HAPPY BIRTHDAY
「おはよー」 「ハヨー」 「菅原にはきっとサプライズとかしても無駄だと思うから先に言っとく。おめでとう」 「はは、ありがとなー」
朝練前、着替えを済ませて女子更衣室を出ると、ちょうど部室棟の階段を降りてきた菅原に出くわした。今日も相変わらず爽やかな笑顔をしてるなーと思いつつ、お祝いの言葉をかける。
「確かに俺、サプライズとかけっこう気づいちゃう方」 「だろうね」 「嬉しいのは嬉しいけどな!一回くらい本気でびっくりしたいかもな〜」 「澤村たちとも相談したけど、菅原は鋭いからやめとこうって話になった」 「大地は意外と自分のことには鈍いし、旭はすぐひっかかるからなぁ」
そんな会話をしながら、二人並んで体育館へと向かう。今朝はラッキーだ。
せっかくのチャンス。どのみち今日言うって決めたんだから、いま、言わなくちゃ。
「…菅原」 「ん?なに?」 「私、菅原のことが好き。部活仲間としてだけじゃなくて、男の子として」 「……え、まじ?」 「まじ」 「…」 「…」
思わず二人立ち止まり、無言になる。男バレの朝練は他の部活より少しだけ早いせいか、それとも偶然か。誰も周りに見当たらなくて、聞こえるのは静寂と、出てきはじめた蝉の声。
「さ…サプライズプレゼント…なんちゃって」
あまりに恥ずかしくなって少しとぼけて言ってみると、急に消えた菅原の姿。というより、しゃがんだだけなんだけど。
「すがわら…?」と声をかけてみても、膝の間に顔を埋められ、彼の表情が読めない。
「…マジでサプライズだったわ」 「…びっくりできてよかったね」 「うん。今までで一番びっくりした。それとさ」
立っていた私の手首を掴まれ、同じ高さへと引き寄せられる。
「一番、嬉しかった。…俺も、好きです」
顔を上げた菅原の肌は赤く染まっていて、でもすごく真剣な目で告げられたお返しの言葉。
私も信じられなくて、恥ずかしくて、嬉しくて。色々混じった感情を持て余してしまうけど、目があったまま離せない。
「…なあ、もう一個プレゼントもらっていい?」 「え?うん、あげられるものなら…」
大きく鳴り続けている心臓の音を聞きながら答えると、掴まれたままの手首を引かれた。
つま先だけで支えきれなくなった体重が自然と菅原の方へと傾いて、片膝をついた菅原に抱きとめられると同時に掠め取られた唇。
「…ごめん、我慢できなかった」
と言って片手で口元を覆った菅原。
呆然と彼を見つめると、赤く染まった顔で「こっち見んな」と胸に顔を押し付けられて、くすぐったいような嬉しさとやっぱり菅原が好きだと気持ちがこみ上げてくる。
とびきりのサプライズプレゼントをもらったのは私の方だよと、大好きな彼にもう一度おめでとうと声をかけた。
特別な一日を君と
(でもどうしよう菅原、顔あげらんない) (俺もしばらく離したくない、なんて)
スガさんHAPPY BIRTHDAY!!
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