おうちにようじょがやってきた40


「おにいちゃん,パパ,ママ」

「シェリア?」

「おはなしがありマス」

「どうしました?」

「シェリア,なんだ?」

「おはなし?」



「あのね,だいじなおはなし」

「もったいぶらないで,話せよ.どうしたんだ?」

「まぁまぁ,ゆっくりでいいじゃないですか.どうしたんです?」

「…あしたね,ワタシここにきてちょうどいちねんなの!」

「えっ明日だっけ!」

「わ,忘れてなんていませんよ…勿論覚えてましたよ」

「いや,普通に昔から居たかのような感じだから俺忘れてたわ」

「あの,えっと…だからね,ちゃんとおはなししたかったデス」





「わたし,このおうちにきて,いっぱいおもいでできた!」

「…俺達もだよ.お前が来ていろんな思い出が出来た」

「まえのパパとママがしんじゃって,わたし,ずっとさみしかったの」

「…っ,シェリア」

「そうだよな…そりゃそうだよ」

「さいしょは,ここにきたくなかった.パパとママのとこ,いきたかったのよ」

「心中を察します…」

「でもね,このおうちにきてからさみしいのわすれちゃったデス.おにいちゃんたち,パパ,ママがかぞくになったから」

「そんなの,当たり前じゃないですか…」

「俺達は今までもこれからもずっと家族だぜっ」

「おそとだってこわくなくなって,おともだちもできたし,ここにいることできて,わたししあわせ」

「「「!」」」

「シェリアさん…それは私達だって同じですよ.貴方がこの家に来て,この家は変わったんです」

「かわった?」

「えぇ,私なんて娘を持つなんて初めてでしたので,年甲斐もなくはしゃぎまわってますよ.貴方がかわいくってしょうがないんですから」

「父さんは溺愛しすぎです」

「そのうち反抗期くると思うぜ」

「息子達はちょっと黙ってなさい,今いいところなんです!」

「はい,却下な.シェリア,続きを」






「うまく,いえないケド…その…」

「ゆっくり,落ち着いて,大丈夫」

「こたにいはね,やさしいの.いつもね,いっしょにおこられてくれるの」

「…一緒に怒られてくれる,か」

「悪い事するときは大抵虎太くんが共犯ですからね.でも,それが心強いってことでしょう」

「それに,こわいときにおててぎゅってしてくれる.こたにい,すきよ」

「俺だって好きに決まってるだろ…!」





「るーじにいは,かっこいいの.わたしがだめなことしたら,しかる.そして,いっしょにかんがえてくれる」

「まぁ…教育係全般だもんな」

「誰も叱らないから,僕がやってるだけですよ」

「るーじにいがおしえてくれたから,できるようになったコト,いっぱいあるのよ」

「…それはシェリアさんの努力ですよ.僕は何もしてませんって」

「だけど,それでもるーじにいがすき!」

「シェリアさん…貴女って人は,僕だって負けないくらいに好きですからね!」





「おーぞにいはね,なにもいわないの.ただ,よこにいてくれるの.それに,たまになでてくれる」

「口ベタなんだよ…上手い言葉がかけられないだぜ」

「それに,いちばんおもしろいの.おーぞにいのおかげで,いっぱいわらったのよ!」

「…面白いって褒め言葉だよな」

「たぶん…」

「ひとを,えがおにスルの,かっこいい!おーぞにいのことも,すきなの!」

「…やっべ…嬉しすぎて言葉にならねぇよ」





「かぞくって,すてきなの.このおうちにこれて,ワタシしあわせ」

「そうですね…本当に,そう思いますよ」

「お前が来てくれたから,そのことに気付けたんだ」

「家族って,ホントいいな」

「…おにいちゃん,しあわせ?」

「「「勿論!」」」




「じゃ,じゃあ…これからもワタシ…ここにいてもイイ?」

「「「当たり前(ですよ)!!!」」」

「アリガト…ゴザイマス!みんな,だいすき!」

「これからだってずーっと一緒だ!」

「むしろ離さないくらいの勢いだぜ!」

「だって僕達,家族ですもん!」





「ふふ,シェリアさんの大切なお話を聞いて,私はとても嬉しくなってしまいました.どうでしょう,皆で一枚家族写真を取りませんか?」

「いいな!全員で写そうぜ」

「うんっ!Let's take a picture!」

「じゃあ早速準備しますから,皆も支度してくださいね」







***







「シェリア,おはよう」

「おはよ,虎太兄!今日は朝練?」

「そうなんだよ…クソ眠い…」

「あらら…頑張ってね,行ってらっしゃい!」

「おう,お前もちゃんと勉強しろよ」

「う〜…頑張る,ようにはするよ」



私は降矢シェリア,14歳.

お兄ちゃんはなんと三つ子なの.

元々本当の兄弟じゃないんだけど,本物の兄弟に負けないくらいとっても仲良し!

そんな私の自慢のお兄ちゃんを紹介します.

まず,一番上の虎太兄は,サッカーに打ち込むくらいのサッカー馬鹿で,意地っ張りのお兄ちゃん!



「シェリアさん,洗面所の電気は使った後にちゃんと消してください」

「あ!忘れてたの…ごめんなさい…」

「次から気を付けてくれればいいですよ」

「うん…!あ,竜持兄,リボン付けてくれないかなぁ…?」

「それも自分で出来るようになりましょうね.今日はまぁやってあげますけど」

「ありがと〜!」



私の家族は世界一!

皆とっても優しいもの.

次に,二番目の竜持兄は,ちょっと厳しいけど,なんやかんやで私を甘やかすお兄ちゃん.



「朝飯できてるぜ.あ,自分でトースト作るならパン焦げる前にちゃんとひっくり返せよ」

「了解!うわぁ…美味しそうだね…スクランブルエッグ」

「今日はお前に合わせて甘めにしといたから,食ってみな」

「わぁ!ホントに私好みの最高のお味だ…」

「おい,スカーフ,ねじれてんぞ.ほら,直すからこっち向け」

「ふぁい」


仲良すぎって思うかな?

でも…そういうの,悪くないよ?

むしろ,毎日が楽しいの!

そして,三番目の凰壮兄は,ちょっぴり口が悪いけど,家事が出来て面倒見のいいお兄ちゃん.

つまり,私には素敵で大好きなお兄ちゃんが3人もいるの.



「あ,そろそろ行かなきゃ」

「忘れ物するなよー」

「はーい!じゃあ行ってきます!」

「いってらっしゃい.気を付けてくださいね」

「うん!」



私は鞄を抱えて,学校に向かうの.

だけど,その前に必ず行う日課がひとつ.

なんてことないただのおまじないみたいなものなんだけど….



「いってくるね」



玄関に飾られた,写真立てを取って軽くキス.

いってらっしゃい,そう答えんばかりに写った笑顔がどれも輝いている.

色褪せ掛かった家族写真が一枚,写真立ての中で笑っていた.



天国のパパ,ママ,聞いてくれてるかしら?

私,今世界一幸せだよ.

だってね…もう一人じゃないから.




END.

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