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※BADエンドからのスタートです
僕は…君を傷つけたかったわけじゃ、なかったのに。
「エミル、エミ、ル…ごめんね…」
透明な雫が、ぽたりと床へ吸い込まれた。
「マル、タ?…っマルタぁー!!」
今までラタトスクを演じていたのも忘れて、駆け寄る。
「エミル!?まさかお前今までのは全部、演技だったのか!?」
ロイドが叫ぶが、今はそれすらも聞こえない。
頭の中で、徐々に悲しみと罪悪感が重みを増していくのが、自分でも分かった。
「僕は…僕はマルタを傷つけたかった訳じゃないのに…こんな…こんな…」
腰の剣に、ゆっくりと手をかけ、鞘から引き抜く。
そして。
自らに、突き立てた。
「エミル!?」
ロイドやコレットたちの悲鳴に近い悲痛の声が聞こえる。
「最初から…こうしていれば良かった…」
そうしていれば、マルタも、みんなも、傷つかなくてすんだかもしれないのに。
「待ちなさい!今、傷の手当を…!」
リフィルさんの声が聞こえる。それを止めるテネブラエの声も。
ごめんね、テネブラエ。こんな事、させちゃって。
「馬鹿野郎!エミルが…ラタトスクが死ぬんだぞ!」
ロイドもごめんね。僕のこと、僕なんかの事、信じてくれてたのに。
「さよなら…マルタ、ロイド…みんな…後の封印は、頼み…ま……す…」
体が炎のように揺らめく光に包まれていく。
薄れていく意識の中で、誰かが僕を呼ぶ声を、聞いた気がした。
泡沫の ひかり
(それはあまりにも、もろく)
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