アレルギー症状




「はっくしょん!」


ズルズルと鼻を啜りながら止まらないそれを恨むように唸る及川さん。久しぶりに快晴の休日だというのに、気分は全く最悪なようで。


「大丈夫です?」


私の部屋に遊びにきてくれている彼にお茶を出しながら問う。


「お薬、買ってきましょうか?」


そう聞くけれど、薬はもう飲んできたんだ、と答えた彼。薬を飲んでいるならば、もう他に手の施しようはないかな、と思ってとりあえず彼を見つめた。


どうやらアレルギー症状らしかった。昨日及川さんを慕う女の子達からもらった花束の中に、相性の悪いものがあったらしい。症状は悪化の一途をたどり、とうとう鼻炎だけでなく軽い発熱まで起こしてしまったようだった。


「だるい…」


しばらくベッドで寝転んでいた彼が、私が座るソファーへとやってくる。


「少し寝たらどうですか?」


アレルギー系の薬が効く頃ならば体が睡眠を欲しているのだろうと見当をつけたけれど、彼からの返事が返ってこない。

不思議に思って彼の顔を覗き込もうと思った瞬間、肩にかかる重み。それはまるで安心しきったかのように私の肩へと降りてきた。


「及川さん…?」


そっと問いかけると「んー…」と小さく声が漏れた。
この体勢ではゆっくり寝られないだろうと思い、彼の体を支えつつ自身の肩を引いてずらし、彼の頭を私の腿へと。


ごそごそと身を捩じらせてちょうど良い体勢へと収まった及川さんから、先ほどとは違う安らかな寝息が漏れる。そのことにほっと胸を撫で下ろした。



(起きたらびっくりするかな?)



普段からとても甘やかしてはくれるものの、彼から甘えてくることは少ない。無意識に私へ甘える形になった及川さんが今の状況を知り、どういう表情をするのかと想像してくすりと笑い、私もまた静かに目を閉じた。




どれくらい眠っていただろう。数時間後、ふと目を覚ますと、ソファーで座った姿勢で寝ていたのに体の疲れは全く感じられず、膝に感じる重みもなくなっていた。

状況を整理しようと目を擦ると、寝ているのはソファではなくベッドの上。更に目に飛び込んできたのは、今まさに私のシャツのボタンを外そうと胸元へ手を当てている及川さんだった。


「及川さん…なに、してるんですか?」
「あ、起きた?いやね…随分と気持ちのいい眠りを提供してもらったみたいだからさ、お礼に俺もなまえを気持ちよくしてあげようかと思って」



しっかり休めたのか、そう言って妖艶に微笑む彼。体調のよくなった彼に安心しつつも、それじゃあこれから疲れてしまうのは私の方だと抵抗を始めた。







結局彼の手のひらの上
(お礼なんて、お気になさらず!)
(まあ遠慮しないで)


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