待ち人は、君




全校集会憂鬱だな、と思いながら体育館に入ってくる人の流れを見ている。

周りを見渡していると、

「誰探してんの?」

と背後から声がして、振り返ると頭の上に乗る大きな手。


「松川」

「ひょっとして俺探してた?」
「そんな訳ないでしょ」

その通りとは言えず、可愛くない言い方で返してしまう。


「素直じゃないデスネ、なまえちゃんは」
「ちょっと、やめてよ」


わしゃわしゃと頭の上の手を動かされて、逃げる素振りで顔を下に向けるけど、本当はにやける顔を隠すためで。



「なあ、今日さ」
「松川〜」

なにか言いかけた松川を制止したのは女子の声。


「早く並ばないと」
「ハイハイ」


近寄ってきて、松川の腕を引く彼女。またな、と最後にひと撫でして背を向けた彼の横で、ちらりと女の子と目があった。


「…かわいい子だったな」

思わず呟いて、自分のクラスの列へと向かった。







「そりゃあ、絶対松川くんに気があるね」
「やっぱり?」


放課後、友達と教室で話しているとずばりと言われた。口にポッキーを運びながら顔を俯ける。


「て言うかあんたも何やすやすと引いてんのよ。正妻の意地はどうした?」
「いや付き合ってないし」

即座に苦笑い半分で返す。確かに今年まではずっと同じクラスで、月曜日はしょっちゅう寄り道したり、友達と一緒に試合の応援に行ったりもした。

周りからは「お前ら付き合ってないの?」と聞かれるくらい一緒にいたし、仲もよかった。 いや、別に今でも仲が悪いわけではないけど。


三年生になってクラスが変わったけど、仲がいいのは変わらなかったはず。でも松川は部活に、私も進路にと忙しくなったのもあり、話す頻度は確かに減った。
更に楽しみにしていた月曜日は、なぜか松川のクラスの集まりだかが多くて遊ぶ機会も減った。



「1組の集まり、遊びとか勉強会とか色々やってるみたいだけど、企画はいつも特定の女子だって」
「…そうなんだ」


友達の言葉にお菓子を取る手が止まった聞かずとも多分分かる。きっと、あの子だ。



「なまえも頑張んないと」

喝を入れてくれる友達に返すのは、また曖昧な苦笑いだった。







作り笑いが上手くなる


(松川くんモテるんだね)
(だって松川かっこいいもん)
(ベタ惚れですか)



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