おうちにようじょがやってきた35


シェリアさんと,近くの郵便ポストまでお散歩です.

先日の手紙を出すために.


「…うんしょ…」

「僕がいれてあげますよ」


シェリアさんの身長ではポストに手が届かないので,替わりに入れてあげました.


「るーじにい,もっとおさんぽスル?」

「いいですよ.今日は天気もいいですし,少し歩いてみましょうか」

「うん」


手をぎゅっと握ったシェリアさん.

前のように震えることもなく,怯えることもなく.

前を向いてしっかり歩く,その足取り.

だいぶ,成長したんですね.


「はっぱが,あかいろ」

「えぇ,紅葉のシーズンですからね」

「コウヨー?」

「もみじと書いて紅葉.葉っぱが色づくことを言うんですよ」

「…oh…フゼイというもの?」

「そうそう,風情がありますよね.風情っていうのは…」


こんな幼い子が風情とか言うからちょっと驚きます.

恐らくテレビや雑誌からでしょうけど,賢く思えますよね.

だから僕が意味を教えたりしてるんですよ.


「あ…」

「…青砥くん…」

「るーじにいのFriend?」

「いいえ違います友達なんかじゃないです」

「こんなのと友達なわけないよ」


偶然出会った,出会いたくなかった人物.

青砥・ゴンザレス・琢馬くん.


「…その子,何?」

「妹ですよ」

「…外国人だよね」

「えぇ,そうです」

「ふーん…」

「るーじにい,だぁれ?」

「彼は青砥くん.僕の所属してるプレデターとは違うチームの選手なんです」

「はじめまして!ワタシ,ふるやシェリア,イイマス」

「…初めまして.俺は青砥・ゴンザレス・琢馬.君の妹にしては礼儀正しいんだね」

「あはは,そうでしょう!可愛いでしょう!」

「(いや,可愛いとは言ってないんだけど)」


そういえば,彼も外国人ですよね.

英語とか外国語は堪能なのかもしれませんね.

まぁ,そんなのはどうでもいいんですけど.


「Do you like your brother?」(君はお兄さんが好き?)

「Of course!」(勿論!)

「 I see.But,I want to win your brother」(そうか.でも,俺は君のお兄さんに勝ちたい)


青砥くんとシェリアさんが会話を始めたのですが,僕は急なことについていけませんでした.

シェリアさんに何か言った青砥くんが,不適にニヤッと笑っています.

何て言ったのか聞き逃すなんて…あああ後悔です.

もっとも,こんなネイティブな発音じゃ単語を聞き取るので精一杯なんですけどね.


「Please do your best. I will cheer you up」(頑張って.私はあなたを応援するよ)

「Why?Why do you cheer me?」(どうして?どうして俺を応援するんだ?)

「Because my brother is strong.I believe my brother would not lose」(だって私のお兄ちゃんは強いもの!私はお兄ちゃんが負けるはずないって信じてる)


今度はシェリアさんが,ドヤ顔を決めてしまいました.

すると,青砥くんが噴出して僕を見て笑うんですよ.

意味がわかりませんよね,置いてけぼりですか.


「…ふっ,君の妹は良い性格してるね」

「え?」

「三つ子にこんな妹がいたなんて,知らなかった」

「それはまぁ…」

「面白いものを見た気分だ.シェリアだっけ,今度俺の試合も見にきて」

「ワタシ?どうして?」

「そう,君だ.俺の強さを見たら,ちょっとは気が変わるかもしれないしさ」

「No…かんたんに,きもちがかわることないデス」!


一体何のことでしょう?

シェリアさんを試合に誘うってことは…もしや青砥くんはシェリアさんのことを…!!

いや,一目惚れとかじゃないですよね!!?


「じゃあ,僕は行くよ」

「See you again!」

「うん,またね」


なんかいつのまにか,僕無視されてるし….

なんなんですか…ちょっとジェラシーですよ.

こんなことならここに散歩しにくるんじゃありませんでした.



「シェリアさん,青砥くんと何を話したんですか?」

「んー…?おにいちゃんたち,スキ!」

「えっ,このタイミングで!僕もシェリアさんのこと大好きです!」

「しってマス」

「全く,青砥くんも要チェック人物指定ですね.いいですか,シェリアさん…言い寄られてもついていってはいけませんよ!」


顔見知りだからって,誰にでもホイホイついていくなんて危ないですから.

シェリアさんは自分が可愛いってことを理解してませんからね.

だから僕が守るしかないんです,絶対に青砥くんには渡さない!






―兄の贔屓は拡大中―






「あのさ,タギー」

「ん?」

「三つ子の妹って知ってる?この間会ったんだ」

「へぇ…そうなのか」

「見た目はどっちかっていうと僕に似てるんだけど」

「どういうことだ?」

「可愛かったよ,西洋人形みたいにさ.おまけに中身もイイ性格してた」

「…青砥,随分楽しそうだな」

「まぁね.ところで,次の試合っていつか分かる?彼女を招待したいんだ」

「ちょっと待てよ…えっと,確か…」


兄の勘も,満更外れてはいないかもしれない.



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