×××の仕方も教えよう




「なまえさぁ」
「はい?」
「今週末、俺んち来ねえ?」


週の中程、やっと少し慣れてきた黒尾先輩との二人きりでの帰り道。いつもさり気なく私の手をとって歩き出す優しい先輩の大きな手が、いつもよりもきゅっと強く握られた。


「家、ですか?」
「研磨の親とかと一緒に旅行でさ、親いないんだよね」
「それは、あの…」
「できれば泊まりで来てほしいなーなんて思ってるんですが」


こっちを向かず、前を見たまま話す先輩の表情が読めない。けど、いくら恋愛初心者の私でもその言葉に含まれる意味はわかる。

先日初めてのキスをして、すごくドキドキしたけど、それと同時にあったのは安心感と幸福感。あのとき言われた言葉はやっぱり本気だったんだ、と思った。


「えっと…」
「うん」
「行き、ます」
「…ん。」


お母さんになんて言おうかとか、色々準備しなくちゃとか考えるより前に、答えは出ていた。






それから週末まではあっという間だった。今日は土曜日で、夕方には練習は終わった。一度帰ってシャワーを浴びてから、お泊まりの用意をして家を出る。お母さんには友達の家に泊まると言ったけど、ベタな言い訳だなあと思った。








「お待たせしました」
「待ってねぇよ、全然」


黒尾先輩の最寄駅で待ち合わせて、コンビニで買い出しをして家へ向かう。ごはん作りましょうかと言ったけど、「手料理は食いたいけど、彼女連れ込んだことバレちまう」と笑って言われた。

(彼女、だって。)




「お邪魔します」
「うーい」


家に着いてリビングでごはんを食べて、デザートを食べながらDVDを見て。今日本当にするんだろうかと疑問に思うくらい、黒尾先輩はいつも通りの態度で。

それでも流れていた映画に感動して滲む涙を拭いながらエンドロールを見つめていると、ふと視線を感じて彼を見る。いつからだろうか、じっと見つめられていてびっくりした。


「あ、の…」
「キスしていいですか」
「…、っ」


急に雰囲気の変わった黒尾先輩に胸がドキンと跳ねた。でも…私だって覚悟してきた、つもり。


彼に教わった通りに目を閉じると、ゆっくりと触れた唇同士。未だに羞恥が残るその行為が終わったかと思って目を開けると、まるで試合中のように真剣な目をしている彼。



「覚悟、できてるか?」
「…黒尾先輩が教えてくれるなら、なにも怖くありません。けど、」
「うん」
「ひとつだけ我儘言ってもいいなら、黒尾先輩の部屋で、がいいです」
「…あんまり可愛いこと言うな」


そう言って、肩と膝下に手を持っていかれ、あっと言う間に抱えあげられる。自分で歩けますと言ったけど、いいからと言われて黙るしかなくなった。


部屋のドアを足で閉めて、電気もつけないままベッドへと降ろされる。後ろ手に肘を付き上体を起こす私に、黒尾先輩が覆い被さる。


「なまえ」と初めて聞くくらいの甘い声が聞こえ、額や頬についばむようなキスをくれた。くすぐったくて恥ずかしくて目をとじていると、一度唇にも降ってきたそれ。薄く目を開けると、目の前には彼の整った顔があって、さっきまでの真剣な目が今は優しげに細められている。

顎をくい、と持ち上げられると口が自然にあいて、それを彼の薄い唇が塞いだ。くちゅりと舌が挿しいれられ、私の口内を這う。はじめての感覚に思わず眉間に皺が寄ってしまう。


「ん、ぅ…」


どうしたらいいのかわからなくなり、呼吸さえままならずに一度その胸を軽く押した。


「…っふ、くろ、先輩」
「ん、急でごめんな」


浅い呼吸を繰り返して、やっとの思いで彼の名を呼ぶと、優しく降ってくる言葉。

また彼の顔が下がってきて、キスの予感に目を瞑ると、予想に反して耳元にぐちゅりと卑猥な音がした。私の顔を手で固定し、その耳を舌で弄ばれる。


「ん、ぁっ」


ぞくりとした感覚に思わずびくっと固まってしまった私の頭を何度か撫でてくれた。


「嫌だったら言えよ」


と言って、また唇へとキスをくれる。同時に胸に手が降りてきて、服の上からやわやわと触れられて。徐々に下にさがり、着ていたワンピースの裾にたどり着く。軽くそこを持ち上げ、上に向かって上げられると一気に羞恥心が膨らんだ。


「っ!やっ…」


反射的にその手を押さえるように伸びた私の腕を一瞬頭上で絡め取り、その隙に服を抜き去られる。

喉の奥で笑い、「照れすぎ」と呟く黒尾先輩。


次いで背中に手が回り、ぷつっとホックが外され抜き取られると、その大きな手が直に肌に触れる。彼の顔が下にさがると、ぬるりと胸に温かい感触が纏わりつき、突起が軽く突かれた。


「っあ…んっ!」 


途端に鼻にかかったような甘い声が漏れ、吃驚して唇を噛んだ。一度こちらを見上げた彼は、今度は突起を中心に舌を這わせて口に含む。


「…ん、んっ!」 


声を出さないようにと我慢する私を嘲笑うかのように、愛撫する手を、舌を止めない黒尾先輩はこの上なく楽しそうに見えて。


(やっぱり、慣れてるんだなぁ) 


ぼーっとした頭でそう思うと、やはり少し悔しくなり、黒尾先輩の肩をきゅっと掴む。


「ん、どうした?やっぱり怖ぇか?」
「ちがいますけど、ちょっと…悔しくて」


と言うと、愛おしそうに目を細めてクスクスと笑い「とりあえず、大人しく感じてな」と言われた。
目が合えば優しく笑う彼の口元が目に入り、同じように私も微笑む。


「緊張は取れたか?」


そう問われて、やはり想像より優しげに進むこの行為は、私の初めてを考慮されたものだったんだと。


「はい。黒尾先輩…続き、してください。」 



その優しさに嬉しくなって素直に気持ちを吐露すると、私を見下ろしていた黒尾さんの頬に僅かに朱味がさし、視線が逸らされた。

またキスをくれた後、胸へと愛撫を戻される。突起への微妙な甘噛みに知らず背中が浮いてしまい、ぴくぴくと同じ動きを繰り返して彼の愛撫から逃れることが出来ない。


「ん、 っあ! やぁ…はっ」


もう抑えることなど出来ない声が甘く響き、彼が遂に妖しく笑う。


「いい声。そうやって感じてな」


黒尾先輩の体がキスを落としながら徐々に下に降り、両足の間に彼が入り込む。

少し強張る私の身体を感じたのか、「暗いから見えねぇって」と笑いながら言って、ゆっくりとショーツを剥ぎ取られた。確かに暗いけど、彼の顔がぼんやり見えるくらいには外で街灯が灯っているのに。


黒尾先輩は私の膝の裏に手をやり、ぐっとお腹に押し付けるように足を上げた。


「やだ!せんぱい、いやっ!」


あまりに恥ずかしいその格好に焦って声をあげるも全く緩むことのないその力に、じわりと涙があふれ出た。


「そのイヤ、は却下です」


そう言うや否や、誰も触れたことのないそこに、熱い彼の舌がぬるりと這う。 


「っ!…あぁ、ぁっ」 


ぬるりと溝を這うその舌が激しく動くにつれて彼の手にも力が入り、より押し広げられる脚に羞恥が溢れ、また涙が滲んだ。

溝を割って舌が入り込み、隠された突起を発見すると執拗にそこを舌で突いたり押しつぶすように弄られる。自分の熱が液体となって溢れてくるのが自分でも分かり、彼の指がそこに触れるとくちゅ、と鳴った。


「ん、いーね」と、恐らくニヤリと口角が上がっているであろう彼に「あっ、あっ」と声をあげることしか出来ない私。


「指、挿れるぞ」


そう言うと、ゆるゆると溝に宛がっていた長い指を膣内へと進める。舌で突起を舐め上げられ、徐々に入り込んでくる骨ばった指の感覚に、体が仰け反ってしまう。


「はっ、…はぁ」


浅い呼吸しか出来なくて朦朧とする意識の中でも、くちゅ、ぐちゅと聞こえるその音を自分がだしているかと思うと、羞恥に体が震え背中にぞくりと何かが這い上がってきて。 

突起を優しく愛撫していた舌が一瞬離れたかと思うと、そこがくっと引き上げられ、普段は隠されている粘膜に今度は直接舌が宛がわれて激しく上下に擦られた。


「…うあ、やっ、!」 


先ほどとは比べ物にならない快感に、腰が跳ね上がる。脳が痺れるような感覚が駆け巡り、彼の指が膣内で曲がった瞬間、


「あっ…ゃあっ!」
「お、イけた?」


荒い呼吸をするしか出来なくて、何が起こったか理解できない私に満足そうにそう言った黒尾先輩は、その動きをやめることなく責め続ける。


「あ、やぁ…せんぱ、っ、あっ」


また同じようにせりあがってくる感覚に自然と逃れようとする私の体を押さえつけた彼は、指をもう一本挿しいれる。つきんと痛む感覚とまた背中を駆け上る快感。溢れ出る涙が頬を伝う。


「…っあぁ!」  


言葉も出せないまま快感の波に攫われた私のその場所からふっと顔をあげた彼は、私の顔を覗き込み「気持ちよさそうにしてくれるね、なまえちゃん」と意地悪に笑う。

指は中を押し拡げされるようにゆっくりと動き、時折外で熱く腫れている突起を掠めて。 


「は…ん、ぁ、あっ」


言葉にならない声を発する私の溢れた涙を舌先で掬い、額へとにキスを落とす黒尾先輩は、その目を細め「ん、可愛い」と甘い言葉をくれる。


「もっと見てたいけどな…そろそろ俺も限界」


そう言って指を引き抜いた彼は、着ていた服を脱ぎ去り、ベッドの下へ捨て置いた。


「最後まで、シていいか?」


またゆっくりと覆いかぶさってきた彼の、今度は直に感じる体温が嬉しくて。


「はい。先輩となら大丈夫です…して、ください」


恥ずかしいけど素直な気持ちを伝えると、一瞬あいたあと降ってくる荒い口づけ。また呼吸を乱されつつ離れた唇に目を開くと、間近に見えた彼の顔は、先ほどまでとは違いくっとあがった眉とまっすぐに結ばれた唇。


余裕はもう見えなかった。



「なまえ、頼むからこれ以上は煽んな。優しくしてやれなくなる」



たまに見せる鋭い瞳を携えてまたぐっと脚が開かれ、少しの恐怖を私に与える。
ぬるっと濡れる入り口を、彼の熱いそれで押し拡げられ、ぐっと入り込んでくる。


「…っあ、」
「ちょっと、我慢な」


そのあまりの質量につきんとした痛みに体が強張り、彼が進もうとする分だけ自然と体が上にずれたけど、それを許さないとでも言うように背中から回された腕と肩を掴む手に阻まれた。


「うっ、ん…ぁ」
「っは…わるい、痛ぇ、よな?なまえ、大丈夫か?」


奥まで入ったのか何かを逃すように一つ息を吐き、先ほどまであんなに強引だった黒尾先輩のそれでも私を気遣う優しさに、やっぱりこの人が好きだと思った。


「大丈夫、です…ちょっと苦しいけど、うれしい」


そういうと一瞬、ほんの一瞬だけ泣きそうに歪められた彼の顔が見えたかと思ったら、激しく噛み付くようなキスが落ちてきた。

くちゅくちゅと絡む舌に、またあがる体の熱。



「…痛かったら言えよ」

その言葉を合図とするように、ゆっくりと抽送が始まる。


「ん、あっあ、!」


思ってたより痛みは続かなくて、感じるのは少しの圧迫感と…快感。


「あ、っくろ、せんぱ…っあ」
「…、なまえ、」
「や、んっ!おく、だめっ…」
「ん…ここか?」
「やあぁ…っ!」


打ち付けられる腰の勢いに翻弄されていく。最初は私を気遣うようにゆっくりだった動きが、段々強く、早くなっていて。

きっと、もう私が感じてしまってることなんてバレてる。でもそんなのどうでもいいくらい、も っと黒尾先輩でいっぱいになりたい。


「せんぱ、っ…すき、」
「っ…煽んなって言ったろ、!」
「あぁっ!」


中でひと際大きくなったそれに、びくんと身体が震えた。そのまま何も考えられなくなるほどに腰を打ち付けられて。


「あっあっ、!も、だめっ」
「…っはぁ」
「や、ぁあ…っ」


身体に力が入らなくなり、がくがくとゆさ振られるだけになって、涙で顔がぐちゃぐちゃになる。


「もう、やだぁ…っ」
「、やべ、イきそ…」
「やっこれ以上は、だめ、っあぁ!」


切なそうな先輩の声が聞こえたと思ったら、更に激しくなる抽送。もうおかしくなりそうで怖い、と思っていたら、先輩が強く抱きしめてくれて、噛みつくような口づけが降ってきた。

口内まで隙間なく侵されて、すぐに先ほど感じた大きな波が襲ってくる。


「ん、っふぁ…!」
「…は」
「んっや…!ああぁっ…!」
「…っ」


夢中で先輩にしがみついたまま、大きく跳ねた身体。先輩の体もびくっと震えたけれど、苦しいくらいに抱きしめてくれていて。


この間よりもっと幸せな気分に浸りながら、ゆっくりと眠りに落ちた。








おはようとキスをして

(まぁ教えたいことはまだいっぱいあるけどな)
(…ゆっくりめでお願いします)
(とりあえず昨日の復習からいきますか)
(え?!)


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