烏養さん




「…まずい」


夜。自室に遊びに来ている彼女にキスをした。幼馴染の彼女と、し慣れている筈のそれに違和感を覚える。



「…何それ?キスの味がってこと?」
「んー…」
「繋心ひどい!」



彼女とのキス、いつもは甘く感じるのに。なぜか感じる苦味というか、その正体がわからず記憶を探る。



「お前さ、今日何か食った?何か覚えのある味なんだけど…。」
「んー?何だろうね?」


にへっと笑う彼女。
恐らく何か口にしたんだろうが…


「…あ」


俺は少し心当たりを思い付いて、自分の引き出しを探った。


(…やっぱり)


「お前俺の煙草吸っただろ。」
「すごーい!よく分かったね」
「お前なぁ…あれキツかっただろ?何で吸ったんだよ」
「んー。繋心いつも煙草吸ってるから、煙草の味がそんなに好きなのかなぁと思って」



恐らく彼女は、煙草に嫉妬したのだろう。
俺がいつも"口付けて"いるから

そんな些細な事で嫉妬までしてくれるなんて、
俺は何て幸せ者なんだろうと思った。



「…言っとくけどな、俺は煙草吸ってる時よりお前とキスしてる方が好きだぞ」
「…本当?」
「本当」



そう言うと、彼女は幸せそうに笑った。

こんなにお前を愛してるんだから、お前以上に好きなものなんてない。そう言いたくても、恥ずかしくて言葉には出来なかった。



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