おうちにようじょがやってきた 番外‐竜持01‐


シェリアさんは,最近ダイエットをはじめました.

スポーツマンな兄を持ったおかげで,割と健康的に活動してるみたいです.

無理な食事制限もなければ,運動だって適量.

ただ,僕にはその痩せたいということが納得できないんですよね.



「シェリアさん,どうして急に痩せようと思ったんですか?」

「トップシークレット」

「じゃあ協力はもう一切しませんよ?」

「ええっ!竜持兄ってば酷い」



シェリアさんは,トーストをかじってから少し悩んで.

うーとかあーとか言いながら,最終的に溜息を零しました.

そんなに深刻な問題でも?



「学校のね,コンテストにエントリーされちゃってね」

「コンテスト?何のです?」

「学園祭でやる,投票みたいな感じの…いわゆるミスコンテストみたいな感じ!」

「ミスコン…ですか」



思わぬ回答に,ちょっとだけ安心しました.

これで彼氏できたとか言われたら発狂モノですからね.

彼氏はまだ早いです.



「私は,出るつもりなかったのに…なんでかエントリーが決まってて」

「どうして勝手にエントリーなんてされたんですか?」

「事前アンケートがあって,それでミスコンに出る子が校内で10人だけ選出されて」

「あぁ,なるほど.あくまでも学園祭が最終決戦ということですか」

「そうなのかな?詳しくは聞いてないんだけど,アピールタイムっていうのがあって」



なるほどなるほど,今年の学園祭は随分派手なんですねぇ.

シェリアさんが言うにはつまり,ミスコンでステージに登る際に着る衣装の都合で痩せたいと.



「何を着るんですか?」

「4000円以内なら自由なんだけど,私,身長とかサイズでどうしても値段が嵩張っちゃったりするから…」

「それで,痩せたかったってことですか…それにしても,シェリアさんがミスコン…」

「出たくないのに…」

「目立つの嫌いですもんね,辞退はしないんですか?」

「運営に掛け合ったら,出来レースなんだからメインが抜けちゃ困るなんて言われて」

「そんなネタバラシされちゃったら面白くもなんもないじゃないですか」

「だよね!?」

「出来レースってそんな…まぁシェリアさんがぶっちぎりで可愛いのは僕も認めますけど」

「竜持兄って,たまに本気でコメントに困ること言うからやだな」

「照れなくていいんですよ」

「そういうところ,本当に嫌い.学園祭来ないでね」



つんっとシェリアさんは,残ったトーストを頬張ってどこかに行ってしまいました.

僕何か悪い事言いました?

ていうか,来ないでって酷い!?

女の子って,本当に難しいですね!





「聞いたで,シェリアちゃんがミスコン出るんやね」

「そうなんですよ」

「わざわざうちにコーディネートの買出し頼むから,なんやと思ったわ」

「そんなこと頼まれたんですか,僕の知らないところで」

「もう買出しは終わってんねんけどな?まぁ,本番楽しみにしとき」

「何にしたんですか」

「言ったらおもろないやん!当日のお楽しみっちゅーことや」



エリカさん,うらやましいです.

僕なんて,昨日のこともあって,朝挨拶しかしてもらえませんでしたよ.

学園祭は週末,ミスコンは確か午後一番でしたね.

出来レースとはいえ,やっぱり気になりますよ.






「え〜では,今から本日のメインとも言えるイベント,ミスコンを開催します!!!!」



学園祭は,大賑わいでした.

ギリギリ間に合ったものの,会場には人,人,人!

しかも前の方がほぼ男!

邪な目でシェリアさんを見るなんて許さんと思いながら,僕も人を掻き分けて前へ.



「まずはサクッとこちらで出場者を説明します」



司会者が,名前だけを10人並べて言いました.

シェリアさんは,エントリーナンバーの最後.

しばらく待たなきゃいけないんですね.

でも,まだ本人達が登場しないみたいなんですけど?



「今回は,事前アンケートを行い,まず校内で10人の選出を行いました」

「そこで選ばれし10人が,今から登場するわけですが…ずばり,衣装は自由!」

「1人約3分のアピールタイムを用意しました.喋ってもらう内容は,これまた驚きの衣装をコンセプトにしてミニドラマです」

「ドラマといいますと,皆さん何か設定があるんですね?」

「そうなんです,3分間でミスコンに相応しい演技を期待しましょう!」



なんですか,それ….

なんというか…結構ハードル高いんじゃ…?

まぁ,所詮中学生のですから…下手にきゃぴきゃぴしたマジのコンテストよりは面白そうです.



「あ,竜持くん!最前列なんてやるやん」

「エリカさんも来てたんですか」

「そらうちの自慢のコーディネートやし?絶対優勝間違いナシやで」



これは,一応出来レースというのは黙っておきましょう.

てか,約30分待つって…長すぎですよ.

早くシェリアさんの番になればいいのに.






そしてやっと,待ちに待ったシェリアさん!



「では,降矢シェリアさんの登場です!コンセプトは,「お兄ちゃんとデート」です!」



な,なんて…素晴らしいコンセプトなんでしょうか.



「こういう反応を待ってたんやで!竜持くん,しっかり目に刻んでな」

「うるさいです,ちょっと黙って」

「オイ」



シェリアさんは,少し小走りでステージ中央へ.



『お兄ちゃん,学園祭…来ないでよね』

どのお兄ちゃんなんですか!

『だ,だって…ミスコンなんて恥ずかしいだもん』

えぇ,えぇ,そんなの僕はよく分かってますとも.

『だから,来ちゃ駄目だってばぁ!』

目が合いましたよ今ァァあああ!

あ,シーンが変わるんですかね.

『せめて来たのならさ,最前列とかやめてよ…超恥ずかしかったよぉ』

これ僕に言ってます?

『で,でも…どうだった?』

すごい似合ってますよ!!!!と言いたいです.

『似合ってる!?そ,そっか.それなら良かったぁ…』

僕の声聞えてました!?テレパス!?

『あ,ありがと…!で,でも学園祭に来た事を許したわけじゃないんだからっ』

…アレ?

『ば,罰として最後まで残って,一緒に帰ってくれなきゃ嫌だ』

ツンデレぇぇえええ来ましたァァアアアア!!!!

『…じゃ,じゃあまだ残りがあるから.また後ね!』



そして小走りで,来た道を戻るシェリアさん.

だけど,幕の前で,突然振り返って.



『先帰っちゃ駄目だからね!約束よ!(りゅ う じ に い !)』



僕を見つめて,口でパクパク.

あ,やっぱりばれてたんですか.

照れます.



「さいっこうやったなァ,ミスコン!」

「そうですね最高でしたねそりゃあもう納得の結果です」

「アンタ怖いわ」

「いやまさかここで,お兄ちゃんネタで来るなんて思わないじゃないですか.先輩も後輩もいる2年生であることと,本当に兄がいるっていう意味でリアルな演技,ウケないわけがないですよ!!!」

「そないに力説せんでええわ,つーか引く」

「でも,これでシェリアさんに寄りつく男が増えるなんて嘆かわしい」

「そうやなぁ,そらモッテモテになるわ」

「明日から心配で溜りません」

「そんなこと言うてるうちに,今もこうして男子生徒に言い寄られてたりして」

「ひっ」

「なーんてじょうだ…って,おらんし!アホか,ガチでシスコンってレベルじゃないやん…」



結局,シェリアさんに呆れられはしましたが,無事保護できました.

あぁ,行って正解でしたね学園祭.

来年もあるなら,今度は僕がプロデュースしたいんですけど.




約束通り妹と並んで歩いた学園祭の帰り道,僕の大学生1年目春の出来事でした.



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