無自覚ほど


※4主の名前は「ラズロ」です。



「キリル君って、結構細いね」


ラズロの突拍子もなく放たれた言葉に、キリルは困惑した。

「そうかな?これでも鍛えてるつもりなんだけど…」
「うん。すごく鍛えられてるのはわかるんだけど、やっぱり細いよ」


いつものように真剣な表情で言われてしまえば、反論することもできず。
するとそのままの表情で腰に腕を回され、ラインを確かめるように手でなで上げらた。

「っひゃ、ちょ、ラズロっ」
「ちゃんとご飯、食べてる?」
「た、べてるよ!というかラズロ、手をっ…!」

くすぐったさとは別の感覚が背筋を這い上がってきて、キリルの頬が紅潮した。
背後で「キリル様が!キリル様があああぁ!」「待てって!行った所で返り討ちにあうだけだぞ!」という声が聞こえたような気がしたが、今はそれどころではなかった。

慌てて身を離そうとしても、ラズロの腕はびくともしなかった。それどころか、わき腹の辺りをなで上げていた手が頬に添えられ、顔を至近距離まで近づけられた。

「キリル君…顔赤いよ?」
「うん…できれば顔をもう少し離してくれない?ラズロ…」

至近距離すぎて直視できずもごもごと言い辛そうに呟くキリルに、ラズロはふむ、としばらく考える仕草を見せ、微笑んだ。

普段はあまり表情の動きを見せないラズロが微笑んだことにぎょっとしたが、頬に添えられた顎の辺りまで滑らせると、くい、と顔を少しだけ上げさせられて、驚きがパニックに変わった。
そんなキリルの内心をよそに、ラズロは微笑んだまま言葉を紡ぐ。

「キリル君が笑ってるのはよく見るけど、そういう顔は初めてみるかな」
「ラズ、」
「かわいいね」
「――っ!」

恥ずかしさやら驚きやらが限界になったキリルは、渾身の力をふりしぼってラズロの拘束から逃れ、ヨーンやセネカの居た方向へ走り去ってしまった。

残されたラズロは、自分は何か変なことをしたのかと首を傾げるが、不幸にもその場には卒倒してしまったアンダルクが居るだけだあった。


たぶん無自覚
(タチが悪いにもほどがある)


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