Direct Memories:リクエスト:syunia様


今も鮮明に蘇ってくる,今年の夏.

どの思い出も,凰壮くんと一緒に作った思い出ばかり.


***


7月某日,夏休みを迎えるまでもう1週間を切った.



「シェリア,今年の夏休みってなんか予定あるのかよ」

「ううん,ないよ」

「だ,だったら…ちょっと付き合わないか?」

「うん,何かプランがあるの?」



ふと,夏休みに入る前に凰壮くんからお誘いを貰った.

彼にしてはめずらしく,行き当たりばったりではないスケジュールの提案.



「この日と,この日と,それから…ここからここ,んで,この日と,最後のこの日」

「わ,待って待って.メモ追いつかない!」

「まだ予定入ってないんだよな?俺が予約したからな」



ほぼ一方的に決まった日程に,笑いが出てくる.

予約された私の夏休みが,約1ヶ月半前に始まったのだ.


***


1回目の予約は,7月27日.

この日は,凰壮くんと水族館に行った.

夏休みだから,勧告客も多くて,ずっと手を繋いで歩いたんだ.

イルカとアシカのショーも見て,お揃いのアイテムをゲット.



「イルカ可愛かったね」

「おう.お前,すげー嬉しそうだな」

「うん!とっても楽しかったよ!誘ってくれてありがとう!」



結局,その日はデートを普通に楽しんで,帰宅.

ちゃんと家まで送ってくれて,帰ってもメール合戦で.

寝たのは日付変わることだったよ.


***


2回目の予約は,8月2日.

デートからまだ数日だっていうのに,すごく頻度が高いなって思ってたんだよね.

当日まで内容が聞かされてなくて,熱中症対策だけはしてこいって.

待ち合わせて行ってみれば,サッカーの試合だった!



「大活躍だったね!シュート,すごくかっこよかった!」

「…お前が見てるのに,絶対外せないし.応援サンキューな」

「凰壮くんってば,もう!」

「ははっ,ホントのこと言っただけだろーが」



なんて,別にイチャついてるつもりはなかったんだけど,チームからすごいブーイングだった.

冷やかされて凰壮くんが怒ったんだけど,私,嬉しかったな.

皆が凰壮くんの彼女扱いしてくれて.


***


3回目の予約は,8月9日から8月16日.

凰壮くんの家族旅行に何故か同行することになってた.

申し訳なくて,お断りしようとしたんだよ!

でも,大学に勤めてらっしゃるお父さんが急に来れなくなって予約欠員になっちゃったらしくて.

代わりじゃないけど,私が代理に行かせてもらったんだ.



「凰壮くん,本当に良かったの?迷惑じゃなかった?」

「気にすんな.俺はお前が良かったんだよ」

「でも…」

「虎太も竜持も,お前ならって言ってくれてさ.何より,せっかくの夏休みなんだぜ?いいじゃねーか,恋人らしく旅行ってのも」

「う,うん…!」

「ちなみに,俺とお前の部屋一緒にしてもらったから」

「えええっ」

「嘘だよバーカ」



虎太くんと竜持くんと凰壮くんって本当に仲良しなのね.

大丈夫かなって不安だったけど,2人とも気を遣ってくれたのかな?

ほとんど私と凰壮くんが一緒になるように行動させてくれて.

でも,夜に寝室に勝手に入ってくる凰壮くんを締め出してくれたことは助かったなぁ.

凰壮くんは男なんだから下心くらいはあるし…とか言ってたかな.

どこから出したのか,虎太くんにボール食らって,一晩中竜持くんのお説教されたみたい.


***


4回目の予約は,8月20日.

この日はどこにもいかずに,宿題を片付けようってことになって図書館へ.

竜持くんと虎太くんも一緒.

持ち寄って,分担して,あっという間にワーク類が片付いちゃった!

とはいっても,ほとんど虎太くんと凰壮くんが竜持くんのを丸写ししてたんだけどね.

私は地道にやるタイプだから,分からなかった問題と間違えてたところを直しただけ.

絵画とか作文は,夏休み始まってすぐに終わってたから,これでホントに宿題は終わり.



「シェリア,ここ教えてくれ」

「私,竜持くんほど上手に教えられないけど…いいの?」

「竜持は厳しいし虎太に付きっ切りだから.ていうか,お前のも結構わかりやすいよ」

「そうかな?ありがとう.どこがわからないの?」

「これの解き方わけわかんねーんだ.なぁ,終わったら帰りにデートしようぜ」

「わぁ…楽しみ!じゃあ頑張らなくっちゃね!」

「お前のそういう素直で可愛い反応,ホント好き」



ぐしゃぐしゃって頭なでられて,勉強もして.

全部終わってから,図書館を出て,コンビニでアイスを買ってから食べながら歩いた.

味の違うアイスを買ってね,半分だけ食べて交換したんだ.

間接キスしちゃった!

意識しちゃってからは,アイスの味わかんなくなって,ショックだったなぁ.


***


5回目の予約は,8月30日,今日.

今日は,地元でお祭のある日で,そこに行くんだ.

ちょっと頑張って,浴衣着て,おめかししてさ.

凰壮くん,どんな反応するかなぁ.



「シェリア,こっちこっち」

「あ!凰壮くん!」



凰壮くんは甚平姿で,待ち合わせ場所にもう来てた.

私を見るなり,ちょっと驚いた顔をして,可愛いって.

本当に小さな声だったけど,ちゃーんと聞えたもん.



「お店回る?」

「そうだな,なんか食べようぜ」

「じゃあ,わたあめがいいな」

「俺も食いたいけど一口だけでいいから,分けてくれよ」

「うんっ!」



1個のわたあめを買って,私が持って歩く.

ときどき凰壮くんがかじって,でもほとんどは私が食べちゃった….

それからも,焼きソバに林檎飴,たこ焼きにカキ氷,食べ物ばっかり!



「金魚すくい,やるか?」

「ううん,うちで飼うところないから…でも,見るだけ見ていい?」

「おー」



遊ぶようなお店は,なんでか全部見てるだけ.

凰壮くん,やりたくなかったのかな?

あんまり興味がないっていうか,食べ物以外に全く関心を示さないって感じ.

良く考えたら凰壮くんって,そういうのではしゃぐような性格じゃないもんね….

妙に納得したら,スッキリ.



「このあと,花火だけど…」

「あ,そうなんだ?すごく人が多そう」

「…水を注すわけじゃないんだけどさ,その…花火,絶対見たいか?」

「そこまで絶対見たいわけじゃないけど…どうかしたの?」

「俺,あんま興味なくてさ.何しに来たのかわかんねーけど」

「そっかぁ,じゃあ,人も多いし,どこか違うとこでデートしちゃう?」

「でも,いいのかよ?」

「凰壮くんがいるなら,そっちの方が楽しいもん」

「お前なぁ…そういうこと言うか,今」



お祭,十分楽しんだから,満足.

それもこれも,凰壮くんと一緒だからだよ.



「俺んち行こうぜ.虎太も竜持も祭り来てていねーから」

「そうなんだ?行こう行こう!」



で,導かれるまま凰壮くんのおうちへ.

ホントに誰もいなくて,おうちデート突入!

浴衣だから,何もできないから…座ってお喋りばっかり.



「今年の夏は,ほとんど凰壮くんと一緒だったね」

「そうか?あー…そういえば,俺がそうしたんだった」

「夏休みがもう終わっちゃうね.残念だなぁ」

「そうだな」

「ホントにね,この夏は楽しかった.凰壮くんが一緒だったから」

「…俺も,お前と一緒で楽しかったよ」

「たくさん思い出ができたね.デートに試合に旅行に,勉強会に,お祭に…!」

「勉強会も込みなのかよ!…いや,でも,まだ1個イベントが残ってんぞ」

「え?何かやり残したことある?宿題とか?」



ちげーよ,と凰壮くんが身を乗り出して私を見つめる.

真横に並んで,縁側に足を伸ばすように座ったままの姿勢で.

私も必然的に上を向けば,凰壮くんの唇が重なった.



「…初めての,チューが終わってなかっただろ」





「ぷっ…なにそれ」

「そうだろ?付き合い出して,手を繋ぐまでに2ヶ月掛かって,5ヶ月目までそれ止まり.そろそろステップアップ…じゃね?」

「…でも,ステップアップ,あっという間だったね」

「そ,そりゃ…その,こういうのには段階というものがあってだな,一段ずつ上がってくもんで…俺が別にその,スケベとかそういうんじゃ…」

「凰壮くん」

「あ?」

「私,階段一段じゃ物足りない」



凰壮くんの,襟を軽くつかんで私からのキス.

さっきとは比べようもない,長く,少し大人の口付け.

これを自分からしてしまったことへの羞恥もあったけれど,いつのまにかペースは凰壮くんに持っていかれて….



「ん,っふ,…お前,可愛いことしてんじゃねーよ!ビックリしただろ!」

「…んぁ,でも,凰壮くんとじゃなきゃ…しないもん…」

「なんなのシェリア,俺殺したいの?萌え殺す気かよ?」

「最後の最後で,濃い思い出になったね」

「っ…ああもう!無理!もう一回!」

「ふぁっ…ぁぅ…」



長い夏休み,最後の思い出がしっかり刻まれていく.

日記の最後に,今日の思い出を書くつもりで空けてきたけど…そんなのは最初から必要なかったみたい.

口付けられる一瞬が,痺れるように記憶を塗りかえていくから.

書かなくても,忘れないよ…こんなに,素敵な夏の思い出.



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リクエスト夢:8/21:凰壮くん
夏休みを楽しむ

リクエストありがとうございました.
いろいろ詰め込んだ結果,日記調の細切れになっております.
お目汚しイラストを差し込んですみません!


※syunia様以外の方の持ち出しはお控えくださいませ.




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