おうちにようじょがやってきた 番外‐竜持02‐


夏も終わるこの時季,シェリアさんは相変わらず元気です.

海も行ったし,リゾートも楽しんだし,課題も終わってます.

最も,虎太くんと凰壮くんは課題の方に追われていますが.



「シェリアさんは偉いですね」

「課題のコト?だって,後で苦しい思いしたくない」

「ですって,お二人とも,聞きました?」

「「うるせー」」



嫌味っぽかったですかね.

幸いにも,シェリアさん自身が二人に呆れているので僕が弁解するまでもないみたいでした.

出来の良い妹って素晴らしい.



「シェリアさんは,将来の夢とかないんですか?」

「…いきなりだね」

「来年は進路を決める年でしょう?だから,今既に目標としてるものでもあるのかと思ったんですが」



とりあえず皆で課題を終わらせるべく,が今日の予定です.

ヘルプを受けたときだけに教えるという形で,今は縁側に並んで,バケツに入った水に足を付けて涼んでいます.

まだまだ残暑が残ってるせいで,空気と体温が高いんですよ.

シェリアさんは,うちわで仰いでは暑い暑いと言ってるばかり.



「夢は…そうだなぁ…うーん」

「なければ無理に言わなくていいんですが」

「あ,職業は思いつかないけど…結婚したい!」

「「「!」」」

「な,なにその顔…お兄ちゃんたち,きもい」



最近,どうにもキモイだのウザイだの,言葉が乱れてますねぇ.

ショックじゃないですよ?

ホント,あの,ショックとかじゃないんで勘違いしないでください.

それよりも,結婚の方が問題です.



「誰とだ」

「いつ」

「ちょ,二人とも課題は!?」

「シェリアの結婚となれば,後回しだろ」

「いや,結婚するわけじゃないって!」

「まず彼氏だが,いるのか?お兄ちゃん知らないぞ」

「いないって!」

「まさか…青砥くんとかじゃないですよね?」

「いないって言ってるでしょ!暑いから離れて!!」



うちわでベシバシビシっと頭を叩かれてしまいました.

シェリアさんのテクニックなんですかね,柄の部分が当たるように縦にするんですよ.

微妙に痛いっていう,小賢しい真似を.



「あのね,夢なの!Dreamなの!わかる?」

「はい」

「だから今結婚するわけじゃないの!」

「うん」

「まずね,相手がいないの」

「おう」

「だから,私は結婚しません」



言いくるめられて,素直に返事をするしかなくなってしまいました.

でも,兄としては可愛い妹の恋愛事情に興味津々なんですよねー.

あぁ,言っとくけど僕だけじゃないですから.

虎太くんも凰壮くんもですよ.



「ずばり,理想のタイプは誰だ?」

「昔は,僕のことを旦那さんにしたいなんて言ってくれてたのに…」

「はいはい,竜持は黙ってような」

「くすんっ」

「理想って,別に…ないよ」

「じゃあ!どんな容姿でどんな性格でどんな事情があるかもわからない男でもいいっていうのか!!!」

「どうしてそんなに話を飛躍させるの!?虎太兄,頭大丈夫!?」

「いやでも,イケメンで性格良くて金持ちで好条件の男でも俺認めるかって言われると素直に頷けないんだけど」

「凰壮兄までなの!?ホントやめてくれるかな!?」

「まぁ,最悪嫁に行かずとも僕達3人で養う覚悟くらいはありますよね」

「「まぁな」」

「なにがまぁな,なの…お兄ちゃんたち気持ち悪いよ.妹離れしないと,彼女できないよ」

「できなくてもいいよ」

「お前の方が大切だしな」

「というわけで安心してくださいね」

「できないよ!!!!!何普通に言ってるの?だいたいね…」


再びうちわで3連撃.

なぜか,僕ら兄弟が並ばされて座り,シェリアさんが立っています.

お説教モードです.



「お兄ちゃんたちは,自分の過度なシスコンを理解して.虎太兄はサッカー界注目のポープなのよ!それに,竜持兄だって大学の学部1位で通る頭の持ち主でしょう!」

「照れるだろ」

「シェリアさんってば…もう!」

「凰壮兄は…まぁ,えっと,アレだけど「アレ?なんで,俺なんか褒めるとこないの?」…とにかく,「とにかかないで!」いいから,黙って聞いて!」



仏壇前のチーンした空気を纏った凰壮くんだけ可哀想でした.



「そんな自慢の兄が,彼女も持たないシスコン.まるで私が悪者みたい!」

「そんなこと」

「そうだよ,変に勘ぐってるんだよお前が」

「虎太兄!貴方が先日告白を受けたときに断った文句を覚えてるの?」

「えーっと…なんだっけ」

「今はサッカーに集中したいし,妹よりお前可愛くないな!って言ったのよ.私の目の前で!私がいるのに告白してきた向こうも変だけど,その断り方もどうなの!!?」

「で,でも事実」

「うるさい!」

「…す,すまなかった」



虎太くんが,しょんぼり.



「凰壮兄もそうよ?女から電話掛かってきても,妹と一緒だから後でな,とか言う?馬鹿じゃないの?ガラスの乙女心をトラックで轢いたようなもんよ!?」

「そこまでか言うか?」

「現に失恋した女の子たちに私が恨みを買ってるんだからね!!!」

「女ってめんどくせ…」

「だったらホモにでもなってしまえ!馬鹿!!!!」

「…!」



シェリアさん,凰壮くんにそんなこと言うなんて,さすがにそれは可哀想な気もするんですが.

しかしまぁ,がみがみ言うシェリアさんを見てるとですね,虎太くんと凰壮くんがなんて酷いことをしたんでしょう.

許せません!



「極めつけだけど」

「竜持か!」

「竜持だろ!!」

「ちょっと,なんで極め付けてるんですか!僕って決めないでくださいよ」

「竜持兄!」

「ほら」

「やっぱり」

「えええっ僕心当たりないですよ!!!」



びしっと,うちわで指されてしまいました.

何も悪い事なんてしてませんよ.

ホントです.



「私のこと,勝手に彼女にしてるでしょ!!!!」

「「はああ!?」」

「大学の女の人,この間私に詰め寄ってきたわよ!!」

「ちょ,修羅場じゃん」

「やっべー何て言われたんだよ」

「『アンタが竜持の恋人のシェリア?まだ子供の中学生の癖に大人に手ェ出してんじゃないわよ!この(ピーー)が!』って言われて驚いたわ」

「う,うわぁ」

「マジキチ」

「しかも,下校の校門で言われたもんだから周りの友達に聞かれるわ,後日職員室に呼ばれるわ,最悪!!」

「し,知りませんよ…僕は」

「ど派手な女の人で,私とお兄ちゃんが兄妹ってこと知らないのかもだし,分からなかったのかもしれないけど…それでも『竜持がシェリアって娘と付き合ってあげてるって,噂になってる』とか言ってた」

「噂になってんのか」

「そうだよ?おかげで,大学生を誘惑した中学生みたいなふしだらに思われて,本当に大変だったんだからね」

「そりゃ女も女だけど,竜持もアレだな」

「絶対,シェリアのこと自慢しまくったかなんかで,妹って言い忘れたんだろ」

「あ,あはは…」



い,言い忘れたかもしれないです.

そりゃ,可愛い妹の自慢をたっくさんしましたから.



「とにかくさ,お兄ちゃんたちが妹離れしないと駄目だよ」

「駄目って言われても」

「困るんだが」

「どうしろと?」

「あーもうめんどくさいなぁ…彼女作って結婚して子供作って私に甥と姪を見せて」

「「「!!」」」

「将来の夢決定!お兄ちゃんの子供達を愛でる!これに決まり!」

「ちょ,ちょっと…シェリアさん」

「いいでしょ,別に!あと竜持兄は,大学の噂消えるように弁解しておいてよね」

「それについては,検討しておきますけど」

「検討じゃなくて実行しろよ…」

「そうだぞ…竜持」

「竜持兄なんかだいっきらい!!」



な,なんで僕が一番悪いみたいなことになってるんですか.

ちょ,シェリアさん痛いです!

うちわでビンタはやめてください!!

…全く,余計なことしてくれた女がいたもんです.

おかげで僕が嫌われちゃったじゃないですかー!!!!

もう,いじけてやります.





「…おい,シェリア.あんまり竜持いじめるなよ」

「大嫌いなんて言うと,後が面倒だぞ」

「いいのいいの,これくらい.私のプリン食べた仕返し!」

「(プリン1個であそこまで追い込まれるのか…)」

「でも,竜持兄って結構分かっててやってるから一回痛い目みないと駄目なんだよね」

「「……はい」」

「大嫌いは嘘だけど…今はまだ,竜持兄には内緒よ?」





い,いつか名誉挽回してやるんですって誓った,大学2年の夏の終わりの出来事でした.




〜後日〜


「シェリアさん,シフォンケーキ買ってきたんですけど食べません?」

「あの,シフォン?いいの!?食べたい!!」

「ふふ,前から食べたがってましたもんね,このメーカーの一番高いやつ」

「覚えててくれたの?嬉しい…もう,竜持兄ってば大好き!!」

「!!」


案外早く挽回できたのは,ここだけの話です.



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -