おうちにようじょがやってきた 番外‐青砥02‐


シェリアとは,ちょくちょく登下校時に会っている.

もう3年生になった彼女は,ちょっとだけランドセルも様になってきた.

俺が背が伸びただけで,彼女も背が伸びただけなのに.

それでも絆されてしまった俺から見た彼女は可愛いし,綺麗だ.



「あ,シェリア」

「こんにちはっ」

「こんにちは.何,今帰りなの?」

「うん,琢馬兄は?」

「俺も今帰り.テスト期間だから部活ないんだ」

「そういえば,お兄ちゃんたちも同じようなこと言ってたカモ…」


俺は,アオトから青砥くん,そして琢馬兄へと進化していた.

サッカーといえば,中学の部活ももう少しで引退ではある.

高校に入っても,サッカーは続けたい.

まだ,夢が叶ってないし.



「1人で帰るの?多義さんは?」

「俺がいつもタギーと一緒にいると思わないでよね」


ごめんごめんと軽く謝られて,ぺこり.

赤いランドセルを揺らせば,スカートの裾も揺れる.


「シェリア1人なんでしょ?送るよ」

「えっいいよ?すぐ近くだし平気だよ」

「話相手いなくて暇だから付き合って.タギーはまだ学校で勉強するらしいから」

「…そういうコトなら,しょうがないなぁ.琢馬兄ってば,素直じゃないの」

「はいはい,行くよ」

「もー!」


カタコトだった日本語も,だいぶ流暢になってる.

たまに発音がおかしくても,支障なんてない.

ぱっと見が外国人だから思いっきり似合わないけど.


「そういえば,虎太が言ってた.君が英語教えてるんでしょ?」

「うん,虎太兄は,英語あんまり出来ないのよ.だからお手伝い!」

「妹に教わるって…なんか…」

「竜持兄も虎太兄に同じようなこと言ってた」

「あー…言いそう」

「凰壮兄も英語の点そこまで良くないから,たまに教えてるんだよ」

「それは初耳だね」

「本人には私が喋ったって,内緒ネ」

「わかったよ」


そしてケタケタと笑う俺とシェリア.

彼女が俺にこんなに笑うようになったのも,ここ最近だ.

その距離急接近中な俺達は,案外お似合いかもしれないと思い始めているのは俺だけ?

これが兄が妹に抱く感情かと言えば,ちょっと違うような気がするけど.



「琢馬兄は,テスト終わったらまた部活スルの?」

「テスト中も練習はする」

「…テスト明けとか遊びに行ったりしないんだ?」

「遊びに行きたいの?」

「…えへへ,ちょっとネ.そうだ,琢馬兄!一緒に映画行こうよ,お兄ちゃんたちと行ってもつまんないんだもん!」

「…それ,三つ子が聞いたら泣き叫びそうだから言わないほうがいいと思うよ.俺はテスト終わった日の午後が空いてるから,ラブロマンス系以外の映画なら付き合ってあげてもいいけど」

「ホント?やったぁ!!」


これ,デートになるのかな.

世間的に見れば,シェリアは歳の割りに成長が早いから,カップルのように見えるのかも.

悪くないね.

うん,三つ子に見せ付けてやりたい.



「じゃあ,デートだね!」

「…うん,そうなるかな」

「私お兄ちゃん以外の人と二人で遊ぶの初めて.だから,琢馬兄が初デートなのよ」

「俺でいいの?」

「うん!」


あー…可愛い,素直にそう思ったから俺も相当なんだろうなぁ.

きっと,シェリアは俺を兄のように慕ってくれてるんだろうけど.

ホントなんで,あの三つ子の妹がこんなに可愛いのか謎だよね.

似てなくて良かったとつくづく思うよ.








そしてデート当日といえば,シェリアもお洒落な格好をしてた.

見た目だけなら,中学生…くらいには見えるかな.

俺はテスト帰りだから制服のままだけど.


「琢馬兄,待った?」

「いや.ところで何見るの?」

「マイナーな洋画…なんだケド,字幕と吹き替えなしでもイイかな?」

「君のお兄さん達と違って,俺は英語大丈夫だからいいよ」

「わぁい!琢馬兄,流石だね!」


ぴょんぴょん跳ねたその姿は,やっぱり小学生なんだなぁと実感.

だけど,周りの小声は耳に届いていた.

―「外国人カップルだ〜!」「女の子可愛い!」「彼氏の方もイケメンだね」

―「見て見て,あの二人…やばい」「すっごいお似合いって感じ」



「席,自由なんだ?って言っても結構空いてるから,真ん中で見よう」

「うんっ」



内容はとてもシンプルで,動物をテーマにした感動系だった.

シェリアはボロッボロに涙を流して感動していたけど,俺はじーんとくる程度で泣きはしなかった.

化粧してないから,泣き顔も汚れてないまま綺麗だ.

これがもしパンダ目になったり,黒い涙だったら,俺幻滅するのかな.

シェリア相手だから,そんなこと有り得ないか….



「面白かった?」

「最高だった…!超感動したよ…!琢馬兄と見れてよかったの」

「シェリアが誘ってくれたからだね.俺も結構良かったと思うよ」

「また今度,何かいい映画があれば一緒に行ってくれる…?」

「!」



どきゅんっ,光速の矢で打ち抜かれた気持ちだった.

そこで「一緒に行こうよ!」と言わずに「行ってくれる…?」と聞くシェリアらしさがたまらなく可愛い.

やばいな,俺,もしかしてロリコンに片足突っ込み始めてる?



そんな彼女の初デートを奪った,中3の出来事.



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -