大人のお楽しみ
※社会人パロ
普通に会社員をしていると、営業さん達がたまに持ち帰ってくるお土産が楽しみのひとつ。それなのに今日は資料室に居たせいで食いっぱぐれてしまった。さらに残業が重なって人知れず落ち込んでいると、帰り際に叩かれた右肩。
「…黒尾、さん?」 「お、名前覚えてくれてんの?」
嬉しいねえ、と笑う憧れの人。
「ええ、まあ…」
それでなくても有名人ですから、なんて言えずに言葉に詰まると「ん」と渡された小さめの紙袋。
「いつも俺らのみやげ美味そうに食ってるだろ。それ見んのが楽しみだったんだけど、今日見てねぇからさ」
一緒に食おうぜ、と笑って休憩室を指さす彼。
「わざわざ買ってきてくれたんですか?」 「ん?だって休憩時間終わった後へこんでただろ」
向かい合わせのテーブルでお菓子を頬張りながら聞くと、ニヤリと笑って答える彼。
「そ、そんな食い意地はってるみたいな…!」 「俺の倍食ってて言う台詞じゃねえな」
今度はくっくっと含んだ笑い。こんな笑い方もするんだ、とドキドキしながら最後の一つを口に放りこんだ。
「っし、行くか」 「ごちそうさまです」
立ち上がってごみを丸めた黒尾さんに言うと、
「いーえ。でもホント美味そうに食うな」 「…今まで見られてたのも恥ずかしいです」 「好きなのはお菓子だけか?酒は?」 「お酒も飲みますよ。強くはないけど」 「ふーん。じゃあ週末飲みに行こうぜ」 「え?!」 「なんでそんなに驚くんだよ」 「何で私なんですか?!」
今日のことでさえ驚いているのに。
「なんでって…あ、口に菓子ついてるぞ」 「え?どこに、「ここ」
瞬間舐め取られた、唇のぎりぎり横。
「…」
言葉が出ずに固まっていると
「…どうも思ってないやつにわざわざ菓子買ってきたり飲みに誘ったりしねぇよ」
顔を上げた彼と頭上から聞こえた声。
「…黒尾さん」 「なんですか」 「何で黒尾さんの方が顔赤いんですか」 「うるせぇ帰るぞ」
片手で口元を覆うけれど、まだ耳が赤い。自分からしておいて?と思わず笑う。
「…随分余裕ですネ、お嬢さん」 「ふふ、ごめんなさい」 「…言っとくけど俺酒強いから」 「え?」 「週末、油断してるとさっきの場所じゃ済まねえからな」
また余裕を取り戻したしたり顔で、指で唇をなぞられる。赤くなるのは私の番だった。
今日はほんのきっかけだから
(じゃあ今週の金曜な) (今週ですか?!) (当然。今まで待った分ここからは早ぇぞ)
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