ラブフラグ




私の日課は、暇があれば坂ノ下商店に入り浸ること。

「烏養さーん!」
「お前また来たのか」
「ああっ今日もかっこいいです〜!」
「………」
「ガン無視興奮します!」


ああ今日も烏養さんなんて素敵なの。烏野に入学してすぐ、このお店で彼に一目惚れした。烏養さんは大人だから私を相手にしてないかもしれないけど、それでもいいから会いたいのだ。

登校前も、昼休みも、放課後も会いに行く。烏養さんに会えるなら坂道くらいへっちゃら!毎回なんか買わなきゃひやかしみたいで申し訳ないから、貧乏だってへっちゃら!(本当は財布が寒いけれど)


「また来るねー!」
「はいはい」


おやつのお菓子ひとつだけ買ってお店を出る。登校前に烏養さんの顔見れたから、今日も一日がんばれそう。











そして放課後。今日は日直のせいで昼休みに坂ノ下商店に行けなかった。軽く舌打ちをしつつ、早く彼に会いたくて坂道を駆け下りる。


「烏養さーん!って…あれ?」
「なまえちゃんごめんね〜繋心急にでかけちゃったのよ。」
「そうなんですか。待っててもいいですか?」
「何時に戻るかはわかんないけど、全然大丈夫よ。ゆっくりしてってね」


ここに通いすぎたせいで、おばちゃんとも仲良くなった。将来のお母様…なんちゃって、と心の中でにやけながら、その前に烏養さんに好きになってもらわなきゃ、と現実を見据えた。







「ただいまー」
「あっ烏養さん!」
「…お前なんでいるんだ!つか何時だと思ってんだ!」


数時間経った頃だろうか、烏養さんが帰ってきて予想通り驚いている。


「いやー最低でも一日2回は烏養さんの顔見ないと!今日も達成できました!じゃあ帰りまーす」
「ちょっ…待て!もっかい言うけど、何時だと思ってんだ。送るから」


愛しい彼の顔が見れてうきうきで帰り支度を始めた私に、まさかのお言葉。こんな時間まで待ってて本当によかったと心が弾んだ。





「なにニヤニヤしてんだ」
「えへへ〜烏養さん好きすぎて」
「……」
「あ、照れてます?」
「…あほか」


烏養さんが隣を歩いてくれるだけで、いつもの通学路がこんなに素敵になるなんて。ずっとこうして歩いていたいけど、家はそんなに遠くなかった。



「あ、うちここです」
「そうか。じゃあな」
「もう帰っちゃうんですか?」
「なに言ってんだ、こんな時間に」


ああ、楽しい時間は過ぎるのが早いな、さっきまでの楽しさが嘘みたい。なんて思ってると、烏養さんが思いついたように話しだす。


「…お前さ、別に来るたびになんか買ってかなくていいぞ」
「え?なんでですか?」
「別にお前が本気だってことくらいわかってんだよ。そんで、俺がそれでもいいって思っちまったからな」
「…それって…」





「じゃあな、なまえ」


言葉が見つからなくて戸惑う私に、
烏養さんは不適に笑うと、少しかがんで私の唇にキスを落として帰っていった。私はしばらく身動きもできず、ただ彼の背中を見送った。





いつの間にかフラグが成立していたようです

(烏養さん、だいすきー!)
(早く家入れ!)


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