噂の豹変系男子
ちゅ、ちゅと部屋にリップ音が響く。あの日一度彼に唇を奪われてから、ぐっと縮んだ二人の距離。
屋上でのキスのあと、またあのかっこいい顔で「好きだよ」と言ってくれて、断るべくもなく私も、と返した。
付き合うことになったんだ、と澤村くんたちに報告すると、「むしろまだ付き合ってなかったのか?」なんて言われたりもしたけど。
今日は何度目かのデートに行って、彼の部屋に来ている。そして何となく。いや、何となく、じゃない。私は今日こうなることをどこかで確信していたのかもしれない。
「なまえ…そのまま目、閉じてて」
いつもの軽いキスを何度か繰り返し、一瞬あいた間に目を開けようとしたら降ってきた言葉。
優しく頭の後ろに添えられていた手に急に力が入り、そちらに驚く間もなく彼の舌が侵入してきた。
「んっ、」
口内に感じる、ぬるりとした感覚。全ての意識が唇に向くけれど、ぼーっとして何も考えられなくなってきて。
「ふ、ぅ…」 「なまえ、かわいい」
離された唇をなんだか名残惜しく感じながら、そのままベッドに倒される。
「ん、あっ、」
器用に服を脱がされていき、菅原くんの舌が首筋から徐々に下へと這わされる。気持ちよくて、全身が痺れるような感覚に陥ってきた。
「すがわらくん、あっ、やぁ」 「ね、孝支って呼んで?」 「やっ、恥ずかし、」 「んー?そっか」
余りにも余裕そうにくすっと笑う彼になんだか悔しくなるけれど、恥ずかしさの方が勝ってしまう。
そのまま胸の飾りを口に含まれて、分かりやすいくらいに呼吸が荒れてきて、漏れる嬌声が止まらない。鎖骨の辺りから胸の谷間まで、舌の先をつぅっと這わせ、胸の突起に軽く歯を立てつつ、もう一方を指先で転がされた。
「ん、ぅ…ん!…は、ぁっ」 「なまえ…ほんとに可愛いんだけど」
菅原くんの愛撫と言葉に顔が火照る。脚に手をかけられたかと思うと、そのままぐっと持ち上げられ、彼の唇がそこに触れた。
「やっ、やだ…恥かしい…っ…んぁ」
必死に抵抗するけれど、彼の力には敵わず、その行為を遮ろうとする言葉を、舌を動かして掻き消される。
「あ…ぁ、ん…んっ」
ぐちゅりと音が響くとまた掻き立てられる羞恥心。この声も音も、自分が出しているんだと思うと尚更。
私が快感に身を委ねていたら、菅原くんの指が中へと入ったらしく、くっとお腹が圧迫される。
「うぁっ」 「ん、狭…痛い?」
私を労るような彼の言葉に、顔を横にふる。
「ふ、だいじょうぶ…あっ」
言えば彼は安心したようにふわりと笑い、中に入れた指を動かした。奥の壁を撫でられると、急に駆け上がる快感。
「ふぁ、っあ!」
自分で意識したわけでもないのに、きゅ、と彼の指を締め付ける。
「なまえ、気持ちい?」
菅原くんはくちゃ、と指を抜いて私に笑いかけた。その顔がなんだか色っぽくて、私は彼から目をそらせない。
「ん…きもち、いい」
たどたどしく言うとまたふわりと笑い、一度のキスを落としてくれる。そのまま近い距離で、
「もう俺のものにしちゃってもいいかな?」
最終確認とでも言うように問われたら、頷くしかない。ありがと、と言って、菅原くんの体が私の脚の間に割って入る。
「力抜いててな」 「んっ…あ、っ」
菅原くんがぐっと腰を進めると、中に感じる圧迫感。気をつかってゆっくり入ってきてくれるのがわかるけど、焦らされるようにも感じて腰が震える。
「ふ、あっ、」 「っは、なまえ、」
奥まで到達して、私も彼も恍惚のため息をはく。ゆっくり彼の腰が動き出すと、勢いに押されて声が止まらない。
「あぁっ、やっ、あっ」 「っく、」
徐々に早まる動きに思考も定まらず、ただ快感に身をまかせる。頭に残るのは菅原くんが好きだという感情だけで。
「うっあ!…孝支、っ」 「…っ、それ反則」
初めて名前を呼ぶと、彼の眉間に皺がよる。切なそうな顔すら格好いい。
すぐに噛み付くようなキスをくれて、ぎゅうっと抱きしめられた。素肌の身体と身体が密着して、熱いのにきもちよくて。お互いを抱きしめる腕に力がこもる。
「ふっう、あぁっ」 「っなまえ、好きだよ」 「んあぁっ!っやあ!」
耳元で言われた瞬間、びくびく、と体が震えた。
「っふ…、なまえ、締め付けすご…っ俺も、イく、」
掠れた声が耳元で低く響き、彼は腰の動きを速めて、やがて薄い壁越しに熱を放った。
事後、やっと互いの息が整って。恥ずかしくて顔が見られなくて、菅原くんの首に手を回したまま離れられないでいると、それに気づいてくすりと笑う彼。
「わ、笑わないでよっ」 「いや、かわいくてさ。顔、見せて」
ぐっと力を入れて離される。羞恥心を押しのけて菅原くんの顔を見上げてみると、嬉しそうな笑顔。その顔、反則。
「…かわいいのは菅原くんの方だよ」 「いやなまえだべ」
いつも可愛くて、でも急にかっこよくなったりして。そして今日はすごく色っぽくて。私はそんな彼に振り回されっぱなしだけど、それでもいいかなと思った。
次はどんな顔を見せてくれる? (ギャップ萌えはいいんだけど、) (ん?) (私の前だけにしてね) (…なまえがそうやって煽るから)
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