「おにいちゃん,パパ,ママ」
「シェリア?」
「おはなしがありマス」
「どうしました?」
「シェリア,なんだ?」
「おはなし?」
「あのね,だいじなおはなし」
「もったいぶらないで,話せよ.どうしたんだ?」
「まぁまぁ,ゆっくりでいいじゃないですか.どうしたんです?」
「…あしたね,ワタシここにきてちょうどいちねんなの!」
「えっ明日だっけ!」
「わ,忘れてなんていませんよ…勿論覚えてましたよ」
「いや,普通に昔から居たかのような感じだから俺忘れてたわ」
「あの,えっと…だからね,ちゃんとおはなししたかったデス」
「わたし,このおうちにきて,いっぱいおもいでできた!」
「…俺達もだよ.お前が来ていろんな思い出が出来た」
「まえのパパとママがしんじゃって,わたし,ずっとさみしかったの」
「…っ,シェリア」
「そうだよな…そりゃそうだよ」
「さいしょは,ここにきたくなかった.パパとママのとこ,いきたかったのよ」
「心中を察します…」
「でもね,このおうちにきてからさみしいのわすれちゃったデス.おにいちゃんたち,パパ,ママがかぞくになったから」
「そんなの,当たり前じゃないですか…」
「俺達は今までもこれからもずっと家族だぜっ」
「おそとだってこわくなくなって,おともだちもできたし,ここにいることできて,わたししあわせ」
「「「!」」」
「シェリアさん…それは私達だって同じですよ.貴方がこの家に来て,この家は変わったんです」
「かわった?」
「えぇ,私なんて娘を持つなんて初めてでしたので,年甲斐もなくはしゃぎまわってますよ.貴方がかわいくってしょうがないんですから」
「父さんは溺愛しすぎです」
「そのうち反抗期くると思うぜ」
「息子達はちょっと黙ってなさい,今いいところなんです!」
「はい,却下な.シェリア,続きを」
「うまく,いえないケド…その…」
「ゆっくり,落ち着いて,大丈夫」
「こたにいはね,やさしいの.いつもね,いっしょにおこられてくれるの」
「…一緒に怒られてくれる,か」
「悪い事するときは大抵虎太くんが共犯ですからね.でも,それが心強いってことでしょう」
「それに,こわいときにおててぎゅってしてくれる.こたにい,すきよ」
「俺だって好きに決まってるだろ…!」
「るーじにいは,かっこいいの.わたしがだめなことしたら,しかる.そして,いっしょにかんがえてくれる」
「まぁ…教育係全般だもんな」
「誰も叱らないから,僕がやってるだけですよ」
「るーじにいがおしえてくれたから,できるようになったコト,いっぱいあるのよ」
「…それはシェリアさんの努力ですよ.僕は何もしてませんって」
「だけど,それでもるーじにいがすき!」
「シェリアさん…貴女って人は,僕だって負けないくらいに好きですからね!」
「おーぞにいはね,なにもいわないの.ただ,よこにいてくれるの.それに,たまになでてくれる」
「口ベタなんだよ…上手い言葉がかけられないだぜ」
「それに,いちばんおもしろいの.おーぞにいのおかげで,いっぱいわらったのよ!」
「…面白いって褒め言葉だよな」
「たぶん…」
「ひとを,えがおにスルの,かっこいい!おーぞにいのことも,すきなの!」
「…やっべ…嬉しすぎて言葉にならねぇよ」
「かぞくって,すてきなの.このおうちにこれて,ワタシしあわせ」
「そうですね…本当に,そう思いますよ」
「お前が来てくれたから,そのことに気付けたんだ」
「家族って,ホントいいな」
「…おにいちゃん,しあわせ?」
「「「勿論!」」」
「じゃ,じゃあ…これからもワタシ…ここにいてもイイ?」
「「「当たり前(ですよ)!!!」」」
「アリガト…ゴザイマス!みんな,だいすき!」
「これからだってずーっと一緒だ!」
「むしろ離さないくらいの勢いだぜ!」
「だって僕達,家族ですもん!」
「ふふ,シェリアさんの大切なお話を聞いて,私はとても嬉しくなってしまいました.どうでしょう,皆で一枚家族写真を取りませんか?」
「いいな!全員で写そうぜ」
「うんっ!Let's take a picture!」
「じゃあ早速準備しますから,皆も支度してくださいね」
***
「シェリア,おはよう」
「おはよ,虎太兄!今日は朝練?」
「そうなんだよ…クソ眠い…」
「あらら…頑張ってね,行ってらっしゃい!」
「おう,お前もちゃんと勉強しろよ」
「う〜…頑張る,ようにはするよ」
私は降矢シェリア,14歳.
お兄ちゃんはなんと三つ子なの.
元々本当の兄弟じゃないんだけど,本物の兄弟に負けないくらいとっても仲良し!
そんな私の自慢のお兄ちゃんを紹介します.
まず,一番上の虎太兄は,サッカーに打ち込むくらいのサッカー馬鹿で,意地っ張りのお兄ちゃん!
「シェリアさん,洗面所の電気は使った後にちゃんと消してください」
「あ!忘れてたの…ごめんなさい…」
「次から気を付けてくれればいいですよ」
「うん…!あ,竜持兄,リボン付けてくれないかなぁ…?」
「それも自分で出来るようになりましょうね.今日はまぁやってあげますけど」
「ありがと〜!」
私の家族は世界一!
皆とっても優しいもの.
次に,二番目の竜持兄は,ちょっと厳しいけど,なんやかんやで私を甘やかすお兄ちゃん.
「朝飯できてるぜ.あ,自分でトースト作るならパン焦げる前にちゃんとひっくり返せよ」
「了解!うわぁ…美味しそうだね…スクランブルエッグ」
「今日はお前に合わせて甘めにしといたから,食ってみな」
「わぁ!ホントに私好みの最高のお味だ…」
「おい,スカーフ,ねじれてんぞ.ほら,直すからこっち向け」
「ふぁい」
仲良すぎって思うかな?
でも…そういうの,悪くないよ?
むしろ,毎日が楽しいの!
そして,三番目の凰壮兄は,ちょっぴり口が悪いけど,家事が出来て面倒見のいいお兄ちゃん.
つまり,私には素敵で大好きなお兄ちゃんが3人もいるの.
「あ,そろそろ行かなきゃ」
「忘れ物するなよー」
「はーい!じゃあ行ってきます!」
「いってらっしゃい.気を付けてくださいね」
「うん!」
私は鞄を抱えて,学校に向かうの.
だけど,その前に必ず行う日課がひとつ.
なんてことないただのおまじないみたいなものなんだけど….
「いってくるね」
玄関に飾られた,写真立てを取って軽くキス.
いってらっしゃい,そう答えんばかりに写った笑顔がどれも輝いている.
色褪せ掛かった家族写真が一枚,写真立ての中で笑っていた.
天国のパパ,ママ,聞いてくれてるかしら?
私,今世界一幸せだよ.
だってね…もう一人じゃないから.
END.
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