ふわふわたいむ




憂鬱な月曜の登校。靴箱を開けると、最近いつも入っている一枚のメモ。今日はどんなくだらない内容かとそれを開くと、


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問題です!なまえちゃんの好きな人は誰でしょう?

1.及川さん 2.及川さん 3.及川さん

提出は3年6組及川まで(ハート)
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とりあえずメモを破り捨ててヤツの靴箱に放り込んだ。








「ねー!なまえちゃん!テストの返却はァ?!」
「うっさいバカ川」


私は3年5組。つまり及川の隣のクラス。朝から意味のわからないちょっかいをかけられたうえに休み時間に急襲してきたヤツの声に、私は机に突っ伏して顔も見ない。


「なんだ、またコイツがなんかやらかしたのか?」
「岩ちゃんの監視が行き届いてないよ」
「こればっかりは無理だな」


前の席に座るヤツの相方がうんざりしたように振り向いて言う。ほんとになんとかしてくれと懇願するも、いつも無理だとあしらわれる。


「なにその君らの仲良い感じ!」
「及川さん静かにしてくれませんか」
「急な敬語やめて!」
「ハンガーさん日本語わかりますか」
「イエスアイアムハンサムボーイ!」
「ジーザス」


いつも通りのこのやりとりに、岩ちゃんが呆れたようにため息をついた。





そして放課後。下校のために靴箱をあけると、また見つけたそれ。

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校門で待ってまーす!
早く来てね

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あーもう。これは下駄箱に突っ返しても意味ないな、と思って門に向かった。




「(待った?)ううん今来たとこだよ!(そっかよかった!)」
「勝手にアテレコするの止めてもらえますか」
「敬語やめてっつったじゃん!」


ぶー、と拗ねたような顔をしてもたれていた壁から背中を離した及川。


「で、なんの用?」
「ん?放課後デートに決まってるでしょ」
「そんなんするくらいなら放課後ティータ◯ムを聞いてたい」
「及川さんとふわふわ◯イムを過ごそうよ!」
「何で知ってんだきもい」



そして歩き出した私についてくる。何気なく歩道側を歩く及川は、やっぱり手慣れていると思う。しばらく歩くと、同じ方向に向かう生徒たちが、曲がり角の度にまばらに減っていく。


「…で?」
「え?なにが?」
「なんなの、最近のあのメモ」


ここ最近始まったそれに、ついに疑問を呈した。


「それ言わなきゃダメ?」
「てか意味あったの。ただの嫌がらせかと思ってた。」
「一部の男子への嫌がらせだね」
「…は?」


真意こそわからないものの、急に真剣に答えた及川の顔を見ると、いつものふざけ顔じゃなくこっちを真剣に見ていて、思わず立ち止まる。


「こないだもらってたじゃん、ラブレター」


…ああ。ラブレターというか…まあ、ラブレターかな。でもそれが何の関係があるの?と質問で返す。


「イヤだからだよ。だから毎朝チェックしてんの。もしあったら捨てようと思って」
「そんな頻繁にあるわけないじゃん。」
「でもあったらイヤじゃん」
「ていうかさ…なんで及川が嫌がるの」


一連の流れに核心をついたら

「わかってるくせに」

と、困ったように笑って言った。



ああ、わかってますよ。そこまで鈍くないつもりだし、及川は意外と単純だし。及川が毎日ちょっかいかけてくるわりに私に対して女の子たちからのイヤガラセがないのも、あんたが水面下で動いている結果だってことぐらいとっくに知ってる。


そこまで一気に言うと、吃驚したような顔をしている彼。


「なにびっくりしてんの」
「まさかそこまでバレてたとは」
「でも気づかないふりしてたよ」
「…なんで?」


及川の表情が固まる。私がどんな言葉を返すのか、真剣な顔で待っている。私の答えは、もう決まっているけど。


「いつになったらちゃんと告白してくれるのかなと思って、待ってた」
「…なまえちゃんには敵わないわ」


そう言って口元を片手で隠した、愛しいおバカさん。この後に、どんな言葉をかけてくれるのだろうと思うと顔がにやけた。







ふわふわたいむの到来

(もう!大好きだよ!)
(ほんと、とれだけ待たせるの)
(…なまえちゃんの好きな人は誰ですか?)
(及川徹でファイナルアンサー)






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