ついに交わる




「…ナニソレ、嫉妬?」
「…っ」
「それは男友達として?それとも別の意味で?なあ、ホントに妬いてんの?」
「それ、は…」


答えられずにいると、壁に縫い付けられていた手首にまたぎり、と力がかかった。



「俺はしたよ、嫉妬。」
「…どういう意味?」
「好きだと付き合って、だっけ?昨日言われたの」
「…だったら何」


まだ昨日のことは鮮明に思い出せて、顔が熱くなる。松川の顔が見れない。


「ほら、その顔」
「え?」
「告白されてたときも、そんな可愛い顔してたんだろ?それで妬くなって?」
「…意味、分かんない」


可愛いって誰が?妬くって、何で?

こんな状況で少しも冷静になれず、ますます頭が混乱する。


「じゃあ分かんなくていいから、こっち向いて」
「いや」
「いいから」
「無理」
「好き」
「やだって、」
「なまえが嫌でも、俺は好き」


刹那に吐かれた言葉はすとんと頭に響いて。

目を見開いてすぐに松川へ目線を向けると、ついに視線が交わった。



「どう、して?」
「…どうしてって言われても好きなもんは好きだからな。だから嫉妬もするし、俺が先に言いたかったって昨日はめちゃくちゃ後悔しましたよ」


いつも飄々としている松川の、少し困ったような笑い方。



「で、やっとこっち見たな」
「っ…」
「なんで逃げた?今朝もさっきも」
「…松川なら、分かってるくせに」
「わかんねぇな」
「嘘」
「なまえの口から聞きたいんだけど」


勘のいい彼なら私の行動の意味なんてすぐ分かるだろうに。



「…手、離して」


抑えられたままの手首に視線を投げる。躊躇った彼に

「もう、逃げないから」

言えば、そっと離された両手。
離されてすぐ、松川の胸に寄りかかるように近づいた。



「私も、松川が好き。告白されても松川のことばっかり考えるくらい。あの子にたくさん嫉妬するくらいに」


言い終わる前に、松川の両腕が背中に回り腕の中に閉じ込められる。


「…やばい。思ったよりずっと嬉しいのな」

ぎゅうっと力を込められて。



「好き。俺と付き合って」
「…昨日よりずっと嬉しい。お願いします」

身動きができず、そのまま松川のシャツに涙を滲ませた。






5限が終わり、3年の教室へと歩く。
1組の前に近づくと、絡め取られる手。


「松川どこ行ってた…の…」


あの子が駆け寄ってきて、すぐに私たちの手へと視線が落ちた。


「どこって、逢い引き?」


ニヤリと笑った松川を見て、一瞬私を睨んで去っていく彼女。


呆然と成り行きを見ていると、

「もう不安にさせたくないからな」

空いている手で頭を撫でられた。


「あ…ありがとう」
「いーえ。あと、来週以降の月曜日あけといてな」
「…以降?」
「全部な」

優しく笑う彼に、手をぎゅっと握り返した。




やっと、捕まえた


(他にも見せつけたい奴もいるしな)
(え?)
(…不安なのはお前さんだけじゃないってこと)



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