おうちにようじょがやってきた09


「シェリア,めっちゃかわいいうっわ,マジかわいい」

「えー!さっきのほうがいいって」

「二人とも邪魔ですよ!写真に写るんで離れてくださいよ!」

「別に一緒に写ってもいいじゃねーか」

「嫌ですよ」


先日,買い物に行ってシェリアさんの洋服をたくさん購入したんです.

持ってきた服が春物だったので,今の時期には少し暑そうでしたから,夏物を選びました.

本人は同行しなかったんですけど,僕たちで選んで今こうして着せ替えているんですよ.



「シェリアはスカートの方が似合う」

「いやいや,ボーイッシュなのも結構いいと思うけど」

「ウルサイのデス…」

「ボーイッシュって…なんか違う.西園寺系のひらひらっとした服がいいと思うぞ」

「そこは敢えてだろ?高遠みたいにラフな方がいいに決まってる」


存外,二人がヒートアップして,今,僕は蚊帳の外なんですよね.

しょうがないので,カメラに収めることに徹しています.


「バード,タイガー,もうつかれたデス」

「まだまだあるぜ?」

「ほら,これはどうだ?」

「うぅぅ〜…」

「こらこら,シェリアさんが疲れたって言ってるんですよ.無理強いしちゃいけません」

「お前だって,まだ見たいだろ」

「それでも,嫌がってるんですから」

「イヤガッテルンデスカラ!」


僕に習って,シェリアさんが言えば,丸く収まるわけです.

事実上の力関係をシェリアさんはよく理解しています.

聞き分けがいいと言うとおかしいですが,こういうときの対処法はずば抜けて良いんですよ.

洞察力が高いんでしょうね.





諦めた二人は,庭でサッカーを始めました.

僕はシェリアさんと中で,見てるだけです.

だって,一人では危ないですし,寂しいでしょう?


「やっぱり,ドラゴンがいちばんやさしいのデス」

「おや,そうですか?」

「みんなやさしいケド,ドラゴンはワタシ,レディとしてくれマス!」

「うーん…僕は,シェリアさんも立派な女の子ですから,そこは分別しないといけないなぁって思ってるんです」

「ブンベツ?」

「簡単に言えば分けて考えるってことです」

「こどもあつかいは,イヤじゃないデス.でも,ボーイといっしょでナイの,わかってほしイ」


複雑な心境なんでしょう,女の子っていう生き物は.

まぁ…僕としては,男子と一緒に扱うっていうこと自体が無理ですからねぇ.

仮に,シェリアさんが男勝りな子だったとしてもそこはきちんと区別しておきたいのです.





「ワタシ,しょうらいけっこんするナラ,ドラゴンみたいなハズバンドがイイデス」

「それは嬉しいですねぇ」


女の子って,こういう話題が好きなんでしたっけ?

結婚とか恋とか,よく女子が会話しているのを耳に挟みます.

僕,そういう話題は結構疎いんですよね.


「りそう,たかいデスか?」

「何処でそんな言葉を覚えてくるのか,僕は不思議で溜りませんよ」

「ジャパニーズ,トテモむずかしい…ケド,イングリッシュも,ぜんぶワカラナイときアリマス」

「シェリアさんは,どうやって日本語を覚えたんですか?」

「パパとか,いんちょうセンセイとか…いっぱいべんきょしマシタ」

「へぇ」


こんなに小さいのに,偉いですね.

僕は勉強は出来る部類だと思ってますけど,この子の年齢の時は流石に外国語は理解できなかったと思います.

小学生になって,やっと英語を認識したような記憶はあるんですよ.

今でこそ,テストはほぼ満点ですけどね.


「シェリアさんは,英語と日本語のどっちが使いやすいですか?」

「ウーン…しゃべるはイングリッシュ!でも,きくのと,かくのはジャパニーズがいいデス」

「それは随分大変そうですねぇ」

「さいきんは,にほんご,たいぶワカルなりマシタ」

「そうですねぇ.だいぶ喋るのが上手になったと思いますよ」


来た当時は,今よりもっとカタコトでしたからね.

最近はたまに文法が変ですけど,だいぶ聞き取りやすくなりました.

何の影響を受けてか,とんでもない言葉を発するようにもなりましたね….

おそらくお父さんやお母さんが僕達の知らないところで入れ知恵してるんでしょうけど.


「ドラゴン,イングリッシュは?」

「僕は,苦手ではないですけど,得意というほどでもないです」

「タイガーとバードは?」

「うーん,二人ともテストは結構良い点取ってますからね.並以上ではあると思いますけど」

「テスト?」

「学校に行けば,たまにテストがあるんですよ.どのくらい分かってるかっていうのを調べるようなものです」

「Oh…それじゃあ,キライなものとスキなものがワカルデスね」

「えぇ」


シェリアさんも,小学校に入学すればいずれそういう日も来るんでしょうね.

とはいえ,僕達が卒業した後の話なんですけど.

残念でなりませんよね,本当に.

せめて同じ学校で1年くらいは過ごしてみたかったですよ.






「おーい,通り雨だ!洗濯物入れてくる」

「竜持,悪いんだけどタオル頼む」

「あ,はい.わかりました」


夕立でしょう,すぐに止みそうですね.

ただ,思ったよりも酷い雨だったのか,入ってきた二人がびしょ濡れでした.


「つめてぇ」

「いきなりだったもんな」

「かぜひいちゃうデス,おふろはいるデス!」

「そうれもそうだな」

「ちょっと早いけど,湧かしてもう入るか」


つまり,この洗濯物を畳むのは僕になるわけですね.

タオルを持ってきて早々,ちょっとイラっとしたので二人に投げました.


「シェリアも一緒に入ろうぜ!」

「ちょっと何言ってるんですか!ダメですよ!」

「なんでだよ,別にいいだろ」

「子供なんだし,それくらい大丈夫じゃないのか?」


何を言い出すのかと思えば,この二人はどこまでもゴーマイウェイですか.

前日オトメゴコロについて,シェリアさんを泣かしたばっかりだというのに!

反省どころか,懲りてないですね!!!





「シェリア?」

「イヤデス!!タイガーもバードもえっち!すけべ!ばか!」

「ったく,お前なぁ…」

「しょうがないな,まぁいいか」


シェリアさんって,罵倒する言葉を結構知ってますよね.

その記憶力の良さと賢さには,少し感心します.




諦めた二人は先にお風呂に入るようです.

僕はこの洗濯物を片付けましょうか,…あぁめんどくさい.


「ワタシもやりマス」

「ありがとう,シェリアさん.じゃあこのタオルをこうやって畳んでくださいね」

「OK!」


シェリアさんは,気配りが出来るから案外良いお嫁さんになるかもしれませんね.

まぁ…どこの馬の骨とも言えない輩に,僕が渡すわけないですけどね.





―僕の妹はおマセさん―





「上がったぜ」

「サッパリしたな」

「じゃあ,シェリアさんが次にどうぞ」

「No,ドラゴンもいっしょにはいるデス!」

「「「えっ」」」


僕ってもしかして,兄でも男とも認識してもらえない存在になっちゃったんですかね?


「なんで俺達はダメで,竜持はいいんだ」

「解せぬ」






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