告げられた想い





「みょうじさん、ちょっといい?」


友人との会話がひと段落したところで声をかけてきたのは、見覚えがあるくらいの1組の男子。

話があるんだけど、と私の方を見て続けた。ちらりと友達の顔を見ると、顎をくいっとあげて行っておいでの合図。





無言で着いて行くと、たどり着いたのは体育館裏だった。

人気のないそこは確かに話をするのにはうってつけだろう。でも私にはよりによって、という思いで、体育館から聞こえるボールの音とかけ声に耳が集中してしまう。


「松川と付き合ってんの?」
「へ?」

ふと出された言葉に思考が追いつかず、間の抜けた声が出た。


「ていうか、彼氏いる?」
「いや…いないよ」


松川と付き合ってるのかと聞かれることはあったけど、それは多分からかわれていただけであって、こんな真剣なトーンでなんて初めてで。
知らず体が強張った。


「好きなんだけど」
「え、」
「付き合ってもらえないかな」


思わず相手を直視すると、真剣な目。

これは冗談でもなんでもないものだ、と慣れない告白に頭が真っ白になり、言葉が出てこない。


「だめ、かな」
「…ごめんなさい。好きな人がいるの」


ちゃんと答えなきゃ、と体勢を立て直す。真剣に伝えてくれた相手に、真剣な言葉で返した。


「やっぱり」

俯いて苦笑いする彼に、もう言葉が出てこない。


「それって、松川だよね」

友達以外知らないこの気持ち。今は隠しちゃだめな気がして、無言で頷いた瞬間、ガラっと音がした



「松川…」


休憩10分ねー、と主将の声が体育館の中から聞こえた。

よりによってこのタイミングで?それより今の話聞かれてないよね?と焦りがつのる。


「…お前ら知り合いだったっけ?」
「えと…」
「たまたま話してただけ。帰ろっか」


一瞬止まった空気に口を出したのは松川。言葉がつかえた私に、男の子が助け舟を出してくれた。

「あ、じゃあね」


歩き出した彼に続いて背中を向けた。
今松川の顔を見たら、なんとなく泣いてしまいそうで。




「誰にも言わないから」と言ってくれた彼にありがとうと伝え、階段で別れた。

待ってくれていた友達は、何も聞かなかった。きっと話の内容も、私がなんて答えたのかもわかっているんだろう。




想う人は別にいる




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