手を繋ぐ。


「……」
「……」

ルカとスパーダは、手をつないだまま一言も喋らず、ひたすら宿屋へと歩いている。

何故こんな事になったのだろうと、ルカは必死で考える。
気まずさや恥ずかしさや嬉しさが入り混じり、火照って赤いであろう頬を見せない為にも、顔を上げるわけにもいかず、数十分前の出来事を思い出した。


買い物当番を頼まれたルカとスパーダは、人の多い、商店の並んだ大通りを歩いていた。
ルカはもともと運動神経が良いわけではないので、人々の渦にもみくちゃにされ、スパーダを見失いそうになる。
戦闘以外でアスラの力を使うわけにもいかないので、なんとか身をひねったりして前へ進もうと奮闘するが、すべて無意味になってしまう。

スパーダもスパーダで、ルカほどでは無いが人波にもまれてあちらこちらへ押し流されている。

(駄目だ、このままじゃ見失っちゃう!)
「ま、待って、スパーダ…!」
「ルカっ!?」

なんとかスパーダの方へ腕を伸ばし、ぐっと勢いよく掴む。
しかし袖を掴むつもりが、勢いあまってルカはスパーダの手を握ってしまった。

「あ、ご、ごめん…!」

慌てて離そうとした手を、ぎゅっとスパーダが握る。
繋いだ部分からじわりとぬくもりが伝わってくる。
まだ少し冷たい風が心地いいくらいで。


「えっ…」
「こうしてねぇと、お前またはぐれるだろ?」
「う、で、でも」

言葉を詰まらせたルカに、スパーダは少しだけ手を握る力を強めた。

「でも、何だよ?」
「だ、だって…はは、恥ずかしいじゃないかっ!」
「は?…あ、ああー…」

ルカは真っ赤になった頬を片手で覆い、顔を背けた。
ちらりと横目でスパーダをうかがえば、彼の顔も真っ赤になっていた。

「わ、悪い」

ルカの手を握る力が弱まる。
思わず、さっき握ってきた手を握り返した。

「でも、心配してくれたんだよね?その…ありがとう、スパーダ」
「っお、おう。…ほら、行くぞ」
ふわり、と照れながら微笑んだルカに、スパーダは慌てたようにばっと顔をそらし、ルカの手を引いて歩き出した。

そして、今に至る。

人ごみに流されながらも、はぐれることなく買い物を終えたルカたちは、宿屋へと向かう。
もちろん手をつないだまま。

「あの、か、買い忘れたものとか…無いよね?」
「ああその…多分無いんじゃねぇか?」
「そ、そっか」

ぎこちない会話をしながら、宿についた二人がさんざん仲間達に手をつないでいることや、顔が真っ赤な事についてからかわれたのは、数分後の話。


あたたかいつながりって
(こういうこと、なのかな)


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