とある芸術家の悩み


「おいシング、てめえいい加減にしろよ!無闇に敵につっ込むのヤメロっつてんだろ!」
「なんだよ!ヒスイだって荒鷹ばっかり連発してるじゃないか!」

「あーあ、まぁた始まったよ…」
もはや慣れてしまった二人の喧嘩に、ベリルは深々とため息をついた。


ヒスイとシングの喧嘩なんて、ベリルはもちろん、コハク、イネス、クンツァイトも何度も見ている。
その原因は、シスコンヒスイが、コハクにべたボレ(ベリルにとっては不満だが)なシングに、コハクに近づくなだの、俺はお前を認めないだの、とにかくそんな事が多かった。

……旅を始めたばかりのころは。

そんな事を考えつつ、まだ言い争っている二人にベリルは視線を向けた。大声で言い合っているせいで、それなりに距離があってもはっきりと声が伝わってくる。

「だいたい、俺は前衛なんだから、敵につっ込んで当然だろ!」
「だから、その考え自体が間違いだってのに気付け、アホシング!」
「ヒスイだって、前線に飛び出てきていきなり詠唱してる馬鹿のくせに!」

これだと、永遠に続きそうだ。顔を絵の具でべたべたにしてやったら落ち着くだろうか。それともアイスニードルで冷やそうか。
そう考えたベリルは、ソーマを構え、ゆっくりと二人に近づいた。
二人は言い争うことに必死で、近づいてきているベリルのことを確認できていない。それにちょっとむかっとして、さらに二人との距離を近づけた。
しかし、まだ二人は言い争っている。

「そんなの、誰だって好きな人を守りたいに決まってるだろ!」
「んなこたぁ俺だって同じなんだよ!自分の好きなやつが、前線で大怪我したら嫌だろうが!」

ベリルはそこまで聞くと、ソーマを降ろして、イネス達が居たところへ戻ろうと踵を返した。
そして、また深くため息をつく。
そう、最近の喧嘩の理由は、互いを心配しての事なのだ。
ヒスイ本人は嫌がっていたが、アイツは間違いなく「ツンデレ」という人種だ。
加えてシングも、ヒスイに対していまいち素直になりきれないのだ。

なんだかんだ言っても、きっと相手のことが好きなんだろうけど。


「結局あの二人って、バカップルなだけじゃないかぁ…」


痴話喧嘩は犬も食わない
(芸術のこやしにもなりゃしない!)


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