首輪のはなし
「その首輪で君を思い通りに操れたら、さぞ気持ち良いんだろうな」
自分の武器を作るための材料を確認していたアンナは、思わず手に持ったそれを落としそうになった。
幸か不幸か、ヴェインは新しく作った首輪をサルファに付けるのに夢中で気づいていない。
しかし聞いてしまったアンナの思考は、おかしな方向へと進み始めてしまう。
(ロクシス先輩が、ヴェイン先輩を思い通りに操りたい…?)
ロクシスがヴェインを嫌い、一方的に敵視していた頃ならまだ理解できる。
だが今はもう、二人は友人や仲間といえるほど打ち解けている。
そこでアンナはハッとした。
(そういえばこの前ロクシス先輩は、パメラ先輩にフられて落ち込んでいた…そこにヴェイン先輩は優しく声をかけて…まさか、ロクシス先輩はそれでヴェイン先輩に淡い恋心を抱いた…でもロクシス先輩は素直じゃないし…上手く気持ちを伝えられず、業を煮やしたロクシス先輩は、とうとう強硬手段にっ…!)
「不潔ですっ…!」
ロクシスが怪訝な表情をしてアンナの名前を呼んだが聞こえなかったようで、思考の暴走はとどまることを知らず、むしろ想像してしまったことで余計に拍車がかかってしまう。
(首輪でヴェイン先輩を自分を好きにさせた挙句、行為はエスカレートしてこんなことやあんなこと…ああっ、そんなことまで!)
「ゆ、許せません!」
突然叫んだアンナに、ヴェインが振り向いた。
「アンナ?」
アンナは改めてヴェインの顔をまじまじと見やる。
(確かにヴェイン先輩って童顔だし、ちょっと女々しいとこあるし、押しに弱そうで…色白いし、細いし…)
これではあまりも簡単に手籠めにされてしまいそうだ。
そこまで考えたアンナは、剣の柄に手をかけた。
「ええと、どうしたの?」
「ヴェイン先輩は、私が守ります!」
「へ?」
アンナはロクシスを睨む。そして居合いの体制にはいった。
「おい…!」
「相手の意思も尊重せず、力ずくで手籠めにしようなどと言語道断!これ以上ヴェイン先輩に近づくなら…斬ります!」
「お前は何を言って、」
「覚悟っ!」
そうして始まった鬼ごっこに、ヴェインは唖然としながらサルファに尋ねた。
「ねえサルファ」
「何だ?」
「てごめ、ってどういう意味なの?」
「……お前は知らなくていい」
彼の問題発言
(と、彼女の暴走)
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