愛の警備力




「なまえってモテるよね」


ある昼休み、ふと友達に言われた。


「えっそんなことないよ。告白とかほとんどされたことないし」
「今の彼氏でしょ?」
「…うん」


年上の彼氏である大地さんを思い出して、ふわっとにやけてしまう


「でもなまえのこと紹介してとかよく言われるんだけどな」
「?でも、私は大地さんがいるから」
「出た!のろけ!」
「えへへ」


という会話を友人とした翌日、知らない後輩からまさかの呼び出しがあった。


「ずっとなまえ先輩のこと見てました。好きです」


告白の可能性を考えてなかったわけではないけど、こんなにストレートな言葉で言われるなんて、と少し吃驚した。けれど、私の答えはもう決まっている。


「気持ちは嬉しいんだけど、ごめんなさい。お付き合いしてる人がいるので」
「…澤村先輩ですよね」
「はい」
「でも、澤村先輩が卒業したらチャンスとかあるんじゃないかと思って。今日は俺の存在と気持ちだけでも知ってほしかったんです」


こちらが口を挟む間もなく、彼が言葉を続ける。私はもちろん断る気持ちしかないけど、こんなに一生懸命気持ちをぶつけられると、咄嗟に言葉が出てこない。その時、


「チャンスなんてやらないよ」
「…大地さん?」
「なまえ、こっちおいで」

いつの間にか後ろにいた大地さんに腕を捕まれて、引き寄せられる。いつもより強い力が込められた腕の中にすっぽり収まった私を片腕で抱きしめたまま、大地さんが言葉を続けた。


「悪いな。こいつは俺のだし、今後俺が卒業しても離す気なんてない。できれば今日で諦めてほしい」
「そんな…俺だって!」
「諦めろ、と言ってる」


ぐっと低くなった声に、向けられる厳しい視線。
大地さんが怒ってるのがよく分かった。一年生が固まるのも無理はない。

彼はなにか言いたげな表情をしたけれど、結局何も言わずに走り出してしまった。聞こえてないだろうけど、ぼそっと「ごめんね」と呟く




「…なまえ」

彼が見えなくなって、大地さんがくるっと私を振り向かせてから私の両肩に手をのせる

「は、はい!」
「いくら学校でも、男と二人っきりになるなって言ったよな?」
「あ…ごめんなさい…」


さっきよりは和らいだものの、未だにいつもより低いトーンで言葉を発せられ、私も身構えて謝った。それに気づいたのか、一度安心させるように微笑んでくれたけど、すぐに困ったような顔になる彼


「ったく、なまえは本当にモテるから困る」
「え、告白とかされたの、今の人で大地さん入れて二人目ですよ」
「当たり前だろ。俺が事前にやめさせてんだから」
「え…え?!」
「二、三年だけでいいと思ってたんだがなぁ…まさか一年まで来るとは予想外だった」


そう独り言のように呟いて、強く、だけど優しく抱きしめてくれる。今の彼の告白には吃驚したけど、その暖かい体温が伝わってきて、嬉しくて愛しくなった。


「誰にも渡さないからな」
「…はい、ずっと大地さんといたいです」


自分が思ってたよりもっと、愛されていたみたい。くすぐったいような笑いをこぼして、そっと広い背中に手を回した。







あなたの警備力には脱帽です

(なあスガ、最近、昼休み大地いないな?)
(パトロールだよ)


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