大地さん




昔私は雨が嫌いだった。憂鬱な気分になると言うか、すごく寂しい気分になると言うか。だから一人で雨の空を見つめているとため息が零れた。でも今は、



「まったく…何で傘持って来てないんだ」
「ごめんね。でも天気予報は曇りって言ってたんだもん」
「はいはい、わかったよ。ほら、もっとこっち来ないと濡れるぞ」
「はーい」



そう言って優しく笑って傘を寄せてくれる大地が側にいる。せっかくの休日デートの日に雨なんてと思ったけど、大地と相合傘できるなら悪くない、と彼の腕に自分の腕を絡めた。

それでも待ち合わせ場所に大地が現れるまで小雨に当たっていた私の体は冷えていて。



「このままだと風邪ひくな。どっか店入るか?」


大地はそう言うと、傘を持つ手を持ち替えて、私の肩を抱き寄せてくれる。

それがすごく嬉しくて、



「ね、大地…あっためてくれる?」
「お望みどおり」


きっと言葉の裏に含んだ意味まで一瞬で理解した大地は、笑って言った。


「優しくしてね?」
「悪いがその約束はできない」
「う…」



でも今日はそれでもいい。やっぱり幸せだなと思って、彼の体温に寄り添った。




雨が降ると大好きな貴方との距離が縮んでいく気がするから、私は今は雨が大好き。

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