黒尾さん 3




「黒尾さんって、何フェチですか?」


休日の午前練が終わり、部室での休憩中になんの脈絡もなく猛虎から始まった会話。そのいきなりの言葉に隣で赤面した彼女を見つつ、ため息を吐いた。


「急になんだよ」

と諫めつつも、猛虎の隣で目を輝かせるリエーフを見やり、この質問から逃れられそうにないことを悟る。ふっと息をついて隣を見れば、控えめにこちらを見る彼女の表情。これは下手なことは言えないな、と若干姿勢を正した。


「猛虎さんはなんなんですか?」

なかなか応えようとしない俺に痺れを切らしたリエーフが、会話の発端者へと言葉を投げかける。猛虎は即答の勢いで口を開いた。


「やっぱ乳だな!」

なんの恥もなく出された言葉に再び赤面する彼女をちらりと盗み見たこの騒がしい後輩は、さらに言葉を続ける。


「だがでかけりゃいいってもんじゃねェ!感度が…っいてェ、何すんですか!」


止まらない下トークに、黙って聞いていた夜久が待ったをかけた。


「で、黒尾は?」


猛虎の後頭部にチョップをかましたまま、夜久が俺を見やる。その言葉にまた隣からの視線を感じながら、彼女に聞いた。


「お前も知りたいのか?」


一瞬大きな目を瞬いた彼女は、薄く頷く。


「はい、ぜひ。」
「はっ」


そのハッキリした答えに満足感。にやつく口元を止められないままやっと彼女の方を見たると、かち合った視線に、若干慌てながらたじろぐ彼女。愛おしい恋人ではあるが、こんな姿を見ると加虐心が煽られる。


「お前の、恥ずかしい場所とか?」
「え?」


質問の意図が分からない彼女は、もう一度大きく瞳を閉じたり開いたりしながら、その真意を探ろうと俺を見上げてきた。


「お前の見られて恥ずかしいとこ、全部が好きだな」
「…っ!」


これでもかと真っ赤になり、俯いてしまった彼女にくすりと喉から笑いが零れた。




(つまり、彼女の恥ずかしがる顔が好き、と)
(先天的なドSだな)
                                   


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