躱せない質問




家に帰っても今日のことが頭から離れない。なにしろ告白なんて滅多にあるもんじゃない。

好きなんだけど″

今日言われたストレートな言葉が頭に響く。


嬉しさと申し訳なさ、そして好きな人に好きと言える勇気に尊敬。そんなことでいっぱいになっていると、携帯の着信音が鳴った。

こんな時間に誰だろうと画面を見て、携帯を落としそうになる。




【着信: 松川一静】



今日の放課後のことを思い出して、取ろうか取るまいか少し悩む。
気付かなくて、なんて言い訳をするのは簡単だけど、やはり声が聞きたい気持ちが勝って通話ボタンを押した。


「…はい」
「…もしもし、俺」


大好きな松川の声に知らず胸が高鳴った。


「知ってるけど」
「冷たいねぇ」

はは、と静かに笑う声。いつも通りの松川だ、と少し安心する。


「どうしたの、急に」
「んー、ちょっとね…お前、ひょっとして彼氏できたの?」
「…なんで?」
「いや、あの状況どう見ても告白でしょ」


やっぱり鋭い彼を誤魔化すのは無理だったか、とため息をひとつ。


「まあね…って…まさか聞こえてた?!」

すぐにあのときの最後の質問を思い出して全身に汗が滲んだ。


「聞こえてはないけど」
「けど…なに?」
「お前が頷いてるのが見えたから」

ゆっくりと吐かれた言葉。じゃあ松川の話は聞かれてないんだ、と胸を撫で下ろした。

「そっか…。別に、ただの世間話だよ」
「なんか余裕ですネ」

笑って言えば、低い声で返される。


「で、なんて言われた?」
「え…」
「告白。なんて言われた?」


そのままの声で、答えるまで逃してくれないような有無を言わせぬ雰囲気。


「好き…ってことと、付き合って欲しいってこと、かな」


少し気が引けたけれど、松川は絶対に誰かに言いふらしたりはしないだろうし、彼の雰囲気にも押されてゆっくりと口に出した。


「ふぅん。好き、と付き合って、ね」


そう反芻されるとまた鮮明に思い出して恥ずかしくなる。


「今思い出してただろ」
「…なんで分かるの、怖いわ」
「お前分かりやすいからね」

声は笑っているのに、なんだか本心ではない気がして。


「ていうか、なんでそんなこと聞くの?」
「…別に。今日なまえの頭の中は告白の事でいっぱいだろうし、俺の事なんて頭にないだろうから、ちょっとは思い出してもらおうと思って?」
「え…」

「なんてな。…ただ気になったからって言ったら、どうする?」



今日一番の爆弾発言に、心臓は破裂寸前。





電話越しに掠れた声


(なっ…)
(なぁ、どうすんの?)



この話にコメントする

Name

Comment



↑Input



×