通行止めが効かないの!
「シェリア〜!」
「た〜くん!」
おかしいな,俺とシェリアは恋人なのに.
目の前でこいつら,なんで手を繋ぐんだろう.
「はは,シェリアは相変わらずおっとりだな」
「たーくんこそ,のんびり屋さんじゃない〜」
「…おい」
「あ,今日もし良かったらお母さんがご飯食べにおいでって言ってたよ〜」
「本当か!楽しみだな!おばさんのご飯美味しいしさ」
「…あの」
おかしい,どうしてこうなる.
俺とシェリアが恋人で,シェリアと杉山が幼馴染.
そもそもこの3人で帰宅ってどうなんだ.
「俺は?俺は誘わないのか?」
「だって〜…おーくんはお家遠いでしょう?」
「確かに,降矢の家は逆方向だし遠いと思うぞ」
「いやあの…」
「そういえばどうしておーくん,お家反対側なのにこっちきたの〜?」
「えっ」
「俺がシェリアを送るから安心してくれ!」
「いやいやいや」
おかしいだろ!!!
なんでだ!
もう一回くどいが言うぞ.
俺が彼氏で,杉山が幼馴染だよな?
なにこの疎外感!
今日はめずらしく,シェリアがいない.
それなのになぜか俺と杉山が一緒にいる.
おかしいよな?
そろそろ俺,つっこみに疲れてきた.
「今日シェリアは病院だって」
「え!俺知らない」
「風邪かもしれないって言ってたが」
「彼氏なのに連絡されてない俺って…俺って…」
「ま,まぁ…落ち込まなくてもいいと思うぞ.シェリアはおっとりしすぎだから,忘れたんだと思うし…」
「いや,そもそもなんでお前が知ってんだ」
「…え,普通にメールがあったんだが?」
「お前らホントグルじゃないよな?付き合ったりしてないよな?」
「おい!シェリアを疑うのはやめてくれ!アイツのこと,お前が信じてやらないでどうするんだ!」
「お,おう」
あれ,なんで俺言いくるめられてるんだ?
杉山むしろ原因じゃん!
「あ,青砥!」
「えっ」
「…君達またつるんでるの」
「いや俺は別に,コイツとは好きで一緒にいるわけじゃ「今日はシェリアがいないから,降矢と一緒に帰ってるんだ!」…いやあの,まぁそういうことです」
「仲が良くて結構だね」
「決して仲が良いわけじゃな「青砥もそう思うか!」…あぁもう」
「…タギー,ちょっと僕学校にノート忘れたから取りに行ってくれない?」
「ええっ青砥お前それは流石に酷「それは大変だ!すぐに行ってくるから,先に帰っててくれ!」…行っちゃうんだ」
杉山はことごとく俺の言葉を遮って,また来た道を帰っていく.
なんなのアイツ.
ていうか,青砥も青砥でなんなの.
「ねぇ」
そして青砥が突然話かけてくるから,一瞬行動が追いつかないまま間抜けな返事.
「うおっ!?」
「タギーのこと,悪く思わないであげてくれる?」
「は?」
「超を付けても足りない天然お人好しだから,悪意はないよ」
「…わかってる」
意外にも,青砥から飛び出した言葉.
そういえば,コイツも杉山の幼馴染になるんだっけ.
あぁもう複雑すぎてわけがわからない.
「おまけに,超おっとりのシェリアと幼馴染だから,本当に君は運がないんだ」
「…運がないって,酷い言い様だな」
「必要以上にベタベタしてるように見えて,二人ともちゃんと分別くらいは分かってるから.心配しなくても寝取られたりしないよ」
「ねとっ!?…お前…言葉を選べ!」
「あの2人が仲良すぎて意味わかんないとだろうけど,たぶん君を信用してのことじゃない?」
「だといいけどよ」
「…君の不運は結構見てるこっちも気の毒だから,気が向いたら手を貸してあげるよ.まぁタギーを引き取ることくらいしか出来ないけどね」
「むしろそれで十分です」
「あ,そう」
なんやかんや,仲が良いのはお前もじゃねーか.
言ったら倍にして返されそうだけどよ.
なんて思ってたら,天然お人好しが帰ってきた.
「青砥!このノートでいいか?」
「うん.ありがとう」
「忘れ物はいかんと思うぞ.青砥にしてはめずらしいけど」
「ちょっとね,人助けしてたらうっかりしてて」
「人助けはいいことだな!それならしょうがない」
「うん」
…青砥の扱い慣れてるって感じがすごいな.
ちょっとだけ尊敬したけど,それも癪なので黙っておいた.
翌朝,なぜか杉山からメールが来ていた.
風邪で学校お休みします?
いや,なんで俺に送るのよ.
「おーくん,おはよう〜」
「風邪はもう大丈夫なのか?」
「うん,平気だよ〜」
「杉山,風邪らしいな」
「そうなの〜?私が移しちゃったかなぁ…寂しいねぇ」
「お前にもメール来たのか?」
「ううん?来てないよ」
それはそれでおかしいと思うんだ.
俺はシェリアの彼氏だが,杉山はシェリアの幼馴染だろ?
まずます杉山の行動に疑問が湧いたけど,それもきっと天然の力ってやつか.
「明日は,3人揃うといいね〜」
「…え,あ,うん,そうだな」
「今日はたーくんいないから,寄り道して帰ろうよ〜」
「まだ朝なんだけど」
「だから,帰りにだよ〜.2人だけだしデートしようね〜」
「…おう」
なんだ,やっぱり彼女っていう自覚はあるんだな.
そう思ったの束の間だ.
「たーくんのお見舞,一緒にいこうね〜」
やっぱり解せない….
「…メロンくらい抱えていくか」
「たーくん喜ぶね〜!きっと〜!」
たまには2人がいいけど…まぁ3人セットも悪くはないと思ってる自分がいる.
しょうがない,妬きたいのも山々だけど,幼馴染に免じて許してやるか.
「で,結局君が風邪を貰ったっていうの?馬鹿じゃない?」
「うっせー…げっほ,げほ」
「はい,これ.2人からのお見舞だから」
「…その肝心な,アイツらは?」
「映画行くらしいよ?」
やっぱり幼馴染とて許せぬ!
そして見舞いに来た青砥に風邪を移した俺は,しばらく文句を言われることになった.
でもこれって元々俺のせいじゃねーよな!?
解せぬ!
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(リク内容)
凰壮,多義(高校生,彼女,ヒロインが多義と幼馴染)