ノーマルライン03


※台詞括弧の前に!が付いている場合は,主人公が男子になっています.


こんなことってあるんですね…!

人生初,一目惚れってやつをしてしまいました.

彼女と目が合ったあの瞬間,僕は運命を感じたんです!





「わっ」

!「危ねぇ!大丈夫か?」

「…すいません,ちょっとふらついてしまって」

!「すごい荷物,どこまで運ぶんだ?」

「図書室です」



僕が階段で躓いたら,見慣れない男子に助けられてしまいました.

ちょうど,新しく入ってきた本を運んでる途中.

両手が塞がってたんです.



!「…手伝う」

「いえ!それには及びません」

!「図書室,3階だろ.どうせ暇だから,気にしなくていい」

「はぁ…では,これをお願いします」



使えるものは使っておいて損はない,ということ手を借りることにしました.

幸い,彼が恩着せがましく後で言ってくるタイプにも見えなかったので.



!「図書委員?」

「はい.図書委員長,降矢竜持といいます」

!「へーそうなのか」

「あの,貴方は?」

!「図書委員って大変そうだな,いつもこんなことやってんの?」



話を逸らされてしまいましたね.

名乗らないなんて,正義のヒーロー気取りですか?

まぁいいですけどね.



「慣れればそうでもないですよ」

!「そういうもんなのか?あ,俺には別に敬語じゃなくていいんだけど」

「これがデフォルトなんで,気にしないでください」

!「ん,了解.えと,降矢だっけ,たぶん同学年な気がする」

「そうなんですか?」

!「…たぶん」



彼は,無愛想なのかそうでないのか分かりませんね.

でもとても律儀な人だというのは,なんとなく感じてます.

仕草が,ちょっと女性のような柔らかさを醸し出してるので.

きっとさぞモテることでしょう.



「ここまででいいですよ」

!「そ,じゃあ俺はここで」

「ありがとうございました」

!「いいよ,俺が勝手にしたことだし.じゃあ」



颯爽と去る姿までイケメンですか.

虎太くんに優しさを足したような人でしたね.

まぁ,縁があればまた会うでしょう.






それから暫く,僕は本の整理に追われていたんです.

今日に限って,図書委員が僕だけ.

ふざけてますよね,明日ネチネチ言ってやろうと思います.



「…あの」

「はい」

「すいません,貸し出しを…」

「!」



…見かけない,女子ですね.

でも,とても可愛らしい…と不覚にも…いえ,なんでもないです.



「新しい台紙と書くものを貸してくれませんか」

「どうぞ.えっと,転校生ですか?」

「はい,先月に.図書委員の方ですよね,お仕事ご苦労さまです」



ぺこりと,頭を下げて僕を労うなんて,いじらしいじゃないですか.

僕は素直にペンを貸しました.



「シェリアさん,ですか」

「あ,はい.えっと…降矢…くんですよね」

「ご存知でしたか.有名ですもんね,三つ子ってだけで.あ,僕は次男の降矢竜持です」

「そうなんですか,(…聞いてないのに,しかも三つ子って誰だ…)よろしくお願いします」



彼女の名前はシェリアさん,ですか.

ミステリー小説が,お好きなんですかね.



「あの,手伝いましょうか?」

「え?」

「その量,お1人でやるなら大変かと思って…あ,勿論ご迷惑でないのならですが…」



迷惑なわけないですよね.

今日はよく人に助けられますけど,何かあるんでしょうか.

彼女も後で上手に出てくるタイプではなさそうなので,お願いしましょうか.



「では是非よろしくお願いします」

「はい」



仕事をやらせてみると,彼女結構手際いいんですよねこれが.

まぁその辺の図書委員よりよっぽど使えるし,器用だし,引き抜きたいくらいですよ.

あ,転校生なら委員会に入ってないんでしょうか.

でも直接話かけていいのか,なんていうか….



「あの,シェリアさんは前の学校では部活はしてたんですか?」

「え,あ,はい…一応」

「へぇ!一体何を?」

「えっと,あの…運動部でした」



だからそれを聞いてるんですけどね.

まぁ,言いたくないこともあるんでしょう.

触れずに次の話題を探します.



「この学校には馴染めましたか?」

「はい,友達も出来たので…それなりに」

「それは何より」



会話が終わっちゃいましたよ,彼女手強いですね.

警戒されまくりですか,僕.

いやでも,めげませんから.



「そうだ,もし良かったら図書委員に入りません?」

「え!」

「ほら,何か委員会に入ってれば,内申書に書けますよ」

「…うーん,どうしよう」



お,やっと食いついてきましたね.

もうちょっと押せば,頷きそうです.

ここはもう少しゴリ押しして「シェリアちゃーん!」…ん?



「エリカちゃん!」

「探したわー…,ここにおったんか」

「どうしたの?」

「いや,ちょお勉強教えて貰おうと思って…って竜持くん!」

「どうも」


聞きなれた声だと思えば,エリカさんじゃないですか.

あぁ,シェリアさんを訪ねてきたんですね.


「あれ,おふたりとも知り合い…?」

「まぁ小学校のころからの縁でな.って,そんなんは別にええねん!数学,補修組みになってしもて…シェリアちゃんだけが頼りなんや…!」

「数学落とすなんて…」

「うるさい!うちは竜持くんと違うんや!「エリカちゃんここ図書室だから」…あ,ごめん」

「ならここで勉強します?ちょうどシェリアさんに手伝ってもらってたんですよ」

「…ふぅん?まぁええわ.じゃあ荷物持ってくる」

「廊下走っちゃ駄目だよ」

「わかってるってー!はよ持ってくるから,待っててやー」

「だから走っちゃ駄目だよ〜」


不思議なこともあるもんですね,本当に.

エリカさんの友人,それだけで親しみというか,距離が近づいたような気持ちになれるんですから.

大人しい彼女に,騒がしいエリカさんって,凸凹コンビじゃないですか.

いやはや興味深いですね.



「ふたりが知り合いだなんて知らなかったなぁ…」

「まぁ昔ほど学校ではほとんど会うことないですからね.知らない人の方が多いです」

「そ,そうなんだ」

「あと,僕には気軽に接してくださいね.言葉,そちらの方が貴方らしくて可愛いですよ」

「!」



ちょっと高得点でしたよね,今の.

後でさり気なく,連絡先とか聞いてみましょう.

あわよくば…エリカさんに,ご協力いただいて.

なんて,こんなことを考えている僕の頭から,既にあの男子のことなど消えていたのでした.



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