだなんて嫌すぎます」

「ままごとって案外面白いもんだな」

「「虎太(くん)…」」

謎は深まるばかり.



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