青砥03


「たっくん」

「何?」

「愛してる,好き」

「で?」

「でって…え,なにその薄い反応」



俺の溜息が,わざとらしく零れた.

掬いようのない,この気持ち.

今日と言う日を知って言っているのなら,その意地の悪さは認めてやろうと思う.



「たっくんはどうなの」

「教えない」

「なにそれずるい」

「そんなに知りたいの?」

「うん.たっくんのこと好きだからね」



「好き」って,それは一体どういう意味?

真意の見えない告白は,困るんだけどな.



「教えてあげてもいいけど,どんな返事でも後悔しない?」

「精神的に来るタイプの返事はやだな」

「なんだよ,それ…精神的に来るって」

「ほら,心ない一言みたいな….できれば,イエスかノーでお願いしたいなー…なんて」



愛してるの返事が,イエスとノーだなんて.

ますます意味がわかんないんだけど.

もう一度,重い溜息.

それに気付いたシェリアは,俺にじっと視線をぶつけてくる.

不満そうに,そして不安を浮かべて.




「いいよ,そんなに聞きたいなら」

「え?」

「返事をしてあげてもいい」

「ホント!?たっくん,焦らさないできっぱり言ってよ?」

「焦らさないでって…」

「ほら,沈黙に耐えられる自信ないから私…」

「うるさいのは困る.じゃ,教えてあげるからこっち来て」

「うん,覚悟決まってるし,一思いにお願いします」

「…その言葉,信じるから」




目を閉じて何かに耐えるようにシェリアが待っている.

俺は,何の前触れもしないまま,シェリアの口を黙って塞いだ.

驚いたシェリアはぱっちり眼を開けたが,右手でその視界を遮った.

そして,そのまましばらく,貪るようにしっかりと深く口付ける.

シェリアの素っ頓狂な声も飲み込んで,苦しそうな息も絡め取ってしまうように.




「…ったたたたっくん」

「…どうしたの?」

「…なんで」

「今日,4月1日だから」

「え?」

「返事は敢えて言葉にしないであげるよ.ま,今ので分かったでしょ」

「…あ,今日ってエイ「じゃあね,俺部活あるから」…たっくん!!ちょっと待ってよ!」

「はいはい,続きは部活終わってからね」



真っ赤になって,俺を見上げているシェリアの動揺を隠せない顔.

可愛い,だなんて絶対に言ってやらない.

嘘でもホントでもいい,答えが2択だなんて縛られるつもりなんてない.




「…馬鹿,嘘付いてまで告白するわけないでしょ,もー!」



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