及川さん




「…何やってんの?」


大学一年になった年の冬、俺はいつも通り、学校帰りに一つ年下の彼女の家に寄った。


「見て分かんないんですか?勉強ですよ」
「勉強?珍しいね」


似合わないその姿にクスリと笑いを零しながら、コートを脱ぐ。


「だって私、一応受験生ですよ。いつも先輩と遊んでる訳にはいかないんですー」
「心外だなあ…遊んでる訳じゃなくない?愛を確かめあってるんじゃん」


そう言って、彼女の背中をすっと指でなぞってみると、彼女は俺の好きな反応を返してくれる。


「きゃあ、っ」


と、可愛らしい声を出してびくっと背中を反らす。


「せ…先輩の意地悪」


くるりとこちらを向いて涙目になって睨んできた彼女が可愛くて、ついいつもの"愛の確認行為"をしてしまった。







数十分後。まだ熱気の篭る部屋で、彼女に問いかける。


「ところで、何で急に勉強してたの?志望校A判定じゃなかったっけ?」
「…だって、及川先輩と同じ大学行きたかったんだもん。」


少し恥ずかしそうに答える彼女。確かに俺の行っている大学は、学力的にも結構レベルが高い。


「…それで一生懸命勉強してたの?」
「ほんとは、いきなり合格通知見せて驚かそうと思ってたんですけど…」


俺が問い詰めたせいで言わざるをえなくなった彼女は、少し残念そうに言う。

そんな彼女にも愛しさがこみ上げてきて…ああヤバい。かわいい。


「よし、及川さんが教えてあげよう!頑張ろうね」


と言って、愛しい彼女を胸の中に閉じ込めた。



(本当は、俺だって一緒だったらいいなって思ってたんだよ)


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