アンハッピーコンデンサ11


俺がクソ女の正体を知ってるって言えば,一番驚くのは誰だろうな.

嫌われて喜ぼうだなんて,安易な考えがバレバレなんだよ.


「凰壮くん?」

「なぁ竜持,シェリアのことやっぱ本気で許せないか?」

「当たり前でしょう!虎太くんを傷つけた罪は,必ず償わせます」

「…それを虎太が望んでないとしても?」

「は?」


竜持は,気付いてない.

カマをかけたが,思っていた反応はなかった.

つまり,俺だけが気付いた事実があるということ.


「どういう意味ですか」

「いや,俺の思い違いかもな.確信が持てるまでは言わない」

「それは構いませんけど,あまり身勝手に動かないで下さいよ」

「わーってるよ」


ま,正直動きたくても動けないんだけどな.

俺が思ってるより,竜持は冷静じゃない.

むしろ,誰よりも今落ち着いているのは俺だ.

傷心の虎太に,迷走する竜持,不審なシェリアを見ていれば,疑問がたくさん浮かび上がってくる.


「…突いて尻尾を出すのは,アイツか」


俺が狙うのは,だた1人だ.





「おい,お前」

「は,はい」

「お前,シェリアを18時に体育館に呼び出せ」

「えっ」

「やらなきゃお前も,アイツと同じ目に遭うだけだぜ」


適当に女を捕まえて,冷たく言い放った.

もしこの女が実行しなければ,他の奴でもいい.

とにかく,俺は事実を確かめたいだけ.


「…シェリアさん」

「何かな?」

「ほ,放課後18時に体育館に来てほしいの…」

「どうして?」

「お願い!じゃないと,私…」


廊下を歩けば,さっきの女とシェリアの声を聞いた.

早速実行してくれたってわけか.

そりゃまぁ,人間ってやつは自分の身が一番可愛いよな.

しばらくすると,女が戻ってきた.


「あの,伝えました」

「おー,ご苦労サン.じゃあもういっこ,仕事頼むわ」


そして渡した体育館の鍵.

俺は,午後の授業をサボって時間が経つのを待った.





18時ジャスト,俺は体育館の近くで様子を伺った.

シェリアが本当に来るかどうか.


「…降矢くんよね,こんなところに呼び出すなんて」


思ったよりも早く,シェリアはすんなり現れた.

俺の姿が見えないのか,辺りに響くように声を出す.


「どこにいるのかは知らないけれど,用事があるなら早くして」

「…わざわざここまでどーも.よく疑いもせずに来れたな」

「体育館の鍵借りようとしたら既になくなってたんだよね.だから行くついでにこれ片付けておいてくれって先生に頼まれたの」


シェリアはボールを1個だけ抱えていた.

体育倉庫を開けて,ボールを籠に戻しに入った.

俺も後に付いて一緒に入り,シェリアを付き飛ばした.


「っ…!」

「ここなら邪魔も入らないだろ」


俺は丁度いい高さにあった跳び箱に腰を下ろして,シェリアを見下ろした.

この位置は視角になっているせいで,教師に呼びとめられることはないはずだ.


「話してもらうぜ,虎太とお前の本当の関係ってヤツを」

「…何もないよ.私が虎太くんを裏切っただけだもの」

「それが嘘だってことは分かってんだよ,バーカ」

「嘘,じゃない」

「だって虎太は吐いたぜ.お前とのこと」

「!」


ま,これは嘘.

虎太が俺に言うわけがない.

でもコイツは,少しは心をゆるがせたみたいだった.

動揺した顔で俺を見た後,言葉を選んでいるようだった.


「どうした?言えないようなことなのかよ」

「…貴方には,関係ない」

「あ?」


シェリアの前にしゃがんで,無理矢理手足を押さえ込む.

抵抗を見せたシェリアも,俺には敵わない.

そもそもの力の差を考えろよな.

ブラウスに手を掛けて,少し強めに引っ張る.


「や,やめて…」

「話さないなら,続行する.関係があればいいんだろ?だったら,関係を作ればいいじゃねーか」

「やだ,やめて!おねがい!」

「うるせぇな」


無理矢理スカーフを口に突っ込むと,シェリアはむせたように身体を揺らした.

ま,結構気に入った女なんだし,別に抱いても損はないだろ?

スカートに手を掛けたところで,シェリアの足が暴れた.

それを膝で抑えて,俺もスイッチが入りかけた最中,突然として鈍い音が響く.


「「!」」


ぎぎぎ,ばたんという鉄の音がぶつかった音.

光が遮られて,完全に真っ暗になってしまった.


「んー!んぐぐんぐん!」

「ちょっと待ってな」


シェリアから退いて,体育倉庫のドアを開けようをする.

しかし,それは適わなかった.

鋼鉄の扉は施錠され,俺達は完全に閉じ込められたのだ.

重々しい扉は,俺だけの力じゃ開いてくれそうにない.


「…げ,マジかよ」

「…っさ,最低…外道!!どうするの…このままじゃ…!」

「ん,最悪明日の朝まで閉じ込められるな」


シェリアは解放された手で,口のスカーフを取り出していた.

耳を済ませたが,辺りから人の気配は感じない.

18時を過ぎた時間でもあって,外の暗さもわかる.

今から人が来る可能性を考えれば,それはゼロに等しいだろう.

まだ計画を達成してないのに困った,これじゃあ本末転倒じゃないか.






タイムリミットまで,あと17日.



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -